まえがき
人は、知らぬ間にその詐欺師と契約していると言う。
そして、何故だか分からないのだが、少し時間が経つと
その契約をした事自体を思い出せなくなってしまう。
勿論、当人が、忘れようが、知らなかろうが、契約は有効である。
ただ、それは詐欺であるのだから、
本当は、何一つ支払う義務など実際には、存在しない。
自らそれが詐欺だと気がつけば、その瞬間に契約は無効となる。
解放されるのだ・・
その支配から
章夫は、その日の朝、目を覚ます少し前、
ある懐かしい思いがこみ上げてきて涙が止まらなくなった。
もう、何が本当で、何が嘘なのか、
いや、何もかもが噓だ・・それが唯一の本当・・
真実なんだ。
☆☆☆☆☆
その日も、熱かった。
「なんだ、こりゃ」
初夏の夕日をあびる、超レトロな自動販売機
自宅近く、城公園内の休憩所。
確かに、ここには様々な自動販売機が置かれていた。
と思う・・・
これほど古い型のモノが置かれていた記憶はなかった。
いや、絶対にこんなレトロな代物は無かった・・
考えるほど違和感しか出てこない。
ただ、意識した事も無かったので何とも言えないか。
「まあ、いいや。」
章夫は、何世代も前の・・いや、これぞ第一世代自動販売機と言っても何ら差しさわりの無い、古い自動販売機の前に立ち、そして、今、それに強く惹かれている。
その雰囲気に魅了され、他の事がどうでも良くなってしまっていた。
悪い癖である。
「ついさっきまで、明日の仕事の事で頭が一杯だったのに・・」
章夫が、生まれてくる、ずっと、ずっと前の代物だ・・
こんなの、ほおってはおけない。
ガラスの瓶に入ったコーラの誘惑は、
なぜだか分からないが、何時も飲んでいるソレとは、別物のように感じる。
それもあるが、彼は、この何とも言えない大きな箱が、
人様にモノを売り付ける様をどうしても見たかったのだ。
最初に、これを考えたやつは、天才だな。
それも、悪魔的な・・
章夫は、ふと、そんな風に考えた。
たいそうなブランド物の財布から100えん玉を取り出す。
「100円もするのか?」
「今時、コーラなんて、コンビニなら50円以下で売ってるぞ・・」
「まあ、この場合1000円でも買うけどね・・」
早速コインを入れるも、コインは素通り、この自動販売機のセンサーが馬鹿になっているのか・・お金が認識されない。
「くそっ!」
何度、お金を入れても、下の釣銭出口から戻ってきてしまう・・
100円玉を別のと変えるも同じように、素通りで帰って来る。
「販売ランプは点灯している・・壊れてるのか?」
何度やっても同じ、
「あ、そっか。もしかしたら、昔の100円硬貨じゃないと駄目なのかも」
「・・言うか、あたり前じゃん」
馬鹿らしい、時間を無駄にした。
知的で冷静な章夫は、少しムッとするも、あきらめて家路につく
「また、明日来るからな!」
言いながらその場を去った。
些細な出来事ではあったが、不思議なくらい彼をワクワクさせていた。
そこから、彼の家までは、歩いて5分ほど・・
家までと言うか、ゲートまで・・
家路に向かい、歩きながら考える・・
明日のプレゼンが終わったら、
一番にデパートの古銭屋に行って昭和の100円玉を探しにいこう。
そしたら、あの自販機でコーラを買えるかも・・
そう考えると、もう、わくわくして仕方がなかった。
でも、どうせ、官の奴らに打ち上げとかに誘われるんだろうな?
なんて言って、断ろうかな・・
嫌だなあ・・
考えてる間もなくゲートに到着した。
ゲート。
そして、その奥にそびえる大きな建造物。
かの、有名な大阪城だ。
ゲート前の詰め所で、両目と両手をスキャンし簡単な認証をする。
モニタには、梅鉢の家紋が表示されている。
青木章夫 上級国民(士族)
user rank 2 オーナー
ゲートが開き、そこから近代的といえる、お城の全貌が明らかになった。
西暦2221年、遥か久しく個人の住居になり、改装された大阪城。
お堀の上の通路は、景観を崩すことなく美しくライティングされている。
城の方から浴衣を着た、可愛らしい女の子がふたり歩いて来る・・
「おかえりなさい、アキオ。」
「おかえり、おにいちゃん。」
ただいま、
母さん、初音。
つづく・・
対象年齢 魂の成人指定
ALISのと自分の限界を突破するためだけに、思いつきで投稿したラノベ。
これを最後までお読みくださった方は、とてもやさしい人だと思います。
キャラクターデザイン・二次創作・アニメ化、その他何でもご自由にどうぞw