鬼一口(おにひとくち)
娯楽の妖怪
巨大な手と口
今回紹介する妖怪「鬼一口」は後世に名付けられた妖怪で元は平安時代初期に書かれた『伊勢物語』に登場する名も無き妖怪でした。
「鬼一口」が登場する『伊勢物語』第6段「芥川の段」のあらすじは、身分の違いによって結ばれることがない男女の物語です。
何年も女のもとへ通い続けた男がついに女を盗みます。それから二人の逃避行が始まります。逃亡の途中雷雨に襲われた二人は鍵の掛かっていない蔵を見つけ女を中へ入れ男は外で弓を持ち番をしていました。
その一瞬男が目を離したすきに女は蔵に隠れていた鬼に一口で食べられてしまいました。女があげた悲鳴は雷雨にかき消され男が気づいた時には女の姿はもうありませんでした。
イラスト化されるまで800年以上?
『伊勢物語』が成立した時期は不明ですが、平安初期(794年~)と言われています。それから鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』にてイラスト化されたのは1781年なので最大987年の間が空いています。
しかし、それまで姿がなく、『伊勢物語』でも描写がされていないためその姿は、手と口、女が着ていた着物のみで、全体像はありません。
その姿は、読者の想像に託されています。
・元ネタは『伊勢物語』
・姿はずっとなかった。
・江戸時代になり妖怪絵師によって姿が生み出されたが、全体像は描かれていない。