ブラッドピッドとエドワードノートンのダブル主人公。
ブラピ好きだから気になっていた映画。
見るまではボクシング映画かなんかだと思ってたんだけど全然違った。
男のロマンから現代社会へのアンチテーゼ、暴力、哲学、ブラックユーモアも詰まっていて、人生や生き方まで考えさせられるサイコでミステリーチックな映画だった。
映像や演出もおしゃんだったしラストシーンの遊び心も面白い。
何よりブラッドピッドがかっこいい!!
そしてブラッドピッドの演じるタイラー・ダーデンのサイコ具合がたまらない。
とにかく伏線が多くてよくある設定だからわかる人なら半分くらい見たところで設定に気づいちゃうだろうけど、それでも楽しめるし、その設定はあくまでミステリー要素でしかなくて、それがわかったからってこの映画は終わりじゃないところがいい。
ストーリー・・・・★★★★★
キャラクター・・・★★★★★
設定・・・・・・・★★★☆☆
~見所~
・伏線
・タイラーの迷言
・ファイト(暴力)
・エドワードノートンの一人ファイト
・ブラッドピッド演じるタイラーダーデンのイカレたサイコ具合
・ブラッドピッドの筋肉
以下、感想、考察(ネタバレ)
構成は冒頭の状況から、過去に遡りラストが冒頭へとつながる形で、終始主人公1人称語り。最後まで主人公の名前が明かされずに終わったのも面白い。
ラストシーンの切るタイミングも面白いしあのタイミングで流れる音楽も良かった。
タイラーを紹介する時の演出が斬新で面白かった。全体の中であそこだけ撮り方というか表現が浮いてたんだけど、後から思えば、ああそうか。と納得できるし、だからこそあのシーンだけ不自然にオシャレとユーモアを詰め込んだんだと思った。し、タイラーという人間を表現するのにピッタリな演出だった気がする。
この映画の一番の見所はブラッドピッドが演じるタイラーダーデンに尽きると思う。
徹底的に意志を突き通す、徹底的に自分の思想に沿って行動する。
その徹底っぷりと行動力、発想、感性がぶっ飛んでていい具合にカリスマで狂ってる。
野蛮で知的なアウトロー。
誰よりも人間らしい人間を求め、本来の人間であり続けようとした結果、異常に見えてしまう、異常にならざるを得なかった人格なのかもしれない。
所有しているモノや立場に執着したり、世間的な価値の指標に縛られて、気づいたら自分が積み上げてきたものに支配されてしまう。無意識にそれを守るために、まるでそういった情報や物質、地位の傀儡として意思なく生きていく様を嫌って、暴力的なまでに奔放に、ただ生きたい様に生きるってのにスカッとした。
タイラーの心に残った台詞をいくつか抜粋
・「持っているものが自分を束縛する」
・「これはお前の人生だ。1分毎死に近づいてる」
・「職業がなんだ?財産なんて関係ない。車も関係ない。財布の中身もそのクソッタレなブランドも関係ない。お前らは歌って踊るだけのこの世のくずだ!」
タイラーで心に残ったシーンは
いきなり何の関わりもない、獣医の夢をあきらめたフリーターに銃を突きつけて
「今から死ぬ気で勉強しろ。そして獣医になれ。」
「免許証は預かった。住所はわかるぞ。ずっと見てるからな。」
「今度見たときに獣医の勉強をしてなかったらまた殺しにくるからな!」
って脅迫するシーンとかイカれてて好き。
「あいつは明日最高の朝食を味わうだろう」
後から銃を確認したら弾をこめてなかったってのがいい。
やり方はともかく、あのフリーターはこれで文字通り死ぬ気で勉強をがんばれることになったわけで、夢をあきらめて漫然とコンビニ店員をしてた彼にとっては、明日の朝食が美味いかは別として、また夢に向かって覚悟を持って挑戦するきっかけが生まれたわけだからそんなに悪い話ではなくて面白い。僕も学生時代に口の中に銃を突っ込まれながらそんなようなことを言われていれば、いい大学に入っていたかもしれないなぁなんて思ったりもした。
無茶苦茶でもタイラーのこういう「ちゃんと生きろ!」って姿勢は好き。
あと主人公を助手席に乗せてたまま反対車線に飛び出して、迫り来る対向車を前に
「おい!お前は死ぬ前に何がやりたい!?」
と聞かれて主人公がパニックになりながらも「わからない」と答えると
「お前はこの質問の答えを知っとくべきだ!今すぐ死ぬとしたらお前は自分の人生をどう思うんだ?」
みたいなやり取りをしながら最終的に手放し運転で崖へ突っ込むシーン。
今自分は何がしたいのか、何がしたくて生きてるのか、そんなことも意識できずに漫然と生きてても果たしてそれは「生きてる」といえるんだろうか。
周りの環境に合わせて、それを崩さないように活動してるだけ、ただ息をしてるだけの人生は果たして自分にとって有意義なものなんだろうか?
っていう事なんだろうけど、この質問を聞いていて実際自分だったらどう答えるかって考えたときに答えが出てくるまでに時間がかかったことに自分で衝撃を受けた。
実際社会に出て働いたり、家庭を持ったりすると、毎日次々といろんな仕事や問題が起きて、目の前にある仕事や問題を解決することにとらわれて、本当は自分は何がしたいのかわからなかったり、またはやりたいことがあってもその気持ちを維持し続けることができず見失ってしまいがちなんだと気づかされた。
やっぱり無茶苦茶でもタイラーのこういう「ちゃんと生きろ!」って姿勢は好き(2回目)
逆に無茶苦茶なくらい過激に表現されないと気づけないのかもしれない。
あとはやっぱりファイトクラブを開いている酒場の管理人にここを使わせてくれとお願いするときのタイラーがすごい。
殴られても殴られても笑いながら嘆願するさまはまさに狂気。
周りのやつらもみんなドン引き。
殴りにきた管理人にむけて自分の血を撒き散らして迫るシーンとか鬼気迫る。
管理人もドン引きで「母親の目にかけて誓う。使っていい!」とか言って面白かった。
ラストの主人公と殴りあうシーンも狂気じみてていい。
あと「俺には見える、ヘラジカを追いかける君の姿が~トウモロコシ砕く~」とか自分の理想?を詩的に囁いて消えていくタイラーがいい。
ほかにもいろいろあったけど特に印象深かったのはこれぐらい。
とくかくタイラーダーデンというキャラクターが面白い。
イカレ具合が突き抜けてて気持ちいい。
いちいちかっこいい。
困る。
それから、題名にもなっているファイトクラブについて思ったことは、男たちが現代社会で生活していく中でたまったストレス、捌け口のない鬱憤を発散するには、殴り合うのってすごい理にかなってると思った。暗い地下室に上裸の野郎共が詰め寄って、汗と血にまみれて殴りあう男臭くて痛々しい描写なんだけど。雄たけびをあげたり、躍動する筋肉と飛び散る血潮、の描写には、やっぱり興奮するというか、見ている自分も闘争心をくすぐられるし、勝ち負けはなく、ただ感情をむき出しにて殴り合い、ファイトが終わると讃えあう姿に爽やかさを感じた。
痛みを感じたり、闘争心を持つことで男の本能的な部分を刺激することで生を実感していく狂気じみた空間でもちょっと理解できる。男なら興奮するところだと思う。
タイラー曰く「痛みなしじゃ何も得られない!」
ファイトクラブのルールの1つに「上半身は裸で戦う」ってあるけどこれは単に安全にファイトするためだけじゃなくて、ワンピースのコブラ国王もおっしゃるとおり「権威とは衣の上から着るものだ。裸の王などいるものか。」ということで、地位や身分は脱ぎ捨てて全員対等。スーツも作業着も制服も全部脱ぐ。まさにタイラーの言う「人間は職業じゃない!!!」っていうことの一部なのかなと思った。
その言葉もあって、普段の社会生活では冴えない生活を送っているような階級でいえば底流の人間でも、ファイトクラブでは良いファイトをして輝けることで、よりファイトクラブに心酔していくだろうなと思った。
そこはわかるんだけど逆に大企業に勤めていて、金にも物にも困っていない上流階級である主人公がこのファイトクラブの設立者っていうのが面白いと思った。恵まれた環境にいながらも、反社会的な思想や本能的で野蛮な思想が芽生えてしまうなんて、それほどまでにコンプレックスがあったのか謎。モテたい。生きてる気がしない。だけでここまで極端にはなれないと思うけど...お金や車で釣れる女はいくらでもいるだろうに。ちょっとしか触れられてなかったけど、父親に捨てられたことで無意識に自分が愛せなくなってしまって、結果現状の自分とは正反対の人格を作り上げてしまったのかね。
で、男だらけの野蛮なクラブにもかかわず、お互いを尊重して統率が取れていたのはやっぱりタイラーさんのカリスマ性があったからこそなんだろうな。
さらにファイトをして、みんなが高揚してるところタイラーがカリスマ演説垂れ流ししてらみんな彼の思想に染まるのも無理はないと思った。
後半のプロジェクト・メイヘムが始まってからはいろいろぶっとんでたけど各都市に支部を作ったり警官まで懐柔しちゃったりタイラーさん有能すぎ。
それに爆弾を作る知識はいったいどこか得たのか...
主人公もクマがどんどんひどくなっていってたからタイラーでいる時間が増えてきてそうだった。
だけどなんで反社会的な活動するのかわからなかった。
最後の資本主義を壊すために重要なビルを爆破するってのはまだわかるけど、途中までやってたことってただの性質の悪いいたずらレベルだし、何のためにやってたのか謎。
ラストも、主人公はマーラを遠くに逃がすんだけど、結局タイラーに読まれてて、捕まってタイラーと主人公がいるビルに連れてこられるんだけど、あれもなんで殺さずに連れてきたのか...
タイラーは結局自分が消えることも予想していて、ビルの爆破が一望できる「特等席」でタイラーから自立した主人公とマーラで後は仲良くやってくれよ的な解釈でいいのかな...
「信じてくれ...何もかも良くなる。」と主人公は言って、花火のように次々と爆破されていくビルの手前に、手をつないだ二人のシルエットが浮かび上がって終わるラストはどこかロマンチックともいえなくもない。
僕は割りとハッピーエンドよりに感じた。
ラストシーンには一瞬ポルノ映像のカットが入って終了で。いい演出だと思った。
結局、ビルの爆破も成功してタイラーやりたいこと成し遂げたわけだし最後カットのタイラーらしいいたずらといいやっぱりこの映画はタイラーに尽きる!
そして2回目見直した時に気づいたんだけど、チラホラタイラーかサブリミナルでで、1コマだけ出てきてびっくりした。
しかも結構な頻度で出てきていて笑える。芸の細かさにびっくりするのと、タイラーの茶目っ気が溢れてて面白い。
あとパッケージでやたら石鹸を押してたり、作中でも石鹸がたびたび登場してくるけど、タイラーの思想的に、まずはファイトクラブで男たちの心を石鹸で洗ったかのように純粋にして洗脳し、次はうんざりする資本主義社会も石鹸で洗い流してやろう。っていう革命の暗示だったりするのかなーと思った。そのために使う爆弾が石鹸からできるってのがまた面白い。その石鹸が資本主義で成り上がった富裕層の脂肪からできてるってのがまたまた面白い。
あとマーラは物語的にはいてもいなくても変わらなかったと思うんだけど...
深く考えるなら主人公は自分と同じように難病患者の互助会に参加することで生を実感していたマーラにコンプレックスである現状の自分を重ねてしまった。だからマーラのことが憎くて嫌いだった。反対にタイラーの人格のときはマーラを愛せていた?
後半主人公はマーラに対する自分の本当の気持ちに気づき、最後は二人で仲良しエンドなんだけど、これは主人公の人格がタイラーよりに変化して今までのコンプレックスが消えたことで同属嫌悪していたマーラを愛せるようになった。タイラーの克服とマーラへの愛が主人公の心の成長や人格の変化を表しているのかなあと思った。
とにかく面白かった!
映画の中ではかなり極端な思想やメッセージが表現されているけど、その過激な表現や言い回しが、鈍くなった心に突き刺さって思わずハッとなる場面が何度かあったり、心に残る台詞やシーンが多い映画だった。
仕事に追われて自分を見失っていたり、ただただ漫然と日々を過ごしている人にはまさに石鹸であり爆弾のような映画。
10点満点中・・・・10点!