運動会が終わったら
君に手紙を書こう
ごめんね
君のこと 忘れていたんじゃない
君のこと 忘れるはずなどないじゃないか
毎日 君に手紙を書きたかったんだ
長い長い 読み切れないほど長い
紐解いた巻き紙が
日本の優れたテクノロジーの
薄紙一重トイレットペーパーって
ワンロールがこれだけ長いのかと
中国の吟遊詩人もびっくりの
万里の長城より長い手紙
宇宙から観測できる唯一の手紙
ひらがなだけでできたてがみ
だってどんなに長くてしつこくても
同じフレーズの繰り返しでも
前にも聞いたことがあっても
一目見た医者が
ハイパーグラフィアだと叫んでも
高次脳機能障害だと喚いても
自分が充満していて
人の入る余地は1ミリもないと
心理テストの結果を伝えても
君がミュートするはずなどないじゃないか
君だけはミュートするはずなどないじゃないか
ああ 運動会が終わったら
君に手紙を書くよ 僕
ごめんね
運動会だったんだ
バッジをかけた死闘だったんだ
ブートキャンプを生き抜いた
何十人という強敵がいっきに押し寄せ
観客席のおかあさんも
おばあちゃんも見えなくなれば
誰だって泣きたくなるだろ?
僕が子どもの頃から
算数よりもっと嫌いだった運動会
紅勝て
白勝て
見えないロジックの籠に向けて
放物線を描いた玉が
いくつ命中していても いなくても
運動会が終わったら
君に手紙を書こう
生きてさえいれば
手紙を書こう
朝 君がポストを開けると
もと光る竹なむありける
あやしがりて寄りて見るに
ああ 運動会の間書けなかった
君だけのための
長い手紙があるだろう
君は僕の事情を知るだろう
そしてすべてを許すだろう
そうだったのね
運動会だったのね
私への愛が途絶えてしまったわけじゃないのね
運動会じゃあ仕方ないわね
二人の愛は続くのね
この世に貨幣が消えてしまっても
この世の暗号資産がすべてのネットワークから消えてしまっても
あなたは私の淹れたコーヒーを飲み
新しい朝を迎えるのね
ああ ただの運動会だったのね
永訣の朝などではなかったのね
運動会は
ついに終わったのね!