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アテルイ塚の嘘

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  • あび(abhisheka)
  • 2019/12/14 01:17

たとえ読者が少なくてもアーカイブに残したいので、ここにも掲載します。

 

僕が牧野公園のアテルイ塚について書いて地方紙に掲載された文章について、とあるメーリングリストで「難しい」というクレームにならないクレームがついて、猿でもわかる解説を(      )に付け加えた文章が以下です。

 

くだんの「アテルイ塚」にまつわる原稿「今を生きる街、神話に生きる街」は、枚方市のローカルインフォメーションペーパーLIPに掲載されたものです。
(       )は、メーリングリストでの難しいというクレームに応えて加えた、猿でもわかる解説です。

 

今を生きる街、神話に生きる街

ジョン・レノンは「イマジン」で「想像するのだ、すべての人が今日のために生きていることを」と歌っている。

ザ・ブルーハーツは「トレイントレイン」で「世界中に建てられてるどんな記念碑なんかより、あなたが生きている今日はどんなに意味があるだろう」と歌った。

人は自らの今ここに自信と安心を得られないとき、歴史に集団としての権威を求めようとする。その心の動きがナショナリズムの根底にあるのではないかと私は考えてきた。

しかし、中司元市長のマニフェストには次のような宣言があった。

「自治体も都市間競争の時代に入り、市民が永住を望み、また、新しく枚方市へ住みたいという人たちを呼び寄せるためには、まちの魅力や個性の向上が求められています。
枚方市には様々な魅力と個性がありますが、江戸時代から京・大阪を結ぶ淀川三十石船の中継港として栄えた舟運の歴史もその一つであり(中略)そのほかにも、天の川七夕伝説や古代蝦夷の英雄アテルイ終焉の地伝説、日本に漢字を伝えた王仁博士の墓など、豊かな伝承もあります。
今後、そうした歴史や伝承などをまちづくりに生かし、新たな観光ルートの開発や市民参加で取り組む新たな「まつり」の創出など、まちの魅力と個性の向上に取り組みます」

ジョン・レノンやザ・ブルーハーツが歌うのとは逆に「住みたいまちとしての都市間競争に勝つためには歴史や伝承によって魅力と個性を向上させる」と言うのである。

私は現在の市民が今を充実して生きているまちであればそんなことは考えないと思うのだが、どうか?

いや、歴史を学問的に探求するのは、いっこうにかまわないのである。
しかし、根拠のない伝承をもって、なりふりかまわず史跡を捏造し、「まつり」を「創出」していく様子を見ていると、なぜそこまでするのか?と首をかしげずにはいられない。

今の生活や政治の実態から目をそらし、偽りの誇りを集団で持とうとする草の根ナショナリズムの心理を私はそこに見るのである。

王仁塚が捏造されたものであることは別稿に譲るとして、ここでは牧野公園のアテルイ塚について検証してみよう。

 

(ここまでは、全読者・市民に向けて書いている。
ここからの部分は歴史の専門家や郷土歴史家やマニアのために書いている。
まあ、中学高校の社会の先生とかもちゃんと読むかもしれない。
だが、わからない人がいてもいい。
でも論証が正確であることは読む人が読めばわかるように書いている。)

 

(少しわかりやすくするために地名にふりがなを振ってみよう。
すると、うえやま説がなくなったら、うえやまが変形したとする
うやま(宇山)のアテルイ塚説がこじつけだという話が
素人にも一応、わかるだろう。)

 

神英雄の1988年の論文「蝦夷梟師阿弖利為・母礼斬殺地に関する一考察」の眼目は、
斬殺地名についての「日本記略」写本の三つの異字「杜山」(もりやま)「植山」(うえやま)「椙山」(すぎやま)のうち、
「椙山」(すぎやま)こそが本来のものであることを24本の写本に実際にあたって実証した点にある。

神英雄のあたった24本の写本は当該部分が含まれる写本約30のうちの殆どである。この中には「杜山」(もりやま)と記述されているものはなく、これは新訂増補国史大系「日本紀略」が底本とした久邇宮文庫本の「植」のくずし字を誤ったにすぎない。

残る「植山」(うえやま)と「椙山」(すぎやま)について、24本の写本の系統を分析すると、「植山」(うえやま)を採る4写本はいずれも奈良興福寺門跡の一条院の伝本に求めたものか、それに関連した同一系統のものである。

これに対して「椙山」(すぎやま)は、全部で10本の原本の系統があり、それを一本の系統に還元するのは困難である。

これらのことから神英雄は「日本紀略」の原本に掲載されていた文字は「椙山」(すぎやま)であると結論するが、その論証は大変説得力のあるものである。


よってこの論文集が発行された1988年の時点で、「植山」(うえやま)という記載を根拠に仮説を重ねたにすぎない「アテルイ斬殺地=宇山(うやま)説」は、殆ど意味を失っているのである。

従ってその説の上に、さらなる仮説をいくつも重ねて浮かび上がった牧野公園のアテルイ塚は、学問的にはまったく無意味なものなのである。

 

(以上で牧野公園のアテルイ塚がニセモノであることの論証は終わっている。
一般の読者は「なんかわからないけど、とにかくそれは専門家によると嘘なんだなあ」ということさえ、わかればいい。)

 

だからこそ、1993年の市議会では、ある議員の執拗な首塚の保存要請に対して、当時の社会教育部長が「枚方市としては歴史的根拠のない場所を確たる証拠もない
のに、アテルイの墓にはできませんし、説明板なり、顕彰碑を建設すべきではないと考えます」と明言したのである。
良識あるまっとうな判断といえよう。

 

(この頃まで枚方市の社会教育部はまともだった。
しかし、その後、一連の教育改革の中で、
枚教組つぶし、統合教育つぶし、君が代・日の丸強制などがおこなわれていくのと、
社会教育つぶしとしての公民館つぶしなどが行われていくのは同時であった。
そして多くの骨のある教員や、骨のある社会教育主事がバカバカしくなって枚方での学校教育や社会教育から去っていく。
この議事録や以下の議事録はあびは原典にあたっているので、僕自身は議員の名前まですべて特定しているが、原稿ではイニシャル程度としたのは、自分自身の判断である。
この枚方市の教育改革の社会教育部への影響に少しだけ触れた部分が以下である。)

 

しかし、その後に市長となった中司宏は、歴史や伝承を活かしたまちづくりというコンセプトを打ち出す。
と同時に当時の中野教育長が主導した「教育改革」が行われ、社会教育の分野においても、公民館制度の廃止など多くの「改革」が断行されるのである。

そして、その中でそれまで枚方市の社会教育を担ってきた多くの人材が、時代に押し流されて職を去るに至ったのである。

 

(以下は別の議事録に当たって、確認したものである。
H議員とは民主党の堀井勝である。)

 

こうして2005年市議会では、H議員が中司市長の「熱い思い」や民間の動きを根拠に、アテルイ塚に対する行政の支援を要請したのに対して、
M理事兼文化産業部長が「アテルイの記念碑の設置につきましては、伝承文化を活かした町づくりとして意義あるものと考えております」と答弁するのである。学問的根拠も何もあったものではない。
「熱意」と「伝承」だけで歴史を捏造することが可能ならば、そのまちは神話の国ならぬ神話のまちになり果てたというべきではなかろうか。

 

(次に僕は「椿井文書に当たれよ、いろいろなことがわかるぞ」と最後に志ある若者に示唆した。
ここは歴史の専門家でなければ唐突に見えるが、先に述べた「植山」(うえやま)を採る4写本はいずれも奈良興福寺門跡の一条院の伝本に求めたものか、それに関連した同一系統のものである。」ということと深く関連している。
なぜなら椿井の仕事の多くは興福寺の依頼によって近畿の歴史(由来)を捏造するためになされたものだからである。)

 

ところで、馬部隆弘の「偽文書からみる畿内国境地域史~椿井文書の分析を通して」など一連の椿井文書研究には大変興味深いものがある。

数多くの偽書を捏造した椿井政隆(1770年から1830年)という人物のおもしろいところは、実際の調査や伝承も活かしながら複数の偽書を矛盾のないように作り、いかにも事実であるように見せかける一種壮大な仕事をしたことだ。
なかなかの策士なのだ。

馬部は言う。
「椿井の思想の根底には、近代皇国史観に繋がるものがあり、故に「椿井文書」が大いに利用された。
しかも未だ機能していることに鑑みれば、今後畿内国境地域史を構築するためには、単に「椿井文書」を排除するだけではなく、「椿井文書」が引き起こした諸問題を精算していくことが不可欠である。
ましてや単なる観光地化を目的とした「椿井文書」の利用を繰り返してはなるまい」

学者として至極まっとうな発言である。
彼のような人物が市史資料室の研究員であることは、枚方市にまだ一点の良識が残っている証左だ。
私はそこに一縷の希望を見る。

 

(結びの一文は再び、全読者・市民に呼び掛けている。)

 

私は思うのだ。
今を生きるひとりひとりの市民が住みよいと感じるまちこそ、よいまちに違いないと。
ありがたい(?)由緒があり、由緒に裏書きされた神社や寺や地主が力をもっていて、商工業や教育界がそれらと繋がって幅をきかせているのがよいまちだとは私はけっして思わないのである。

あび

 

(このようにこの文章は、歴史家に「こいつはちゃんと調べたうえで書いている」と感じさせると同時に、一般市民に「今を生きること、と歴史的伝統につながることをよすがにする生き方(その多くは捏造された歴史)」の違いについて意識してもらうように書かれている。
そして現在の市議会は歴史を捏造することで郷土愛をはぐくもうとしていることを告発している。
重層的になっているのだ。
もし、浅い方の層だけで書けば、読みやすいかもしれないが、ある程度以上の歴史マニアからは、相手にされない。
だからといって、全員すべてを理解せよと言っているのではなく、
だいたいでわかってもらっても、重層性を全部読み解いてもらってもどちらでも
けっこうなのである。)

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大ウソつきのアテルイ塚
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大ウソのアテルイ塚の前で行われる神事という名の茶番劇   歴史の知識もクソもない市のお偉いさんたちの列席  ゲロゲロ
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大ウソつきのアテルイ塚前で行われるアテルイ処刑の所作の神楽という名の茶番劇

 

この小論の発表のあと、私は、牧野商店街にも、神事を行う役の片埜神社にも、市会議員や市役所社会教育課からも、そもそもこの小論を載せてくれたローカル・インフォメーション・ペーパーからも嫌われていると聞いた。(-_-;)

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10代より世界放浪。様々なグルと瞑想体験を重ねる。53歳で臨死体験。31年の教員生活を経て現在は専業作家。https://note.mu/abhisheka

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