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クンダリニーヨーガ (6)

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  • あび(abhisheka)
  • 2019/05/20 04:48

 ~問題はその先である。つまり、いかにして「神秘体験」にこだわらず、それを越えていくかなのである。~

・ ハートチャクラの爆発

インドでは、上昇したクンダリニーは七つのチャクラと呼ばれるエネルギーセンターを次々と活性化していくとされている。

実際、この時の私は、シッダ・メディテーションを続けるうちに、下から四つ目のチャクラがあるとされる胸のあたりが、じんじんと熱くなってくるのを感じたのである。初めのうち、それは「少し胸が熱いな」という程度であった。だが、やがてそれは痛いほどの熱さになった。それでも、何か不思議な安心感に包まれていた私は「必要なことが起こっているのだ」という確信に満たされていた。

そうしてさらに瞑想を続けるうち、痛みはまるで背中から錐を突き刺しているかのような強烈なものに変わっていった。痛さのあまり、私は顔を歪め、激しくふいごのような息をし、深い吐息をつき、心臓発作でも起こしているかのようにぱくぱくと喘いだ。

胸の痛みが極限に達し、もう耐えられないと思った瞬間、パーンと胸の中央で花火が砕けた。花火は四方に飛び散り、光の花びらが崩れるように流れた。(そんな感じがしたとしか、言いようがない。)

いつしか私はおいおいと泣いていた。あんな風に泣いたのは初めてであった。なんというか、腹の底から雄たけびをあげるように泣いてしまっていたのである。これまでの人生の中での悲しみ、傷みをいっきに放出していたのかもしれない。

やがて涙が止まると、私はおそろしく静かな場所にいた。意識の最奥の永遠に静かな場所とでもいうのであろうか。

インドのチャクラの理論で説明するなら、このとき私は、胸のアナハタ・チャクラ(ハートのチャクラ)が急激に活性化されたと言える。その結果、アナハタ・チャクラのブロックで滞っていたエネルギーが一気に解放され、一種の精神的な法悦感を覚えたということになる。

先に紹介したグロフは、呼吸を用いたセラピーについて語る文脈で、アナハタ・チャクラのブロックについてこう述べている。「このブロックが一時的に強まった後、解放されると、当人は突然、愛と光に満たされる感覚を覚え、恩寵や情動の解放感を味わう…」

以上、私自身の拙い体験を長々と述べてきた。
読者は一種不可思議な体験に、思わず眉に唾を付けたかもしれない。あるいは逆にシャクティパットを行うグルというものの存在について、必要以上の崇拝心を生じさせてしまったかもしれない。

そこで最後に、私自身が今、このシャクティパット体験について、どのように考えているかを記しておきたい。

現在の私は、グルによるシャクティパットは、小さな一押しに過ぎないと考えている。
確かに自身のエネルギーが強く活性化していて、人のエネルギーと意図的に共鳴を起こし、その活性化にも影響を与えることのできる人というのは、存在するのだろう。しかし、彼または彼女がどんなに偉大なグルであったとしても、何の準備もない人のクンダリニーをいきなり上昇させることができるわけではない。

考えてみれば、はじめてクンダリニーが覚醒した頃、私は数年間一緒に暮らしてきた女性に失恋した直後であった。
いや、実際には殆ど破綻しながらも関係は続いていたのだが、それだからこそ、様々な葛藤の中で心身は追いつめられていた。

また私はそれまでにも十年以上にわたって、様々な瞑想の修行をしていた。そしてこの日のプログラムの中でも、姿勢を保持し、百人以上の人たちと共にマントラを唱えたわけである。その状況は、心身の変容をもたらすためのかなり強烈なセッティングだったと言えるだろう。

緊張の限界に達していた私の心身は、そんな環境を与えられて、自発的な過換気を起こし、その結果、準備されていた変化が一気に加速したという風にも考えられる。いずれにしろ、それは複数の条件の中での最後の一押しではなかったかと思うのである。

繰り返しになるが、私が言っておきたいことは、クンダリニー・ヨーガというサイコテクノロジーは、このように実際にかなりの強度で「効く」という点である。だが、驚きの余り、グルへの崇拝に陥ってはならない。このようなことはインドでは千年以上の伝統の中で繰り返し起こってきた。

問題はその先である。つまり、いかにして「神秘体験」にこだわらず、それを越えていくかなのである。(つづく)

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10代より世界放浪。様々なグルと瞑想体験を重ねる。53歳で臨死体験。31年の教員生活を経て現在は専業作家。https://note.mu/abhisheka

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