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少年時代の終わり(小説)(実話かもよ?)

あび(abhisheka)'s icon'
  • あび(abhisheka)
  • 2019/04/15 21:28

自分のSNSでこう紹介しました。

この話を最後まで読むにはアリスのアカウントと1アリスが必要です。
1アリスはアカウントを作っていくつかの記事にいいねを押すか、
自己紹介記事を書くかすると翌日には貯まるでしょう。

またこの話はNOTEで100円で販売しています。
クレカか、プリクレカがあればNOTEにアカウントがなくても買えます。

つまり、3択
(1)無視
(2)円を使わず、ALISで記事を書く、いいねを押すなどして得た仮想通貨で決済して購入。
   その場合、1ALISしかしないので、円換算で今の相場で4~5円です。
   これをきっかけにALISを始めれば、これから仮想通貨ALISを貯めていく楽しみが増えます。
(3)クレカを用いて円決済で100円で購入。

 

(以下小説本文)

 大学の文芸部で知り合った彼女との付き合いはもう一年になろうとしていた。僕らは土曜日になると、キャンパスから鴨川沿いを互いのポケットに手を入れて歩いて帰った。途中で何度も立ち止まり、抱擁してキスをした。

 彼女は阪急、僕は京阪。阪急四条駅まで送り、地下の柱の陰で特急の時間まで肩を寄せ合っていた。触れている肩は熱くてじんじんして、そこから溶けて流れそうだった。

 だが、僕らはまだ性行為に及んだことはなかった。

 ある日の午後、僕は男性の友人とキャンパスの近くのドーナツショップに入った。僕が注文をまとめて請負い、友人は席をとりにいった。

 注文を聞き、ドーナッツを用意した女の子は、「私、あなたのフアンなの」と言った。見たことのない顔だが、かわいい女の子だった。

 「フアンって、僕をなんで知ってるん?」

 「あなたの本を読んだの。高校生のときに書いたんでしょ。『宇宙に還りたい』という本。あの本のフアンなの」

 「え、ほんまぁ? ありがとう」

 「あの本はうちの大学の中でよく貸し借りされているわ。私のところにも回ってきたの。そしてこれを書いた人はすごいって私、思ったの」

 「知らない人が読んでくれてて、そうやって感想言うてくれんの、うれしいわ」

 僕はそう言ってその女の子の顔を見つめた。

 仮にだ。
 僕ではない誰か男子学生を10人無作為に連れてきて、僕の彼女とそのドーナッツ屋でバイトしている女の子のどちらがかわいいか質問したとする。

 そうすればたぶん、9人までがドーナッツ屋の女の子だと言うだろう。

 「ほんじゃ」

 僕はドーナッツを載せたトレイを持ってカウンターを立ち去ろうとした。すると女の子が呼び止めた。

 「あの」

 「えっ?」

 「私、もうすぐ六時で上がりなの。でね、傘を持ってないの。私がバイトに入る時間にはまだ降ってなかったから。で、今土砂降りでしょ。下宿まで送ってくれないかしら」

 僕は考えた。

 傘を持ってない女の子をこの土砂降りの雨の中に放りだすのは、男のすることではないし、それに何よりこの子は僕の作品のフアンなのだ。

 ないがしろにするわけにはいかない。

 「ええで。テーブルで友達としゃべってるから、上がりの準備できたら声かけて」

 僕はそう言うとトレイを持って店内を振り向いた。

 奥の席で友達が手を振っている。

 トレイを置いて、ドーナッツにかぶりつくと、友達が聞いた。

 「おまえ、なんであのかわいい子としゃべれるんや?」

 「フアンなんだって」

 「何の?」

 「本の」

 「いいなあぁ」

 友達はうらやましそうにそう言った。 

 青くさい哲学論議を友達とひとしきり。

 すると、さっきの女の子がドーナッツ屋の制服から私服に着替えて、テーブルにやってきた。

 「あっ、行こか」

僕は言った。

 「お話あるんなら、私、待ってる。お話聞かせてもらってもいいかなあ?」

 「いや、もうドーナッツも食べたし、行こ」

 僕は友達にちょっと視線を走らせながら言った。

 彼は苦笑いしながら、行ってきなというように頷いた。

 朝、鞄に忍ばせて大学まで来た、僕の折りたたみ傘はそんなに大きくはなかった。

 広げても、相合い傘にするには狭く、二人は濡れないようにと自然に寄り添い肩が触れ合った。

 僕は女の子が濡れないように、ちょっと贔屓目に傘を傾けたので、反対側の肩が濡れ始めた。

 濡れているのは僕なのに、彼女は甘えるように「寒い」と言うと、ますます寄り添ってきた。

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  • あび(abhisheka)
  • @abhisheka
10代より世界放浪。様々なグルと瞑想体験を重ねる。53歳で臨死体験。31年の教員生活を経て現在は専業作家。https://note.mu/abhisheka

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