李妍焱著「中国の市民社会ー動き出す草の根NGO」読了。
(2015年の日記より)
著者はFACEBOOK友達。買ったとき、すでにそうだったか、買ってからそうなったか、よく思い出せない。
中国では、共産党一党支配のもと、市民活動など、とても難しく日本よりも遅れていると考えている人が多いと思う。
しかし、中国のNGOは、共産党の抽象的なヴィジョンには賛同する姿勢を見せて自らの存在を認めさせ、時には支援さえ引き出しながら、具体的な活動においてはイニシアチブをとり、盛んに活動している。
その際、弱者の視点に立ち、環境を重視し、自らのミッションを果たそうとしている。
対して、日本では一見、もっと自由な市民活動が保証されているはずにもかかわらず、
「空気を読む」という独自の文化によって、それが阻まれている。
僕の個人的観察でも、NPOなどが、初志貫徹できず、行政に擦り寄っていく例は何度も見てきた。
もちろん、立派な活動を続けている団体も多数あるが。
僕の感想では、本書の眼目は「市民活動のあり方」というひとつの覗き穴を通して日中を比較し、相互理解をより深めようとした点にあると思う。
互いに対するステレオタイプな理解を越えて、ヴィジョンをもって主体的に活動している人々の姿を知ることで、人としての共感が生まれる。
もちろん、政治家がわざと煽っているナショナリズムによる対立は迷惑至極だ。
その批判は批判でやっていくとして、草の根の交流や敬意の行き交いは、もっと根源的なところで、日中の友好を支えていくだろう。
日本で社会的課題を解決していくことをなりわいとしようとしている人々は、中国や欧米の市民活動をあまりきちんと研究、参照していない人が多いように思う。
そして「空気を読んで」ミッションから離れ、体制の一部となっていく。
その結果、往々にして中国の市民活動よりも、体制に飲み込まれてしまっていることもある。
そういった点には、よく留意する必要がある。