僕の初恋は幼稚園の年少組の先生だ。
フルネームを覚えているけど、ここには書かない。
おもしろいというか、おそろしいというか、大人になってから、当時の写真を見ると、年少組のときの先生は、年長組のときの先生より、確かにきりりとした美人である。
つまり男の子は四歳でも、美人を見分けている。いや、それは語弊があるな。四歳のときから僕の女性の好みは今もあまり変わらないというのが、客観的な言い方かな。(;゜ロ゜)
僕の初告白は小学校一年生のときだ。フルネームを覚えているけど、ここにはOとしか書かない。
僕は特に何を考えていたわけでもないが、休み時間にその子の席に行って
「あんな、僕な、Oのことな、好きやねん」と言った。
次の瞬間、思いがけないことが起った。
僕は何を期待していたわけでも、畏れていたわけでもないが、次に起ったことは予想の範疇を越えていた。
Oは突然大声で泣き始めたのだ。
クラス中の男子が集まってきて
「N(僕の苗字)がOを泣かしよった!」と口々に言い、大騒ぎになった。
今でいう炎上である。
教室が炎上してしまった。
僕はOに「ごめんな。ごめんな」と言った。
なんで告白して謝らなければいけないのか、なにがなんだかわからないが、とにかくそうするしかなかった。
今思えば、彼女はただひたすら、びっくりしたのだろう。
大きな小学校で何クラスもあり、次にその子と同じクラスになったのは五年生のときだった。
ある日、Oが僕に一緒に帰ろうと言った。
僕は喜んで一緒に校門を出た。
しばらく行ったところでOは「これ、あげる」と言った。
少し使った赤鉛筆だった。
僕は「ありがとう」と言って受け取った。
これが一年生のときの告白への答なのだと思った!
僕は歩きながら言った。
「あのな」
「ん?」
「一年生のとき、ごめんな」
「え、なに?」
「好きやって言って」
「そんなん言った?」
「言ったよ、そしたら泣いちゃったやん」
「・・・・・・」
「覚えてないの?」
僕は四年間もずっとトラウマになっていたのに、その幼い記憶を彼女は失っていたのだった。
それともあれは僕の側の幻の記憶?
連絡先もしれぬが、同級生だったからには、彼女は今たぶん(いや必ず)五八歳である。(^0^)