著者の作品、まだ2作しか読めてませんがわりとスリリングな展開、身近にもなくはなさそうなストーリーで引き込まれます。
もともとはボーイズラブのジャンルで活躍されていたようです。
この作品は…ジャンル分けするなら「ヒューマン」というくらいにしか表現できないような、繊細な作品。ネタバレ注意。
ボランティアに向かうママ、ボランティア先でいつもと違う様子のママ。
主人公の結珠(ゆず)ちゃんが感じ取る風景、人物の雰囲気、色、匂いや空気、物質の質感や心の描写が絶妙で自分の感情も豊かになる感覚。
そしてもう一人の主人公、果遠(かのん)ちゃんが登場する。
物語はこの二人の視点を交互に載せて進み始める。
育つ環境が違っても、心を通わせ合う二人が時折見せる子どもながらの
「思い切った」
行動にハラハラさせられる。
これが大人と子どもの視点の違いかと思わせられる。
二人は高校生となる。
偶然のように思える再会も、一方からするとそれは必然なのは現実でも一緒かも知れない。
再び出会ったことで途切れていたお互いの過去がつながり始める。
結珠ちゃんから見える果遠ちゃん、果遠ちゃんから見える結珠ちゃん。
お互いに強く見えるけど、やはりまだ高校生。
見えないところで何者かによって守られている。
親であったり、教師であったり、近所に住む人だったり。
そしてまた、必然かのように離れていく。
大人になって、自由なようで不自由な二人。
また巡り合ってお互いの過去を埋め合う。
気づいていなかった想いや事実を知り、向き合い、また前へ進む。
「あの頃」と同じように「思い切った」行動をとるとは…またハラハラさせられる。
年齢とともに関係してくる人間がガラリと変わるんだよなぁとこの本を通じて改めて感じる。
関わる人間が増える一方で、思春期の頃と比べて人付き合いも上手くなっている。
思い通りにいった経験が少ないと、その場面が来た時に心臓がバクバクする。
最後はそんな思いで読ませてもらいました。