イギリスで生活費の危機に直面している人々の実情を取り上げています。エイスリン・コーリーはロンドンで保育士として働いており、子供たちに十分なおやつを買う余裕がない場合には、クリエイティブな方法で子供たちを楽しませるようにしています。彼女はフードバンクから手に入れたオレンジやリンゴを分け合ってピクニックをすることで子供たちに喜びを提供し、自分の食事を犠牲にすることもあります。
イギリス全体でも、食品の価格や暖房費の上昇などにより、生活費の危機に直面している人々が増えています。記事では、BBCが1ポンド以下で作れるレシピを多数公開していることや、学校が暖房を下げるなどの対策を取っていること、さらには寒い家に住む人々のためのウォーム・スペースの設置などが紹介されています。
特に衝撃的な事実として挙げられているのは、働いているにもかかわらず、子供たちを食べさせることに苦労している人々の増加です。これは、生活費の上昇が収入を上回る状況にあることを示しています。そのため、多くの人々が初めてフードバンクを利用するようになっていると報じられています。
教会牧師のヴィッキー・ロングボーンが率いるダービーのフードバンクを運営する教会についても触れられています。彼女は働いている人々がフードバンクを訪れる状況を「恐るべき状況」と表現しています。
雇用は増加して失業世帯は減少しているものの、多くの人々がまともな生活を送れない状況が続いています。物価上昇率は41年ぶりの水準に達し、賃上げが追いついていないため、これらの人々の生活はますます不安定になっています。
10年間にわたる保守党政権の緊縮財政政策により、低所得者世帯を含む多くの労働者世帯への給付金が削減されてきました。イギリスは2016年以降、多くの職種で世界トップクラスの最低賃金を導入してきましたが、それでも十分な労働時間を確保できない人々が多く存在し、低所得者の所得成長は他の西側諸国よりも遅れていると報じられています。
独立調査機関であるレゾリューション財団のエコノミスト、グレッグ・スウェイツは、過去10年間が非常に厳しいものであり、状況はますます厳しくなっていると述べています。
昨年10月には消費者物価指数が前年同月比で11.1%上昇し、特にエネルギーと食料品の値上がりが大きかったため、低所得者層は厳しい打撃を受けました。物価上昇率は12月には多少鈍化しましたが、それでも前年同月比で10%以上上昇しています。
フードバンクに頼る勤労者世帯の割合が増加していることも指摘されています。トラッセル・トラストによると、イギリス各地の食料配給所では、2022年上半期に30万人以上の新規利用者が記録され、そのうちの5人に1人は労働者世帯の人々であったと報告されています。
ロンドンのハックニー・フード・バンクが昨年に比べて子供たちに食事を提供する必要がある人数が増加していることが述べられています。一部の学校では、福祉制度の受給資格者だけでなく、すべての生徒に無料の食事を提供するようになっています。ロンドンの貧困地区にある学校の校長は、無料のトーストを提供することで頼る子供や親が増えていると述べています。
フェリックス・プロジェクトは、ロンドン全域の団体に余剰食品を提供しており、最近、公共部門でフルタイムの仕事をしている人々もフードバンクを利用する状況になっていると報告されています。キングスリー・フレドリックというフードバンクのスタッフは、「救急隊員や教師がフードバンクに行くのを見かける」と述べており、これは地域社会や国全体について深刻な問題を示していると指摘しています。
ジョセフ・ラウントリー財団の分析によると、ロンドンの低所得者層は家賃の上昇圧力も受けており、生活費危機の中で最も困難な状況に置かれています。しかし、この危機はロンドンに限らず、スコットランドやイングランド北部でも深刻な影響が広がっていると報告されています。
一部の与党・保守党の議員は、フードバンクの需要は本当のニーズを反映していないと主張しています。彼らは、フードバンクを利用する人々が「まともに料理ができず、ゼロから食事を作れず、家計の予算を管理できない」と述べて、これこそが真の「課題」であると主張しています。
労働・年金省の広報担当者は、政府が家計が苦しい状況にあることを認識しており、生活費危機に直面している人々を支援するために数十億ポンドの資金を投入したことを述べています。
ユーガブの調査によると、過去1カ月間にお金が足りなかったために食事を抜いた人の割合が11%に上り、パンデミック前の5%から大きく増加していることが明らかになりました。政府はパンデミックのピーク時に子供の貧困が減少したと主張していますが、専門家によれば、それはパンデミック関連の政府給付によるものであり、既に給付が終了していると述べられています。
ロンドンの学校グループのCEOであるクリスタラ・ジャミル氏が、生活費危機の影響を日常的に目の当たりにしていると証言しています。一部の子供たちは昼食として1袋のビスケットしか持ってこられない状況になっており、補助教員の間でもフードバンクの利用が始まっていると報告されています。
シェフズ・イン・スクールズという学校給食の慈善団体は、教師から子供たちがクラスメートから食べ物を盗んだり、昼食を持ってこなかったりしているといった報告を受けていると述べています。
政府はイングランドでは3分の1以上の子供が無償の学校給食を受けていると主張していますが、慈善団体は、低所得世帯の学年が親の所得上限を上回っているために支援を受けられないケースが多いと主張しています。
教師や慈善団体は、子供たちにとって学校給食が栄養のある食事であり、1日の中で頼りになる唯一の食事になっていると述べています。