企業が投資を行う際、人や投資先に対するデューデリジェンスは非常に重要といえます。その際、最初に気にするべき点は信用できるかどうかでしょう。例えば投資先の人間が何かしらのリスクを内包しているかもしれませんが、適切なデューデリジェンスなしにはまったくわかりません。とはいっても、それをいちいち行うことは手間がかかります。これは情報の透明度が低いことで起こる事象かもしれません。
ブロックチェーンは、改めて威力があり、まさにデューデリジェンスを自動的に行える装置と言い換えてもいいかもしれません。北欧にあるトラムでは、改札がないことで有名ですが、これは事前にチケットをデジタル発行して乗ることが前提となており、それができなければそもそもトラムに乗れない仕組みとなっています。
これは、デューデリジェンスの人員を削減しつつ、デジタルチケットでしかトラムに乗ることができないというフィルタリングをかけることができており、効率的な手法といえます。
ブロックチェーンでは、かつてSBTのようなものが提案されましたが、それは一種のデューデリジェンスツールであると考えられます。
SBTは一つの例ですが、このような提案は透明性(トランスペアレンシー)を確保するために有用であるともいわれており、個人の情報をあえて開示することで信頼を確保することができます。
企業側がその個人の情報にアクセスできれば「信頼に足る」といえますが、一方でアクセスできなければ「信頼に足らない」と判断できます。つまり、トランスペアレンシーは一種のデューデリジェンス過程でもあり、これらを提供する動きが今後世界では主流になっていくと考えられます。
では、上記のような情報の透明性を確保することのメリットはどのようなものがあるのでしょうか。一つは、その基準がグローバルベースであれば、個人情報を開示するだけで、世界中の金融機関や企業から信頼を獲得しやすくなります。
一例としてはVCによるエクイティファイナンスなどが挙げられますが、これらの透明性を確保し、その要件に満たしてさえいれば、これまで長行程だったデューデリジェンスを極めて効率的に行うことができ、ビジネスの回転速度を上げることができます。
すでに、一部の北法諸国のVCなどでは、この透明性を利用した活動も行われており、それによって多くのユニコーン企業が誕生しています。
ブロックチェーンでも、同様のシステムを提案されていたことがあり、個人情報を確立したうえでDAOなどに貢献しやすくする、というものなどがありました。これはグラントのような知識によるフィルタリングとは少しシステムを異にするもので、SBTやNFTを保有していれば、信頼に足るという判断ができるいい例といえるでしょう。
透明性の問題は、一枚岩ではなく非常に複雑である場合が多いです。ここで、世界で最も政治的に透明といわれている北欧諸国がなぜ、そのほかの地域よりも人工的に少ないにもかかわらず成功していると言われるのか、透明性をキーに考えていきます。
現在声高に叫ばれているデジタルトランスフォーメーション、通称DXにモビリティアズアサービス(MaaS)などは北欧地域から聞こえてきたものとして考えられています。北欧はデジタル社会として世界的に見ても成功していると言われる一つであり、電子国家・エストニアをはじめ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、リトアニア、ラトビア、アイスランドがそれにあたります。
エストニアのe-Estoniaは有名ですが、他にも女性の社会参加率が世界で最も高いと言われるアイスランドやイノベーション指数世界一のスウェーデン、幸福度ランキング世界一のフィンランドにデジタル政府ランキング世界一のデンマークなど、そのほとんどが何らかの世界一の称号を得ています。
北欧バルト地域では、上記のような透明性を重視したVCや社会システムが主流となっており、地域特性である安定した政治動向やその透明性がデジタル技術の浸透を後押ししていると言えます。例としては、フィンランドでコロナウイルス関連の情報を開示するように言うと、日本のそれよりも多くの項目でデータを開示してくれます。日本もフィンランドも接種数や接種順にトラブルが起きることはないですが、今どうなっているのか?の情報を明確かつ広範囲で取得できるフィンランドは、透明性を確保しているため国民から信頼を得やすいのだと考えられています。
日本よりも少ない人口が所属する経済圏(北欧バルト8か国総計3000万人ほど)にもかかわらずSpotify(音楽)やSkype(チャット)、TransferWise(国際送金)、Unity(ゲーム)、Wolt(配達)などのユニコーンを排出する北欧は、目指すべきモデルとして考えられており、アジア圏の中でも日本は北欧モデルに最もフィットしやすいともいわれています。