最近耳にする日銀のイールドカーブ・コントロール、これはかつて米国が1940年代に行っていた直接的な財政への口出し(かつての米国では屈辱とされたらしい)であるらしく、日本はYCCをマクロ経済で試していると解されたりします。
しかし、YCCといわれても何をしているのか意味が分からなかったりして不便です。ということで、今回はYCCをやる目的とその内容について紹介していきます。
債券は株式や不動産とは異なり、少しトリッキーな性質を持っています。それは債券価格と市場利率がセットになっており、それらは逆相関の関係で動くということです。
また、債券というくらいなので、需要が高まれば債券価格は高騰し、金利は低下します。これを利用して10年物国債利回りを抑制しているのがYCCということです。
利率=金利
利回り=売却益+利息
金利≠利回り
金利といわれるとき、長期金利と短期金利というものがありますが、具体的には以下の期間において長短が分かれます。
長期金利:1年以上、10年物国債など
短期金利:1年未満、政策金利など
超長期金利:20年物国債など
現在の日本の政策金利はマイナス0.1%であり、これは人為的・決定的に決まります。一方で、長期金利は10年国債の利率などで市場によって決まります。基本的に長期金利>短期金利の場合を順イールド、その逆を逆イールドといいます。
10年物国債利回り、直近は0.5%
イールドカーブコントロールとは、短期金利と長期金利を順イールドに立たせるためにマイナス0.1%の短期金利に対し0%付近になるように短期・長期金利を誘導操作することです。つまり、順イールドカーブになるようにコントロールするという意味になります。これは上述した国債買い付けによって利回りを誘導することでイールドカーブをコントロール下に置きます。日銀によれば、長期金利の変動幅は+1%(マイナス側は不明)まで許容するらしいので、市場で決まるといいつつ、その水準まで上がれば、何らかのオペレーションがあるということになります。
上記に解説したとおり、イールドカーブコントロールの最終目的は「順イールドを確立させる」ことにあります。2016年に導入したマイナス金利によって債券が買われ、10年物、20年物国債の利回りまでがほぼ0%になるフラット化現象に見舞われました。これをシャープに立たせるのがYCCの目的だったのです。
YCCにより順イールドが形成されれば、日銀はどこかでマイナス金利を解除する、つまり政策金利を0%に引き上げるでしょう。そうすれば、現在進行している円安に強力な歯止めがかかることになります。実際、日銀が10年物国債の許容変動幅を0.25%から0.5%に引き上げただけ(YCCをやめる、金融緩和をやめるとは言っていない)で、ドル円は5円円高に振れました。
10年物利回りが0.5%付近を推移し、上昇していくにつれ利上げ圧力はさらに強くなることとみられています。このYCC導入には順イールド形成のほかにもCPI2%水準のオーバーシュート型コミットメントも狙っているとされますが、現在のCPIは4%台に乗っており、こちらは問題なくクリアするとみて良いでしょう。これらのことを鑑みると、下記に述べられているように年内か2024年には0%にあげられるのでは?という見立てもあります。