1ドル150円。それはすでに突破された指標であり、日本円がさらに安くなる可能性が秘めています。さて、ここで第二次世界大戦期に起きたドイツマルクの暴落を振り返ってみます。
ドイツ、過去の名前でいえばワイマール共和国の通貨であったパピエルマルクは、突然のハイパーインフレーションによってその通貨価値を一気に落としました。マルクが暴落した理由は第一次世界大戦の戦費を賄うために支出を余儀なくされたことだったり、銀行法の再発案によって無限にマルク紙幣を擦れることだったり、といろいろ考えられてはいます。おそらくこれ、と思われる原因については後述します。
1914年に、1ドルあたり4.2マルクだったのが1918年にはほぼ倍である7.8マルクになり、1920年初めには1ドル59マルク、1922年には1ドル7000マルク、1923年には1ドルあたり4兆マルクまでマルク安が進行しました。
1914年 4.2Pマルク/USD
1918年 7.8Pマルク/USD
1920年 59Pマルク/USD
1923年 1兆Pマルク/USD = 1レンテンマルク
たったの10年に満たない時期でマルクが暴落することは大戦の時期が近かったからかもしれないですが、このことから日本においても円安が倍以上になることは考えられます。
ドイツはその後、レンテンマルクという新しい貨幣を導入し、継続的なマルク安に歯止めをかけることに成功しました。これはレンテンマルクの奇跡ともいわれています。この時、パピエルマルクと米ドルのレートは1ドル1兆パピエルマルクであり、導入されたレンテンマルクとのレートは、1兆パピエルマルクあたり1レンテンマルク、または1金マルクとなっていたようです。
しかし、このようなハイパーインフレがおきた背景には主に「政府による国債の発行」が積極的に行われたことが原因として挙げられており、これがもしも国民各々が債務を背負うものだったら結果は異なったかもしれないと言われています。その証拠に、レンテンマルクは通貨発行権をもたず、32億枚までの発行制限がかけられていたこともあり、通貨インフレを抑止できたと言われています。
現在の日本と当時のワイマールでは状況が全く異なると言わざるを得ませんが、ユーロ圏の先進国で起きた通貨暴落は意外な事実を掲示するかもしれません。
そして、この事実はもう一つの重要な証拠を残していました。それが、一度落ちた通貨はなかなか元には戻らないということです。このまえの5月に起きたTerraの暴落も同じですが、現在のところUSTの価格はいまだ地に落ちており、今後とも復活することはないと思われます。一方で、新しく導入されたUSTもまだ以前の水準に戻っておらず、おそらく今後も戻らないでしょう。
レンテンマルクは奇跡とは言われていますが、それでも前のパピエルマルクは1兆という超下落状態のままであり、そこからの復活はなかったわけで、下落した通貨が元に戻るのは至難の業であることがうかがえます。
同様にフランスのフランも通貨価値の下落により「新フラン」の導入、そしてやがては「ユーロ」の導入を行うなど改革を実施してきました。その背景にあったのも又「自国通貨の価値下落」にほかなりません。
また、イタリアのリラも大戦期は1ドル19リラであったものが、1960年ごろには1ドル400リラほどになっており、最終的なユーロの導入につながっていきました。
もしも日本円が100円台まで戻るとしたら、政府の政策か過去の経済成長を超える何かが必要ですが、それは起きたら奇跡であり、そこまで期待できるかはわかりません。
少なくとも、一度大幅に落ちた通貨を元に戻すというのは、その通貨自身では不可能に近く、他の代替通貨を導入する、ということしか考えられないでしょう。
実際、これまで比較対象としてきた米ドルも1960年に比べると、その価値を1000倍も落としています。