さて、試作機が出来上がるまでに発射場の手配を済ませておくべきだな。場所はあの辺りでいいとして、どうやって手に入れるかだな?
「ここは、一丁あの手でやるか」
俺は、力を得たい時に利用する打ち出の小づちを求めて中庭に出た。そこにはやはり時間と共に表面を流水が流れるかのように見える不思議な青いドレスを着た少女が居た。
さすがに、ネコの情報通りだったな。この時間、館の中庭でぼーっとしているのは俺が放った密偵とは名ばかりの只飯食いによって調べは着いていた。と、いうか屋根の上でうちの密偵をたった今首になったネコが気持ち良さげに寝ているよ。まったく。
「よう、なんだか暇そうだな。だったら、悪いんだが力を貸してくれよ」
心底嫌な奴を見るかのように、下僕一号は宣った。
「嫌よ」
「お、おい。断るにしても話を聞いてからにしろよ。しかもノータイムで。俺だって無暗矢鱈にお前にちょっかい掛けているわけでもなし、必要だから、命懸けでやってるだけだろうが!」
「そんなの、関係ない。嫌!」
「そう、言わずに俺の弟分が困ってるんだ。助けたいんだ、ついでに儲けたいし、必要な土地も接収したいし。頼む、この通りだ」
俺は、青いドレスの少女に向かって深々と頭を下げた。目的の為なら頭ぐらい下げるし、命も掛ける。プライドなど、肥大した自尊心にこびり付く錆みたいなもんだ。だから、これが俺の兆利人への道だ。
「もう、面倒臭いわね。で、今度はどんな力を望む?お前の命がチップじゃ大したものはテーブルに置けないわよ」
「ああ、灼熱の炎を操る魔人がいるとネコさんに聞いたんだが ・・・・・・ たしか、魔人アロケルだ。そいつの、アロケルの力を借りたい!」
「ふうーん、アロケルかあ。まあ、いいんじゃない。お客様がアロケルに従えるだけの力を示せるなら。貸しましょう、かの者の力を」
「よし、話は決まったな。俺はいつでもいいぜ。アロケルを呼び出してくれ」
「ふふ、死に急がなくともよいものを。アロケル、めんどくさいからとっとと目の前のお客人を懲らしめなさい。特に生死は問いません」
下僕一号の首輪に装着された真鍮の壺から、炎が噴き出すと瞬く間に魔人の姿をとった。魔人アロケル、燃える炎の鬣《たてがみ》を持つライオン頭の騎士は巨大な剣を構えた。
俺も準備を始めないとな。すなわち、鎧と剣を召喚する。
「セーレ、力を貸せ。アンドロマリウス!お前もだ。百万霊子《レイス)》、金の鎧《マネースーツ》、百万霊子、金の劔《マネーソード》!
おーし、いくぜぇ!」
黄金の劔と炎を纏った巨大な剣がぶつかる、力押しに負けたふりをして押し切られる俺、押し込み過ぎて巨大な剣を振るう空間がないアロケル。
俺は、容赦なく至近距離でぶっ放す。
黄金の剣が、二本、四本、八本、十六本と倍々に増えながらアロケルの身体に突き刺さっていく。それも、瞬きするほどの時間でだ。
これが、魔界一の反応速度を持つセーレの力と、何でも複製してしまうアンドロマリウスの力を合わせた攻撃、無限増殖剣攻撃《ガン・ソード・バスター》だ。
粉微塵にされて成すすべもない魔人アロケルが哀れな位だ。遂に、黄金の剣が六五五三六本を数えたとき、アロケルが炎の粒子となって俺の腕輪に付属する真鍮の壺に吸い込まれて消え去った。
「よし、火炎の力を手に入れたぜ」
「むっ、アロケルめ。ほとんど召喚したことが無かったがこの程度の奴だったとは。大して惜しくも無いわ、好きなだけ使い倒すがいい、お客様!」
研究室のモニターで一部始終を確認すると、シャム猫は満足そうに後ろ足で耳を掻くと一声鳴くのだった。
「・・・・・・ ニャーオ」