さて、主《あるじ》さん改め、ジョージさんの許可も取り付けたので仮想通貨で異世界を席捲させてやるぞ。待ってろ、俺を嵌めた憎いあいつ!
「ネコさん、この国の経済も、ほぼ物々交換なのですか?」
俺は、経済、兼開発兼、噛ませ犬(汚れ仕事)担当のネコさんにインタビューをかましていた。うう、見事な三K担当さんだ(涙)
いや冗談抜きで、システム開発に現場のヒアリングは重要だよ(笑)
「まあ、此のあたりの村では、ほとんどが物々交換ですが街では、金貨、銀貨、銅貨などを使った貨幣経済になっていますよ。ただ、竜様の仰られた紙幣はこの国と言わず、他国でも使用しているのを聞きません。私の聞いてないは、暗黙の了解で存在しないということで理解を進めてくださいね(ハート)」
な、何だ?よっぽどストレス溜まっているんだろうなぁ。
「と、ところで。あのいつもムスッとした、不思議な水色のドレスを着た女の子の立ち位置はどうなっていますか?碌に、話して貰えないんですが。名前もまだ教えてもらってないし(涙)」
「ああ、彼女は・・・名前なんか飾りですよ、それが上の人には判らないだけなんですよ!放って置いていいですよ、戦闘力ならこの世で一番でしょうし。何せ、マスタがこの世界で唯一存在を認めた被造物です。マスタの錬金術の粋を集めた究極の一体、それに彼女には使い魔が七二体もいますから、大抵のことは何とかなってしまいます。いまいましい、ことに、ぎりっ」
う?なんか、触れてはイケナイことなのか?ただの世間話なのに、地雷か。
「じゃあ、広報活動は彼女か、その使い魔にやらせればいいね」
「ええ、この世界は奴に甘いですから、上手くいきますよ、クソ!」
なんか、本音が見えてきてヤバいので次の議題に行こう。
「で、個人的な都合で申し訳ないだけど。俺は祖国と奪われたすべてを奪い返すためにこの世界の経済を握りたい。あまり悠長に出来ないんだ、ネコさん。だから、本来通過するはずの紙幣の時代をすっ飛ばす。なので、簡単に金貨、貨幣経済から仮想通貨に移行する裏ワザは無いかな(ねだり目)」
俺は、この時気付いていなかったが、女神?エンドロ・ペニーに授かった力、チートスキル『詐欺(スキャム)』が発動していたことに気付いていなかった。
「うーん、竜さんに頼まれると、骨まで溶かされそうで(硫酸だけに)イヤと言えませんね。(マスタが悪いんですからね、私に構ってくれずに、こういう人を預けるとか、鬼畜、根性曲がりなんだから)そうですねー」
ネコさんの提案を受け入れ、三日ほど準備期間を置いて俺と、下僕一号(不思議な水色のドレスを着た少女が、名前は教えないのでこう呼べと言った、誰得?)が街で行なったこととは。
街の子供たちの小遣いをくすねることだった。
因みにこの国での交換比率は、銅貨一0枚で銀貨一枚、銀貨一0枚で金貨一枚となっている。
「じゃあさぁ、お姉さんに銀貨二枚持って来てくれたら、二二0霊子《レイス》あげるよ。あっちのお菓子屋で、ケーキ一個が銀貨二枚で売っているけど、二二0霊子だとおまけに飴玉一0個付けてあげるよ。凄ーく、お得だよ」
「えー、上手い話しには落とし穴があるってうちの父ちゃんが言ってたよ。なんかだましてないかな?」
ちょっと、賢そうな?多分商人の息子が疑問を呈した。
「ああ、でもね。あっちの店に聞いてみるといいよ。あそこのケーキは一個、銀貨二枚だし、飴玉一0個は銅貨二枚で売っているからね。うちは、銀貨二枚と二ニ0霊子《レイス》を交換するし、実はあの店でも霊子でケーキと飴玉を売ってくれるよ」
嘘だったら、許さないからと捨て台詞を残して、賢そうなお子様がお菓子屋に駆けていった。
「お姉さん、銀貨二枚持って来たよ。霊子と交換して。はい、どうぞ」
「え?なんか、頭の中に二ニ0霊子て、見える?」
下僕一号は、にっこり笑うと「そうよ、それが君の口座残高、220霊子よ。あと、買い物するときは、トレードって心の中で唱えればいいわ」
「うん、じゃあ。ケーキと飴玉を、トレード?」
「はい、毎度あり。ケーキ一個と飴玉一個です、またのお越しをお待ちしています」
「あ、ありがとう」少年は、はにかみながら商品を受け取ると家の方へ駆けていった。
「わー、小遣いを母ちゃんから貰わなきゃ」
「おい、だれか銀貨二枚貸してくれよ」
「すごーい、お父様にお知らせしなくては!」
周りで様子を窺っていた、子供たちが家路へ急ぐ。
「ふうー、エンドロ・ペニーのチートスキルは、ぱねぇーな。ま、あのネコさんに効いたんだがから、いや?もしかしてジョージさんにも影響が・・・笑えないな、こりゃ」