延々と続く通路を昇っていると、永遠に終わりは無いのかと疑心暗鬼に駆られるものだ・・・・・・
「ねえ、キール。あとどれくらいでお宝にたどり着けるの?もう、かなり歩いたよね」
「ああ、たぶん三時間ぐらいは歩いているはずだな。だが、まだ先は見えないな」 「もう、頼りにならないわね。ねえ、ホムンクルスさん。
なんか、宝探しに便利な魔術とかないの?」
(うーん?なんか、探し物に強い使い魔がいたような気がするんだけど? 誰だったかなあ、結構重用していた気がするんだけど何だっけ?)
『済まぬな、便利屋がたしかいたような気がするが・・・・・・』
リサは、皮袋の中から何やら探し出すと一口齧った。
「もう、疲れたし休憩しよ。お腹空いたし、これ食べる?」
『なんだ、それは?甘くてコクがあるな』
「あんドーナツよ。今朝屋台で買っておいたの」
『あん?そうか、アンだ!』
「え?」
ホムンクルスは、それ自体に決して意味がないただのポーズ、額の前に右手を翳す、をとると呪文のごとくしゃべりだした。
『我、ソローンが命ずる。魔界の序列七ニ位、盗賊の神にして地獄の下っ端伯爵アンドロマリウス疾くと現れよ』
何処からともなく渦巻く紅い煙が立ち昇り、やがて消えると右腕に大蛇を巻いた美女が現れた。
『お久しゅうございます、ソローン様。幽閉の間よりご帰還おめでとう存じます。それにしても、相変わらず辛辣なお言葉ですこと』
『うむ、待たせたなアン。此度其方を呼んだのは、この神殿に隠された宝を探させるためよ』
『かしこまりました。ならば、この道をお進みください』
アンドロマリウスが大蛇を振り回し、そして通路の壁に叩きつけるとくねくねと折れ曲がった蛇の道が現れた。
「なんだか、気味が悪いわね。こんな道進みたくな・・・・・・」
アンドロマリウスに睨まれて、リサは途中で忌避するように口をつぐんだ。
「おっ、ようやく着いたようだな。うーん、おりゃあ」
一行の目の前に、宝石で飾られた金色の扉が立ちふさがった。キールが力いっぱいに押しても引いても扉は開かなかった。
『アン、やっておしまい!』
『では、失礼。いやあ!』
またもアンドロマリウスが大蛇を扉にぶつけると、扉が静かに開き部屋に収められた宝玉が放つ光に目を奪われる。
その中央には、数々の宝玉よりも更に価値があると言わんばかりに右足が空中に浮いていた。