次は、こちらから直々に地獄にお邪魔しようか。 その前に、現状の把握は大事だよな。
「ネコ、ソローンと使い魔のステータスを表示してくれ。流石に、カードを三枚も作って三画面のデータを出すのは面倒だから、ちょっとやってくれ」
「マスタ、できるからと言って手を抜いていると足元を掬われますよ。よく英雄が腹心の部下に刺されるとか、あり触れた話でしょう。
では、順番に表示しますね」
名前:ソローン
種族:ホムンクルス
LV:26
STR(筋力):98
DEX(器用):68
VIT(持久):63
AGI(敏捷):61
INT(知性):81
MND(精神):102
AUX 使い魔:アンドロマリウス(アン)
魔界序列:72
特殊攻撃:ダイダロスアタック(物理+毒攻撃)
AUX 使い魔:セーレ
魔界序列:70
特殊攻撃:ボヤッキー(精神攻撃)
うむ、脳裏にソローンと使い魔のデータが表示されている。使い魔については、LVとかないんだな。
「マスタ、使い魔の強さは、召喚者つまりソローンの強さが反映されます。あと、ソローンとの相性というか、親密度が結構隠れパラメータになっていると推測します」
よし、だいたい解った。
「今日は、折角の日食だし、魔界へこちらから出向いて強力な使い魔を手に入れるぞ、ソローン」
「わかりました、マスター意に沿えるよう努力いたします」
恒星の前を、この星の衛星が突っ切る時に恒星を隠す現象だが、黒魔術的には、別の意味がある。それは、魔界への扉が開くということだ。
辺りは恒星からの光が遮られ暗くなっていく。
「じゃ、行くぞ!」 「はい。マスター」
俺たちは、魔界への扉を潜った。その先には。
バーのカウンターで、飲んだくれている金髪の女がいた。普通の女と違うのは、頭に角と、尻尾を生やして溜息をついていることだ。
「ああ、もう私の将来どうなるのでございましょう。最近、魔界の貴族たちが変な人間の使い魔に身を落としているみたいだし。おお、そんなことになったら侯爵家に生まれた私は生きていけないのでございます」
「ああ、鬱陶しい奴だな。マスター今、片付けますから暫しお待ちを。アン、セーレ目障りだからやっておしまいなさい」
アンは、いつものこととて、ぞんざいな召喚も格上に対して挑まされる理不尽に苦情もなく。右腕の大蛇を魔界の女貴族に揮うのだった。
しかし、元美男子の双子のプリンスだったが現在は禿頭の小太り親父であるセーレは、腹の虫が治まらない。
「ああ、まただよ。なんで、吾輩はこんなに貧乏くじばかり引くんだよ。尻拭いばっかりさせられているし、昨日は戦闘訓練で不意打ち食らわされて格下に負かされて吾輩の評価はストップ安だよ。もう、やってらんない」
アンのダイダロスアタックを軽快なステップで交わしていた女貴族は、セーレのボヤキ攻撃に足を救われまともに攻撃を受けてしまった。
「ああ、もう死のうかな。こんな人間の軍門に下った格下に魔界まで来られて、攻撃を受けているのなんか、もう、19の軍団を指揮する序列27番目の侯爵の地位も風前のともしびでございます。いっそ一思いに私の、ロノヴェの人生ごと葬ってくださいでございます」
「もう、ほんとイライラする奴ね。その性根の腐った根性を叩きなおしてやるから使い魔になりな!
この、『ソローンの造り手』の娘、ソローンの名において命ずる汝ロノヴェ、19の軍団を指揮する序列19番の侯爵、我が手足となれ!」
「もう、どうにでもしてで、ございます。ご主人様」
ロノヴェは、黄色い煙に姿を変えソローンの七十二柱の壺に吸い込まれた消えた。
「ああ、もうやってらんないよな。いっつも汚れ役ばっかりやらされてさこの前だってそうだし。今回もご主人様に良いところ取られてばっかだし。それよりも、ちゃっかりアンドロマリウスさえ攻撃を決めてるしさ。ほんと、やってられないよなあ」
「アン、今回もいい働きだったよ。セーレはもっと気合入れて励めよ。じゃ、解散!」
アンドロマリウスとセーレは煙になると、七十二柱の壺に吸い込まれた消えた。
「よし、なんとか間に合ったな。日食が終わる前に館へ帰るぞ」
「はい、マスター」