うーん、うーむ。
俺は自室で、スマフォとにらめっこで唸っていた。
「ご主人、そんなに唸ってどうしたにゃ。歯でも痛いにゃ?」
「いや、お前の大好きな穀物抜き《グレインフリー》のキャットフードが高くてなあ、今大体0.0一BST《ビーストコイン》するんだよな。もう、面倒だからお前餌ぐらい自分で取って来いよ」
シャーっ!
「痛て、こら、爪を立てるな!」
「飼い主の義務放棄は、重大な罰則が・・・伴うにゃ!」
ま、冗談はさておき。
「冗談なのにゃ?」
「ああ、そろそろ溜まった霊子を元にBSTに変換して元居た世界にくすぶる有望企業の買収がしたいんだが結構高いからなあ。
この会社は割と有望そうかもしれないな。直接俺がM&A(企業買収)を仕掛けるのは国のお偉いさんに目を付けられそうでやばいし、ベンチャー企業なら少しは割安で買えるだろう」
「ふーん、あっ。この会社を株主優待で穀物抜きキャットフードを貰えるのにゃ。そんな旅行会社とか買うよりこの会社の株主になればいいにゃ。そうすれば、思いっきり美味しいものが食べれるにゃ」
ふぅ、お前はどこの食いしん坊キャラだよ。郷においては郷に従え、地産地消でこっちの食い物を取って来ればいいだろ。ま、ネコの相手は後だ。
まあ、ナルシュが頑張って仕事しているからEJの配当(EJは収入の80%を所有者に配当している。そして俺はEJ総発行枚数の35%を握っている)も順調に入って来ているので、それこそ一万年分だろうと払いきれてしまう。ネコには内緒だが。
おっ、凄腕のM&Aアドバイザー?俺は裏情報サイトで数々の成功を収めている噂の人物について調べた。
こういう連絡手段か、手間だが致し方なし。
「よし、あの女に連絡だ!」
手順は、こうらしい。
まず、裏サイトの伝言板に『原城に嘆きの鐘が鳴る』とメッセージを残す、このとき連絡先は敢えて書かない。なんだろこいつ、天草四郎推しか?
とりあえず影サーバと闇サーバと捨てサーバを何台か間においてある程度、足跡を辿れないようにしてと(依頼するんだが、調査能力ぐらいは知っとかないとな。あとは、ウザい奴らがたかって来ても鬱陶しいしな)。
さて、あとは向こうからの接触を待つだけか?
5分ほどで、意中の女からメールが来た。
えっ、早すぎないか。俺は驚きながらセキュリテイの確認済ましビデオチャットを開くと赤ずくめの美女がいた。
赤い髪に、赤いスーツを着た男装の麗人が冷たい声で商談を促した。そういえば、瞳は流石に青いな。
「要件を言って」
「ああ、俺は乱導 竜。訳があって、数社を買収を凄腕のM&Aアドバイザーである君に依頼したい。ところで、美しい君のことを何と呼べば?」
「私の敵に回った者は、後悔と失望のうちに悪魔と出会ったと言うわ。味方は私の事を天使と呼ぶ。今のところあなたは敵でも味方でもないわね。スカーレット、とでも呼びなさい竜」
「ターゲットは分った。だけど、私は納得しない依頼は受けない主義。あなたの目的は何なの?それをまだ聞けていないわね」
「規定報酬に追加で二十億払うから、オプションを頼めないかなぁ?」
スカーレットは冷たい視線を三秒投げたあと、冷えた声で別れを告げようとする。
「じゃ、これまでね。私が本気で居所が掴めない相手は初めてだったから連絡したけど、隠し事があるようじゃ。裏切られるかも知れないわね、私は信頼できないクライアントとは仕事をしない主義よ!」
「待て、月に行きたい。いや、俺は行かなくちゃならないんだ!」
「確かに、今日は4月1日エイプリルフールだけど商談の席に笑いを求めないで!」
俺は、怒るスカーレットに本当の事情を話した。
「ふーん、あなたが話した内容をあなたが信じていることはわかったわ。既定の料金を振り込んで、そしたら契約締結よ。アドレスは、え?ちょっと待ってよ。まだ、アドレスを言ってないのに何で振り込まれているの?」
「ああ、さっきも言ったけどこの世界に転移するときに貰った力だよ。こと、仮想通貨に関して俺に隠し事はできない!」
「まあ、いいわ。どんなからくりがあるかは別として。私かなり、あなたの事が気に入ったわ。これからよろしくね、竜」
「ああ、頼りにしているよスカーレット」
こうして俺は転移前の世界での強力な代理人、いや助っ人を手に入れた。