さて、今日はどうやって駄犬を躾けましょうか?うんざりするほど、面倒くさいですわね。
まあ、今日はたまたま暇ですから付きっ切りで雌犬の面倒を見てあげますわ。
「ソローン、今日は客を取らなくてもよくてよ。そのかわり、あなたに伝統的な娼婦なんかより新しくて文化的なお仕事をさせてあげるから、わたくしに感謝するのよ!」
女は勝ち誇ったように、娼館からソローンを引き連れてある見世物小屋に入った。支度部屋には、剣や槍、巨大な魚の尾びれなど雑多な衣装や小道具が雑然と散らばっていた。
「マダム、よろしいのですか?そんな高級娼婦をうちみたいな色物劇場に上げちゃって、こっちは国を傾けようかって美貌の伝説的な娼婦が出演してくれるっていううんで大入り満員ですがね。ふはっ、はは」
「なに、こいつはそんじょそこらの柔な玉とは訳が違うのさ。普通に脚や舌をちょん切ったって、次の日には生えてくるくらいの気合の入ったドMなのさ。
言ってみれば、エロの為に全てを捧げた変態なんだよ。だから、遠慮なくこいつの責め小道具は本物を使うんだよ、いいね!」
「へい、マダム」
舞台では難破船から王子を助けた人魚ソローンが、魔女に人間の娘として変身するためにその舌と美麗な尾びれを差し出していた。
「ふふん、人魚姫ソローンやお前の美しい声と優雅な泳ぎをくれるんだね。たかだか陸の人間に逢いに行くために。
ありがたく、頂くよ。まずは、お前の綺麗な舌をちょん切ってあげるよ!」
魔女は、血塗れの赤黒いハサミで、ソローンの舌をぶった切った。
「う、ぎゃー!」
「ソローンや、その綺麗な虹色の尾びれを貰うよ。ほんと、馬鹿な娘だよ。たかだか陸地に蔓延る小国の王子の元に行くためにこれほどの宝を差し出すとは!」
魔女は、大鎌を振るうとソローンの尾びれを切り裂いた。そして、海の藻屑で造った醜い義足をその傷口に移植して何の変哲もないつまらない脚に変えてしまった。
観客席では、本物の血が降り注ぐ様を見て満員の客が大歓声を上げていた。
(くっ、痛い!な、何故なのこの『ソローンの造り手』様に造られしソローンともあろうものが下賤な人間どもが作った芝居道具で身体を傷つけられるなんて!
私の力は、こ、こんなにも矮小なものだったの?!)
カーテン・コールの後は長蛇の列がソローンの握手会に並んでいた。
「ふう、握手する手が無いんだからしょうがないよな。下半身で相手してもらうぜ」 「ほんとに、申し訳ありませんねお客様。うちの新人女優が粗相で腕を斬り落とされてしまったもんで、せっかく握手券を買っていただいたのに脚の間で我慢してもらうなんてねぇ」
「まったくだ、せっかく握手して貰いに並んだのによう。うっ、下半身も鍛えてあるなあ、絞られるぜ」
(あっ、ああー。なんという屈辱、汚辱、恥辱。これほど馬鹿にされた状態でか、快楽を得るなんて・・・・・・)
「ふふん、ソローンいい気味ね(笑)」
今日の女は何時にもなく機嫌が良いようだった。