力が全てなのか、富が、愛が、何を優先するべきなんだ?!
少年が当て所なく歩いていた。心の中に遠く聞こえる声に導かれて、森を、山を、今は谷沿いの道を彷徨い歩いていた。
「ヒャッハー!男は殺せ、女には傷を付けるなよ。売り物なんだからな」
「いやー」
「そうはさせるか!」
見るからに頭の悪そうなスキンヘッドの集団が馬車を襲っていた。男たちの奮戦虚しく次々と血を流して倒れていく。
「さあて、金目の物は頂いたら野郎は谷底に放り込め!」
「ヒャハアー、女たちは連れていくぞ」
少年は、特に興味無さそうに道を進む。その先には、馬車とそれを取り囲む野盗の集団がいるが淡々と歩みを進める。
気付いた、スキンヘッドの一人が馬を走らせて少年の前に出た。
「ほう、結構見れた面だな。男のガキでも娼館で売れるってなら話は別だぜ、お前運が無かったな」
「どいて、もらえますか?邪魔なんですけど」
「なにー!てめえ、ふざけてんのか?」
「 ・・・・・・ 」
スキンヘッドの男が、痺れを切らして短剣を振り抜いた。少年が斬られるのを誰もが確信したとき、スキンヘッドの頭が滑り落ちた。
首から遅れて血しぶきを上げ、男の身体がゆっくりと崩れ落ちていく。
「何だ?おい、手前らガキだと思って油断するなよ。やっちまえ!」
「・・・・・・ めんどくさい」
残り八人の野盗たちが、骸に変わるのに一分も掛からなかった。
「ま、待って。私たち縛られてるのよ、縄を解いてちょうだい」
「ちょっと、こんな所に置いて行かないで!」
少年が変わらぬ歩調で、馬車を通り越したときに慌てた生き残りの女たちが口々に騒ぎ出した。
「・・・・・・ まったく、めんどくさい」
「へえ、あんた当てもなく旅しているんだ。だったら、私たちと一緒に行こうよ。私はリサ、あんたの名前は? 」
「めんどくさい・・・・・・」
「変わった名前だね、メンドクサイ君か」
「いや、俺はいっしょに行くのも名乗るのもめんどくさいと言っただけだ。俺の名前はキールだよ」
「ふふ、キール君だね。よろしくね、私たちはもう友達じゃない。だから、一緒に旅しようよ。君といっしょなら、旅も楽しくなるだろうし。へへ、へ」
「いいよ。なんだか、断り続けるほうがめんどくさいみたいだしな」
「やった、じゃあキール君も馬車に乗りなよ」
街に着くと、小奇麗な宿屋に取った部屋にリサが訪ねて来た。なんでも殺された男たちの弔いのため役人の所に出掛けてきたらしい。
「お役人さんに野盗の件を伝えたら、あとで確認して賞金が掛かってる犯罪者なら賞金が貰えるらしいよ。よかったねキール君」
「面倒なことにならなきゃいいけどな」