「懲罰」っていう白いカードがあるんだよね、仮想通貨のシステムを使った対戦カードゲームでのことなんだけど・・・・・・
自分の体力が五分のニ以下に減少したときに能力を発動するんだけどね、相手の手札の枚数分ダメージを相手に与えるんだよ。
ま、そういう変わった能力の使い手がいるかも知れないってだけなんだけどね、魔法にもあるんじゃないかとふと思ったんだ。
ほう、なるほどなあ召喚中の使い魔の数をその手持ちカードの枚数に置き換えるとすると、すなわち魔界に干渉している魔導の力と考えるなら・・・・・・ そう何度も行使はできぬだろうが、かなり強力な返し技ができそうだな。
これはひとつ面白い話が聞けた、お前も覚えておきなさい。
はい、マスター。
いつだったか、旅の客人とマスターが異世界の遊戯《ゲーム》について興が乗って話し込んでいたのを何故だか思い出した。
いつのまにか、客人のスマートフォンとマスターの魔導鏡で対戦を始めて朝まで徹夜で興じていたマスターにとびきり美味しいコーヒーを飲ませてあげようとしたっけ。
ふふ、そろそろ頃合いか?
『え?何者!』
ホムンクルスが、訝し気に辺りを見回した。不定形な冷たい金属の板が辺りを囲う。決して油断していた訳では無いだろうが流石に極大魔導を行使し宿願の敵の根源を滅ぼし尽くしたとの感慨がわずかに警戒を薄くしていたのだろう。
また、敵の隠形の技量も高水準の域であったことも災いしたのであった
「さあて、うだうだ口上は述べないよ。我が怨敵の支配する力をすべて、怨敵を滅ぼす力へ。我が願いを成就せよ、我の力ある言葉に応えよ!懲罰《チャスティズ》!」
ホムンクルスを取り囲む金属の板から不可思議で強大な魔導の力が襲い掛かった。 『うわぁー』
「どうだ、いままでに使役した使い魔、魔人バアルを滅ぼした魔導の力のすべてをそっくりそのままお前にくれてやる!滅びよ伝説のホムンクルス、たかが人形の分際で生意気なんだよ、お前はにゃー!!」
シャム猫が恨みを込めて魔導の力を更に上乗せで叩き付けた。
ビシッ、ビシッ! 冷たい金属に映された上半身裸で磔の男に、無数の鞭が振り下ろされる。やがてその磔にされた姿が全てホムンクルスに変わった。
また、鞭打つ者の姿も変異していた、ある鏡には蛙頭のバアル、また別の鏡には人頭のバアルが、他の鏡には猫頭のバアルという風にホムンクルスに葬られた魔人が鏡の中で鞭を揮っていた。更に、使い魔だった魔人セーレや魔人アンドロマリウスも己が主人に向かって鞭を揮うという面妖な魔導の力が、この場に極大のひずみをもたらしていた。
『くぅ、これが客人とマスターが言っていた懲罰の力なのか?一打一打、受けるたびに力が抜け落ちていくようだ』
ホムンクルスが地に膝を着き、両手で身体を支えるのがやっとの状態まで弱り果てたとき遂にシャム猫はホムンクルスの前にゆっくりと忍び寄った。
「ふふっ、最後はわたしの手で息の根をとめてやりましょう。マスターが悪いんですよ、こんな人形にかまけてわたしを蔑ろにして何処かに行ってしまわれるから・・・・・・ 」
シャム猫の鋭い牙が、ホムンクルスの繊手を食い千切るとさも美味そうに咀嚼していった。
「ふう、真に美味!魔導の力が漲っているわ、たった手首一本食べただけでこれほどの力が得られるとは!?」
(うぬ?しかし、なぜこれほど美味いのかしら?)