モニタに映し出される星空は、最初前方が青色後方が赤色だったのが光速に近付くにつれ湾曲した後方の紅い星たちが前方に回り込んできた。それもやがて光速を超えるとブラックアウトした。
「現在、光速の一.二倍で航行中のため光学系モニターの表示はオフに致しました。なお、アンドロマリウスさんとネコさんの協力によりアンドロディテクタによる表示が可能ですがいかがいたしますか、ご主人様?」
この船の管理マシンであるアルドが俺に尋ねてきた。まあ、何も映していないのも殺風景だから表示しておくか。
「ああ、構わん。それを表示してくれ」
「かしこまりました」
正面の大スクリーンに前方の恒星系が映し出された。二つの青く輝く星と小さな赤黒い星が銀河を背景に浮かぶ。
地球から最も近いと言われているケンタウルス座αのA、B、C三つの恒星だ。その中でも一番近い赤色矮星であるCは他の二つが太陽に近い大きさなのに比べ七分の一位の大きさである。
「そう言えば、アルド。この船に名前は付いているのか?」
「はい、マンズーマ・シャムセイヤと名付けられています。ご不満なら変更いたしますかご主人様?」
「いや、いい。マンズーマ・・・・・・シャム猫?まあ、俺が名前で呼ぶことはないだろうし、アルドも慣れた名前の方がいろいろ便利だろう」
「はい、ありがとうございます」
アルドの無表情な中にも嬉し気な感じが見えた気がしたので良しとしよう。船の名前なんか飾りみたいな物、ましてたった一隻の太陽系丸ごとの船だ。名前なんか呼ばなくても存在感がだんちだからな。
「ところで、アルド。ケンタウルス座に針路を取ってるのは何か意味があるのか?」
「はい、ご主人様。久しぶりの航海ですので早めに補給の確認試験をやらないといけませんので。それと徐々に速度を上げて九六時間後には、ケンタウルス座αCに到着します。ご希望でしたら、記念撮影やモニュメントの作成も出来ますが?」
「まあ、珍しい材料があったらお土産に欲しいが。別にモニュメントなどは不要だぞ」
予定通り四日後、マンズーマ・シャムセイヤは試験予定ポイントに到着した。
「では、お写真を三枚撮ります、はい。ちょい、てああ!」
赤色矮星をバックに俺を中心にキリュウ、ネコさん、アルド、アラク、ネコが写真に納まった。違いは背景が、爆発しているか、縮小しているか、何もなくなっているかの違いだけだ。
「おい。αCが消えたがどういうことだ、アルド?」
「はい、予定通り補給テスト完了です。吸収効率八八パーセント誤差コンマ0二、許容範囲内テスト成功です、ご主人様」
「アルド、良くぞこの古い船を復調させましたね。見事です」
「なかなか、見応えのある実験でした」
「ふふ、本体がまともでないと月でゆっくりお茶もできませんし、大儀です」
アラクもネコさんもキリュウも恒星一つ破壊した実験について、特に思うところは無いみたいだ。俺だけなのか、庶民感覚は?
「おい、ネコ!お前はどうなんだよ」
「ごしゅじん、星の一つや二つ消えたくらいで。それこそ星の数ほどまだあるのにゃ」
「まあ、なんだ、アルド。調整ご苦労だった」
「ありがとうございます、ご主人様」
ふう、何気に俺の口座の残高が膨れ上がったことに気付いて機嫌が良くなったんじゃないんだからね。
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