スカーレットの魔導の嵐により地球上の地理が著しく変化してしまった。大陸と呼ばれるものは南極大陸だけ、島にしても弾道ミサイルで攻撃してきた英国などは報復にあって海の底に沈んでいる。
(あれから、色んな国が不作法にも攻撃しに来たので丁重に返礼してあげたわね。おかげで海面上に露出している陸地がかなり減ってしまったわね。一応知る限りではグリーンランド、アイスランド、ニュージーランド、インドネシアに、そうそう日本列島もなぜか残っているわね)
「彼女、結構派手にやったわね。一部の島を除けば全て海とか、きっと月から眺めたら綺麗でしょうね」
「姉さんも見て驚いてるかも知れないな。うーん、探せば映像があるかも。あ、あった。おお!、まさに水の星だなあ。こうして見られるなら地球もまだ安泰かな。
しかし、太陽の活動が弱くなっていくのにも係わらず、こんなにも二酸化炭素の排出を減少させたら間違いなく氷河期が、いや下手したら全球凍結もそう遠くない日に訪れるだろうな」
ネコさんの研究室で俺たちは、激変した地球の様子を投影した画像を眺めながら今後の方針を話し合っていた。
「うん?あれは、いったい?」
俺は、南米大陸があった位置の中央に鋼鉄ぽく見える巨大な箱が浮かんでいるのに気付いた。そうか、沈んだ大陸のあった位置にあの巨大な箱が浮かんでいるのか。結局、巨大な箱が合計五個大陸跡に浮かんでいた。
「お待たせいたしました」
「ありがとう。ふう、いい香りね」
ドバイにある高層ビルのレストランで、紅茶の香りを楽しむのは優雅な所作が美しい美女であった。地上四四二メートル、いや災害で百メートルほど沈降したので地上三四二メートルのレストランで飲む紅茶はさぞや旨いことだろう。
「まったく、生まれたての紅い災害にも困ったものね。普通に生活するのにも面倒な取引が増えてしまって。
まさか、私を焙り出すために新米魔導師を暴走させたというのか・・・・・・」
「御覧なさいアラク、地球の変わり様を。でも、リュラーンも思い切ったことをしたものね」
「いいえ、我が主。あれは多分リュラーン様の意図したことでは無いと思われます」「そうなのかしら?でも、お前が勝負に負けるのもそんな先のことじゃないみたいね。ああ、待ちどおしい早くお逢いしたいわ」
月の女王キリュウ・グツチカ・シトゥールは、紅茶を嗜みながら万感の思いで地球の映像を見やった。