うーん、青は藍より出でて藍より青し。俺は出来る子、俺は出来る子。出来る出来ないを迷うなど心の贅沢、只一心に成功を掴むのみ。死にたいなら、今に留まれ、俺は明日を生きる。鶏口となるも牛後と成るなかれ。
「竜さん、なに?その呪文は。でも、さっきより魔導の高まりが見られるわね、ダメもとで続けてちょうだい」
「仏作って魂入れず、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや、魔に逢うては、魔王を斬る!」
鞭を片手で扱きながら俺に精神的圧迫を掛けて来るネコさんは、月面でも白衣姿で平然としている。何だ、あの白衣は一体どんな秘密があるんだ。
まあ、そんなことより俺は一心にことわざを唱えながら月の石を人形へ変えていく。時には灼熱に加熱し時には絶対零度まで急速冷却し超電導状態を作り出し人形に魔導の力を込めていく。
「豚に念仏、猫に経。古きを温めて新しくを知る。出でよ、石人形《ストーンゴーレム》!」
俺の魔導の力が、膨れ上がりそして人形に吸い込まれていく。白っぽかった人形の表面は黒曜石の様な輝きを放つ石人形として、仰向けに寝た状態からゆっくりと起き上がった。最初は自分の身体が上手く操れないのかフラフラしていたが、三分程で直立不動の姿勢を片足の膝を曲げて太腿に踵を押し付けた状態で維持できるまでになっていた。
「ほう。ようやく、まともに動くゴーレムが作れたようね。今度はそのストーンゴーレムに石を融合させていきなさい。ただし、大きさを変えては駄目よ」
「大きさを変えずに、石を融合するって?それは石を圧縮して、表面の隙間に埋め込むという意味なのか?それとも、石をそれこそエネルギーに変えて文字通りゴーレムに吸収させるということなのか、どっちなんだいネコさん?」
「どちらでもいいのよ、竜さんの好きな方になさい。それは、紛れもなく竜さんのゴーレム何だか誰の指図も受けなくていいわよ」
「そうだな、俺のゴーレムなんだから。じゃあ、オレゴには両方試して見るよ。まずは、石を圧縮して表面に隙間を埋めていくぞ、おお、表面の凹凸が減って鏡のようになってくぞ」
「次は、この石をエネルギーに変えてと。オレゴ、エネルギー補給だ!」
ストーンゴーレムの黒曜石の様な表面が益々平滑化して上等な鏡のようになっていった。そして、黒い輝きがより一層深淵の黒に染まっていく。
「竜さん、大分調子が上がってきたようね。じゃあ、このかばんにこの辺の石と砂を詰め込んで後は夕食まで反復練習よ。一旦、ゴーレムを石くれに戻して、今日やった作業を繰り返して出来るだけ素早く、今の状態にまで昇華させるのよ」
「ああ、分ったよネコさん」
「時間が勿体ないから、ここから転移で竜さんの部屋まで戻ります」
俺が、待てと言う前に最近寝起きしている俺の部屋に二人は戻って来ていた。
夕食後、俺はひたすら強い使い魔を心に想い描いていた。これがストーンゴーレムの創造という課題をクリアした俺の次の一手に移るためのステップだ。
小説仮想通貨で俺は兆利人を目指す!第1話