題名 現代の経営 (上下巻)
著者 ピーター F. ドラッカー
訳者 上田惇生
出版 ダイヤモンド社
ページ数 上巻267、下巻286
ドラッカーの三大古典、「現代の経営」、「創造する経営者」、「経営者の条件」の一つです。経営者の条件についてはこちら。
経営者の条件はエグゼクティブの心得、活動に焦点をあてています。現代の経営にもそのような章はありますが、どちらかといえば会社・組織の仕組み、構造を中心に語っています。
ドラッカーは冷静で理論派ですが、本書にはところどころに怒りがちりばめられています。会社の経営は人が行うものであり、全てが論理的に動くわけではありません。そういった納得いかない、直さなければならないことを熱く語っている部分があります。人間ドラッカーがよりわかるのは、本書現代の経営でしょう。
経営者の条件ではエグゼクティブと言っていた人達のことを、本書では経営管理者と呼んでいます。
会社は機能別組織ではなく、連邦型組織にすべきと言っています。機能型組織とは、営業部、経理部、生産部と機能で分かれた組織です。それに対し、連邦型組織は耳慣れない言葉ですが、要は事業部型組織のことです。機能別組織では、自部門の利益に目が行きがちになります。部門の目標は会社の目標をブレイクダウンしたものにしなければなりません。それには、事業部制にしてそれぞれ売上・利益の目標を持たせることです。
もちろん小規模な会社では事業部制を適用するまでもないですが、会社が大きくなっても機能別組織のときの考えのままで運営されている会社が多いとドラッカーは言っています。
アンラーニング(学びほぐし)の考え方が出てきたので驚きました。最近出てきた言葉だと思っていたからです。何十年も前から考えていた人がいたんですね。リスキリングとは違う概念のようですね。
アンラーニングは、古い知識や過去の成功体験が現在や未来の障害になることを防ぐため、それらを意識的に捨て去ることを指します。アンラーニングは、変化する環境に適応するために、既存の前提や信念を見直し、必要に応じて修正するプロセスです。これにより、柔軟な思考や新しいアイデアへの開放性が促進され、イノベーションや成長が可能になります。
経営者の条件でも述べていましたが、経営管理者は成果を出さなければなりません。しかし、経営管理者本人は現場で手を動かす人ではありません。現場で手を動かす人に働いてもらわなければならないのです。ただ働くのではなく、卓越した仕事をしてもらう必要があります。働く人に卓越した仕事をしてもらうには、お金をあげるだけでは十分ではありません。
下巻5部 「経営管理者であることの意味」に、経営管理者の仕事は何をするかが書かれています。現代の経営で最も重要なところはここだと思います。
1.経営管理者は目標を設定する。目標を達成するために何を行うかを決定する。
2.経営管理者は、組織活動を分析し、仕事を分類する。管理可能な単位に分ける。それらの活動や作業を行う作業者を組織する。
3.経営管理者は動機づけ、コミュニケーションを行う。優れた仕事にはインセンティブを与える。昇進もそれに含まれる。
4.経営管理者は仕事ぶりを評価測定する尺度を設定した上で考課を行う。
5.経営管理者は部下を育成する。部下の強みを引き出し、方向づけする。
IBMの例「IBM物語」が書かれています。IBMでは、コンピュータを作る部門でノルマの設定をやめました。すると作業者は自ら話し合い、作業手順を見直しました。それによって、生産性を大きく向上できたのです。責任を持たせたことで、やる気が向上したのです。そして成果を出すことで、誇りが生まれました。
ここで疑問が出ますが、1日何台作れというノルマは目標じゃなかったのでしょうか。どのような目標を与えたのかは記載がありませんが、おそらく、目標設定まで自分達に任せたのでしょう。
知識や概念の教育だけでは、経営管理者は将来の課題を果たすことはできないとドラッカーは言います。経営管理者の意思決定は企業内に多大な影響を与えます。ですので、流行などに流されない大いなる哲学を持つ必要があります。以下が、経営管理者が人を導くのに必要なものです。
下巻の帯にも書かれていましたが、この中で最も重要なものが真摯さだと述べています。
ドラッカーには悪いんですけど、上巻はたいくつですね。下巻の方がいいです。全部読めない人は、下巻の5部だけでもいいと思います。経営者の条件につながるエッセンスがあります。
ドラッカーを読むと、私は過去の仕事のシーンが思い浮かびます。「なぜ、あのとき私はああ言ったんだろう」「あのとき、こうしていれば良かった」「あの会社では、ああなっていたな」など...。ですので、1ページ読むのも時間がかかってしまいます。私は大抵、仕事で使う技術書も並行して読むことが多いですし、新聞も読まなければなりません。ですので、この上下巻を読むのに3か月くらいかかってしまいました。何をしているのか...
ドラッカーが最重要視する、真摯さとは何でしょうか。顧客の厳しい要求を叶えることでしょうか。定時であがらず、残業することでしょうか。まじめさとも少し違う概念のような気がします。人それぞれ、会社(社会)に提供できる真摯さがあるのではないでしょうか。私もまだよくわかりません。私があと何年仕事をするかわかりませんが、自分なりの真摯さを考えていきます。
三大著書の2つまで読みました。手元には「ネクスト・ソサエティ」「ポスト資本主義社会」「新しい現実」が積まれています。どうしましょうかね。「創造する経営者」を買うべきか。最近何かと資本主義が話題なので「ポスト資本主義社会」にするか。なんか疲れたので簡単に読めそうな「ハンチバック(市川沙央)」にしましょうか。
以上