NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は2022年12月4日に第46回「将軍になった女」を放送しました。実衣は実子の阿野時元を第四代鎌倉殿にしようと画策します。しかし、相談先を三浦義村としたことが誤りでした。視聴者からすると義村は胡散臭い人物です。義村に相談することはあり得ないと感じますが、作中では多くの人に相談されます。
のえ(伊賀の方)の実家の伊賀氏も義村を頼りにしています。北条義時死後の伊賀氏の変の構図が出ており、伊賀氏の変も描いてほしいところです。『どうする家康』の前に北条泰時を主人公とした『どうする泰時』を期待する声もあります。
相談されるキャラと裏切り者の同居は史料でも裏付けられます。結城朝光は梶原景時の讒言対策を三浦義村に相談しました。一方で千葉胤綱からは「三浦の犬は友を食らう」と酷評されました。
阿野時元は謀反を起こしたとして義時に滅ぼされます。「阿野時元の変」や「阿野時元の乱」のような名前も付けられていないマイナーな事件です。時元は将軍の座を望んで挙兵したとされます。しかし、頼朝の子孫が絶えた中では頼朝の弟の子の時元は最も鎌倉殿に近い立場です。自分が後継者になると考えることは不自然ではありません。お飾りの将軍を迎えたい義時の陰謀による冤罪説もあります。
時元の姉妹は公家の藤原公佐(ふじわらのきんすけ)と結婚し、その子孫が阿野氏を称します。この阿野氏から後醍醐天皇の寵姫の阿野廉子が生まれます。後醍醐天皇は鎌倉幕府を滅ぼします。時元の無念を晴らした形です。畠山重忠は北条時政によって冤罪で滅ぼされますが、畠山氏は足利一門として続き、足利尊氏が鎌倉幕府を滅ぼすことと重なります。
今回の義時は「鎌倉は誰にも渡さん」「私の考えが鎌倉の考え」とブラック独裁者ぶりに磨きがかかっています。主人公よりも悪役に相応しいセリフです。義時は実衣を糾弾します。「耳を切り、鼻をそぎ」は鎌倉時代の地頭の横暴を示す言葉ですが、義時にも同じマインドがありました。
義時は実衣を糾弾する前に源実朝暗殺を傍観した自分を責めるべきでしょう。一方で義時の過酷さは武田氏や足利氏など源氏の血筋の御家人が将軍を望むことを否定する意図があるのでしょう。
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