雑誌『映画秘宝』(双葉社)編集長の恫喝DMが問題になっています。『映画秘宝』の公式Twitterアカウントが批判的見解をツイートしたTwitterユーザーに恫喝DM; Direct Messageを出した問題です。そこには誹謗中傷の御都合主義の利用があります。
TBSラジオ『アフター6ジャンクション』が2021年1月5日に韓国映画を特集し、『映画秘宝』の岩田和明編集長らが出演しました。この番組内容に対して女性リスナーがTwitterで女性ゲストがいないことへの疑問や『映画秘宝』のホモソーシャル的な体質に疑問を呈しました。
真っ当な問題提起に感じますが、『映画秘宝』の公式Twitterアカウントの反応は異なりました。『映画秘宝』アカウントは1月17日に女性のTwitterアカウントに「あなたの誹謗中傷のせいで死にたい」という恫喝的なDMを出しました。以下のような内容です。
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今、心の底から深く深く心が傷つき、胸が張り裂けそうなほど大きなショックを受けて、死にたいです。
(中略)
純粋な悪口ということでしたら、これは誹謗中傷でしょうか。
いま、胸が締め付けられるほど苦しくて、呼吸が乱れており、壊れそうなほど深く心が傷つき、あまりのショックの大きさから、何も手が付けられない状態にいます。死にたい。
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ウンザリする内容です。付き合ってられません。脅迫で「死にたい」という言葉を使うことは自殺者や自死遺族への冒涜です。このような人がいるから、自殺問題が理解されなくなります。そもそも知らない人にDMを出すということ自体がハードルのある行為です。それ自体が非常識と反発を受けてもおかしくないものです。
最大の問題は、単に自分達に都合の悪い表現を誹謗中傷とすることで被害者ぶります。言論に言論で対抗させる表現者にあるまじき姿勢です。一方で自分が受けた以上の攻撃を返しています。相互主義に欠けています。テレビドラマ『半沢直樹』の「倍返し」を勘違いして解釈しているのではないでしょうか。
女性は『映画秘宝』発行元の双葉社に意見を出しました。ところが、双葉社は女性の許可なく電話番号などの個人情報を岩田編集長に漏らし、岩田編集長は女性に直接電話をかけてきました。この経緯が批判され、炎上しました。
この問題の後味の悪さは映画秘宝の謝罪対応にあります。映画秘宝Twitterは1月25日に「ご本人様には直接の謝罪を申し上げ、再発防止にかんする具体策を後日発表することを前提に、今回の謝罪を受け入れていただきました」と書きました。相手に謝罪を受け入れさせるという点で恫喝・強要体質は変わっていません。再発防止具体策の発表は行ってしかるべきものであって、それを謝罪受け入れの条件にすることは卑怯です。女性としては個人情報を握られているので、受け入れざるを得ないというところに付け込んでいます。
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