弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所は2020年6月24日、東京地裁から破産開始決定を受けました。東京ミネルヴァ法律事務所は過払い金請求訴訟やB型肝炎給付金請求訴訟などの広告を積極的に出していました。その破産は広告弁護士というモデルの凋落を印象付けます。
東京ミネルヴァ法律事務所は6月10日に総社員の同意により解散しましたが、第一東京弁護士会から会費未納のため破産を申し立てられました。負債総額は2019年3月期決算時点で52億円とされます(「弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所」東京商工リサーチ2020年6月24日)。
負債が52億円に拡大することが信じ難いものがあります。経営の素人だったのでしょうか。弁護士法人も民間企業と同じく破産と無縁ではないことを示しました。似たようなビジネスモデルの弁護士法人の破産も起こり得ます。
派手な宣伝広告を行い、過払い金返還請求や債務整理など手っ取り早く金になりそうな案件ばかりを手掛ける広告弁護士は、従来の弁護士像から外れた異質な存在です。テン年代初めには「弁護士業界では、車内広告やCMを出すにはまだまだ抵抗がある」と言われていました(西川修一「年収70万円以下? 客の金に手を出す貧乏弁護士の懐事情」プレジデント2012年2月1日)。
この種の弁護士が依頼人の利益にもならないことは全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会が債務整理をビジネスにする弁護士らによる債務者を食い物にした二次被害を指摘し、弁護士単独の広告禁止を求めていることが示しています。「債務整理広告を大量に行う事務所の広告は、多重債務者を二次被害に陥れる、いわば虚偽・誇大の欠陥広告であるといわざるを得ない」とします(「多重債務広告と任意整理のあり方に関する決議」2009年11月29日)。
弁護士の広告には消費者が弁護士の情報を得ることができ、弁護士を選択できるというメリットがあると反論されます。しかし、積極的に広告しているのは広告弁護士ばかりです。弁護士広告は、まともな弁護士から消費者を遠ざける結果になります。弁護士広告が二次被害を生むと指摘される所以です。賢い消費者としては広告で目に付いたり、検索してヒットしたりしただけで弁護士を選んではいけないということになります。
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