東急不動産ホールディングスと東急不動産の新本社「渋谷ソラスタ」では従業員が頭部に脳波測定キットを装着する実証実験を行っていると報道されました(「東急不動産の新本社、従業員は脳波センサー装着」日経 xTECH 2019年9月30日)。社員を家畜化するブラック企業のディストピアと感じました。文字通りの社畜になってしまいます。
脳波データで「ストレス度」「集中度」「興味度」「快適度」「わくわく度」を可視化するとありますが、脳波測定キットを着用して仕事をすること自体がストレスになります。個人の脳の状態は極めて私的な領域であり、センシティブな個人情報です。内心の自由が侵害されかねません。脳波測定キットはオウム真理教のヘッドギアを連想します。「仕事するぞ」「仕事するぞ」「仕事するぞ」と洗脳されそうな気持ち悪さがあります。
東急不動産はオフィスに植物を配置する効果を測定する目的であると説明します。オウム真理教と重ね合わせた感想は誤解と反論するでしょうが、そのような受け止められ方を予想していなかったとしたら、そのこと自体が想像力の貧困です。むしろ、東急不動産が本当に社員の監視強化ではなく、快適な労働環境を提供する目的で行っていたとしたら、そのナイーブさに恐ろしさがあります。
働き方改革は働く人の自由を増やすものであって、管理や監視を強化するものではありません。働く人の自由を増やすということは、極論すればアウトプットさえ出ていれば、横になって仕事しても、パズドラをしながら仕事していても、頭の中は休日の旅行計画で一杯でも問題ないという世界です。この点に脳波測定キットへの拒否感があります。
オフィスの植栽配置に効果があることを実証的に示したいならば、植栽があることでアウトプットの生産性が上がったことを示す必要があります。脳波データで「ストレス度」が下がり、「集中度」「興味度」「快適度」「わくわく度」が上がったとしても、それがアウトプットにつながるかは不明です。成果ではなく、やる気が感じられるかで評価するという昭和的な日本型企業の人事評価に近いものです。