東急ハンズ公式Twitterアカウントは2022年6月12日に「私のところにはゴリラゲイ雨は来てません!ゴリラゲイ雨が来たらちょっと困るけど、ゴリラゲイ雨を見てみたい気もする」とツイートし、同性愛者を侮辱すると批判されて炎上しました。
東急ハンズは謝罪を余儀なくされました。「不快に受け止められた方に謹んでお詫び申し上げます。差別的な意図は念頭になく投稿したものですが、そのような文脈で使用されることもある単語であるとの認識が不足しておりました。誠に申し訳ございません」。しかし、この謝罪文は誤解した側が悪いという謝罪しない謝罪文の典型文であり、炎上に油を注ぐ結果になりました。
さらに東急ハンズの謝罪文は「ゴリラゲイ雨」という単語を使ったことが問題という話に聞こえるため、そのように解釈した人々からは逆に言葉狩りと反発する声が出ました。東急ハンズを批判する人が逆に攻撃される事態に転化しており、罪作りな謝罪文です。
日本では権力者が「国家安康」「君臣豊楽」を本来の意味とは異なる呪詛の意味があると因縁をつけて敵対者を滅ぼした方広寺鐘銘事件があります。それ故に表現の自由を侵害する言葉狩りを強く警戒します。
林田力「方広寺鐘銘事件は卑怯な言いがかり」
「ゴリラゲイ雨」はゲリラ豪雨という言葉をもじったもので、雰囲気をわざと「ふいんき」と読むような言葉遊びの要素があります。しかし、東急ハンズの「ゴリラゲイ雨が来たらちょっと困るけど、ゴリラゲイ雨を見てみたい」は明らかにゲイを意識しています。ゴリラゲイ雨がゲリラ豪雨の単なる言い換えならば「ゴリラゲイ雨を見てみたい」は意味を持ちません。
ここを踏まえると「ゴリラゲイ雨が来たらちょっと困るけど」はゲリラ豪雨が困るという通常の意味を超えて、ゲイが来たら困るという差別要素が出てきます。ゲリラ豪雨を言い換えてゴリラゲイ雨とツイートする人には怒らず、東急ハンズに怒ることは筋が通ります。逆に東急ハンズの使い方が悪かったためにゴリラゲイ雨の言葉自体が同性愛者差別の意味になりました。
ゲリラゴウ雨をわざと言い換えたいならばゴリラゲウ雨が正しいです。これは言いにくいもので、言い間違いをすることが考えにくい表現であり、ゴリラゲイ雨という表現が流布したことは変な話でありません。それ故に言いがかりの言葉狩りには反対しますが、東急ハンズのツイートは批判できます。
東急ハンズは過去にも炎上しました。東急ハンズのネットストア「ハンズネット」の公式Twitterアカウントは2016年11月9日に予防接種拒絶をツイートし、炎上しました。「最近は予防接種を受ける方も増えたそうですね。わたくしは長年拒絶し続けているタイプです。今年も勇気とメンタルで立ち向かいたいと思います」。小売店という不特定多数に接する業種の企業の公式アカウントが予防接種を拒絶することを批判する声が出ました(「東急ハンズ「予防接種拒絶」ツイートが炎上 「社内の別の公式アカ」が大慌てで「火消し」」J-CASTニュース2016年11月10日)。
東急ハンズ本体の公式Twitterアカウントはハンズネットの呟きの同日中にお詫びを余儀なくされました。「お客様にご迷惑をお掛けしないためにも、接客業に従事する者として感染予防は当然すべきであり、この発言内容は容認されるものではありません。不快な思いをされた方にはお詫び申し上げます」
しかし、東急ハンズTwitterの火消し発言に対して、逆に全社員に予防接種を強要するのかとの批判が出ました。予防接種の有効性・有益性について様々な見解があります。予防接種は無意味とする見解があります。また、予防接種には副作用や薬害の危険があります。謝罪文が炎上を深刻化させる点はゲリラ豪雨ツイートと同じです。
ハンズネットのツイートの問題は、予防接種を受けるか受けないかよりも、病気に対して勇気とメンタルで立ち向かうという精神論です。勇気とメンタルで病気に立ち向かうことは問題です。昭和の日本の精神論根性論です。気合いがあれば病気は治ると考えているのでしょうか。勇気とメンタルで伝染病に立ち向かう人間は、罹患した場合も勇気とメンタルで出社する危険があります。
「勇気とメンタル」は東急ハンズで過労死が出たことを踏まえると一層恐ろしいものになる。東急ハンズ心斎橋店員はサービス残業とパワハラで過労死しました。遺族の提訴に対して神戸地裁は過労死を認定し、東急ハンズに7800万円の損害賠償を命じました。この事件で東急ハンズは「ブラック企業大賞2013」にノミネートされました。
「勇気とメンタル」を重視するならば、過労死した従業員は勇気とメンタルが足りないとなりかねません。亡くなった方に泥を塗って体力自慢となります。勇気とメンタルの心無い呟きは過労死者に対するセカンドハラスメントになります。
佐々木奎一「東急ハンズ新卒社員、パワハラマネージャーから罵倒&サビ残の日々で30歳過労死 遺族が一審全面勝訴」MyNewsJapan 2013年4月24日