浜辺美波が出演するテレビドラマ『崖っぷちホテル』は第7話(2018年5月27日)で佐那(戸田恵梨香)の兄で元総支配人の誠一(佐藤隆太)が登場します。ホテルの筆頭株主になったと主張する誠一は自ら総支配人となり、スタッフの配置換えを強行します。さらにホテルを売却して金を得ようとします。
あまり感情を露わにしない佐那の激しく怒る顔が観られます。また、配置換えされたホテル従業員の普段と違う服装を楽しむことができます。浜辺美波はバイト探しのCMでも様々な制服を着ています。
一方で経営に行き詰ったホテルを建て直すという物語としてはどうでしょうか。誠一はホテルの金を持って逐電した人物です。そのような人物が悪びれずに総支配人を主張することは腹立たしいものです。他人を犠牲にし、他人に負担を押し付けて利益を得る存在であるのに、憎まれないキャラクターとして描かれている点は腹立たしさを増します。但し、実際の詐欺師も、そのような人物がいるという点では現実味があります。
難しいところは、ホテルの身売りはオーソドックスな経営手法としては妥当な選択になることです。従業員が頑張ってホテルを建て直す方が非現実的であり、宇海(岩田剛典)のような変人でなければ手を出さないものです。本来身売りは誠一のようなファンキーな人物ではなく、真っ当なビジネスパーソンが主張するものです。
身売りを主張する誠一に佐那は激しく怒りますが、その主張は「従業員は頑張っている」です。それは従業員の内輪の論理であり、ホテルについて何も知らない誠一のような無責任な人間には反論になっても、真っ当な経営陣は納得しないだろう。現実的な経営の論理では身売りが正論になってしまい、対抗できないと考えて、身売りを進めるキャラクターをファンキーにしたのでしょうか。
ホテルの従業員の配置換えを宇海はゼネラリスト育成と好意的に評価します。しかし、ホテルの従業員は専門職です。職種別採用している筈であり、あり得ないものです。リストラをしないことも含め、昭和の日本的経営に郷愁を抱いているのでしょうか。
浜辺美波はパティシエとして採用されているのに、料理全般を担当しています。これはパティシエのキャリアにとって良いことなのでしょうか。料理人としては、パティシエ経験は良いようで、パティシエ出身の料理人がいます。「料理人が若いうちは菓子から始めて材料を計ることを学んだほうがいい」と指摘しています(神山典士『情熱のシェフ 南仏・松嶋啓介の挑戦』講談社、2008年、130頁)。
『崖っぷちホテル』浜辺美波がパティシエ役
https://alis.to/hayariki/articles/K8DQwQmPYnqW
『崖っぷちホテル』視聴率が崖っぷち
https://alis.to/hayariki/articles/3ld57lRW40pd