浜辺美波が出演するドラマ『崖っぷちホテル』はキャッチーなタイトルですが、制作側にとってリスクのあるタイトルです。視聴率が低迷すれば、視聴率が崖っぷちと言われかねません。俳優も人気が崖っぷちと言われかねません。現実に2018年4月22日放送の第2話で視聴率が6.1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)に急落し、視聴率が崖っぷちと言われてしまいました。
低迷の要因として、従業員がダメすぎる割に立て直しが従業員に優しく、現実性を感じにくい点があります。第2話は降格が描かれましたが、従業員のやる気のなさとリストラの現実を踏まえれば甘いでしょう。不祥事警察官が依願退職で退職金を受け取るような不合理感を覚えます。
現実の経営立て直しではコストカットが基本中の基本です。ところが、ドラマのホテルは人件費には手をつけず、備品のトイレットペーパーも従業員が持ち帰りたくなるほど良いものを調達しています。客室のバーゲンにも消極的です。主人公は立て直しに際して、銀行から追加融資を得ようとしています。まだ崖っぷちとは言えないのではないでしょうか。コストに手をつけずに立て直しを目指すことは、経営の現実からは甘いものです。
ホテルを立て直すならば、派遣会社と契約してスキルある要員を派遣してもらうことがオーソドックスな手段になります。身売りもホテルを再生させる現実的な選択肢です。
従業員の立場に立つと、日曜日の夜にリアルなリストラ話は気が滅入るとなります。しかし、主人公(岩田剛典)の立場に立つと、既存従業員はそのままでホテルを立て直す方が難題です。しかも主人公は自分で何でもするスーパーマンではありません。人にやらせるタイプです。従業員に気付かせ、やる気を出させることは大変です。
主人公は客の前で笑顔になれない従業員に「笑顔の練習してくださいね」と言います。すべきことを指示するならば「お客様の前では笑顔でいてくださいね」となります。しかし、笑顔でいることができない従業員に、やれやれ言ってできるものではありません。だから「笑顔の練習してくださいね」が適切な指示になります。それを爽やかにこなす主人公は立派です。しかし、そこまで考えて言葉を選ぶのがマネジメントの役割かと思うとリストラ話以上に日曜の夜に観ることは重い気持ちになります。
第2話では従業員が夜通し調査するシーンがあります。これはブラック企業的です。トラブルが起きると、社員総出で残業や休日出勤して解決にあたる展開は『下町ロケット』でも描かれました。目の前の問題を解決するために皆で頑張ることをカッコ良いと考える発想がブラック企業を生み出しています。この調査はIT化すれば夜通ししなくても省力化できるものでした。個々人の超人的な頑張りで何とかする展開は特殊日本的精神論に陥ってしまいます。