教育・子育て

「労働とは、自己自身の喪失である」

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  • おはぐろ氏
  • 2020/03/03 12:23

突然ですが僕は働きたくないので、とりあえずマルクスの『経済学・哲学草稿』を読んで現代の資本主義経済の仕組みの一端について理解しようと思った。

マルクスなのでつい斜に構えて見てしまう部分はあるが、できるだけニュートラルな意識を持って臨みたい。

 

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本書はマルクスがまだ20代のキラキラした青年だった頃に書かれた草稿である。

資本主義に対する分析と批判が書かれていて、のちの著作『資本論』に結びつく内容が書かれているが、”草稿”なだけあって、文章的にまとまりが無かったり一部消失してしまっている箇所がある。

個人的には結構難しい内容だったが、自分の中でもっと理解を深めたいのでできる限り簡潔にまとめてみたい。

 

1. 資本家 vs 労働者

「賃金は資本家と労働者の闘争によって決まってくる。そして資本家の勝利は動かない」と語っている。

つまり当然、資本主義経済では労働者が不利なのである。

 

労働者と資本家がともに苦境にあるとき、労働者は生活に苦しむが、資本家は金儲けできるかどうかに苦しんでいる。

 

2. 疎外された労働

労働者が商品を作れば作るほど、労働者本人の価値は低くなる。特にその商品の価値が高くなるのに反比例して、それを生産する労働者の価値は下がっていくのだ。

なぜかというと、商品自体が力を持つという事は、労働者から独立した存在になり、労働者を必要としなくなるからである。

 

労働者が苦労すればするほど、自分の外側に作り出す外的な対象世界の力が大きくなり、逆に労働者自身の内面世界は貧しくなる。

 

3. 労働による自己自身の喪失

人間(労働者)は、動物的な働き(食べる、飲む、住む、など)をしている時に自由を感じて喜び、人間的な働き(生産活動など)をしている時に自由を失い動物的になる。

 

4. 生活のための労働か、労働のための生活か

人間にとって、労働(生産的活動)肉体的生存の維持という欲求を満たすための手段としてしかあらわれていない。しかし、生産的活動人間をより人間らしい生活にするための活動であるはずだ。

労働によって生み出されたもののおかげで人間の生活はより人間らしくなるが、労働をしている時は全くもって人間らしくいられないという矛盾である。

 

5. 資本と労働者はよそよそしい

資本にとって、労働者などどうでもいい。価値がないと分かれば、迷わず労働者としての存在を抹消する。

資本主義において、労働者という人間は労働者として生存しているので、「労働者としての自分」を失うということは、「自分という人間を失う」に等しい。つまり、餓死するしかない。

 

6. 私有財産の廃棄

たとえ個人的な活動をしていても、人間として活動している限り、それは社会的な生活(類的生活)を営んでいるということである。

特別の個人がどれだけ特別な人間だとしても、あくまで特定の全体的存在にすぎないので、その存在と思考は全体と一体化している。

 

したがって人間が見る、聞く、嗅ぐ、味わうなどの世界に対する人間的な関係は対象をわがものとする行為である。

 

ところが私有財産の影響で、何か特定のものを自分のものだと感じるためにはそれを個人的に所有しなければならない。その結果、自分の内面的な富を自分の外側に生み出すために「所有」という絶対的貧困に追い込まれてしまう。

 

私有財産の廃棄によって、上記の「所有」という貧困から解放され、人間としての感覚・特性がより人間らしくなる。

 

7. お金

以下、ゲーテの詩句を引用している。

「わたしは低劣な、不正直な、良心のない人間だが、お金が尊敬されるのに見合って、お金の所有者であるわたしも尊敬される」

「わたしには才気がないが、お金があれば才気ゆたかな人を買うこともできるわけで、才気ゆたかな人間を支配できる者が、相手よりもっと才気ゆたかでないはずがないのだ」

「わたしのお金は、わたしの無能力のすべてを、その反対物に変えるのではないか」

 

「旅をするお金をもたないときは、旅の欲求ももたない」

「学問に向く天賦の才をもっていても、そのためのお金がなければ、天賦の才を持っているとはいえない」

 

このように、お金は現実の人間的・自然的な実力をせつない妄想に変えてしまう一方、現実的に実力のないものを現実的に実力のあるものへと変えてしまう

つまりお金とは、愛を憎しみに、憎しみを愛に、徳を悪徳に、悪徳を徳に、奴隷を主人に、主人を奴隷に、愚鈍を知性に、知性を愚鈍に転化するものである。

 

8. マルクスの理想

愛は愛としか交換できない。

信頼は信頼としか交換できない。

芸術を楽しみたいと思えば、芸術性のゆたかな人間にならねばならない。

他人に影響を与えたいと思えば、実際に生き生きと元気よく他人に働きかける人にならねばならない。

 

「あなたが愛しても相手が愛さないならば、それはあなたの愛が無力であり、不幸だといわねばならない。」

 

 

あとがき

ここまで書いておいてなんだが、本書の中でマルクスは他の知識人たちからたくさん引用しているが、どこからどこまでが批判で、どこからどこまでが自分の主張なのかがぼんやりしていてよく分からない部分が多かった。国民経済学に関しては特にたくさん書いているが、たぶん批判したいんだろうけど、「国民経済学的にはこういう考え方である」と書いておいてそのまま放置、みたいな部分も多い気がする。一瞬、これはマルクス本人の意見なのかと勘違いしてしまいそうになる(というか勘違いしている部分もあると思う)。僕の読解力が低いからかもしれない。もしくは草稿だからか。

 

文脈によって(人によっても)解釈の仕方は違うと思うので、読んだことがない方はぜひ読んでみてほしい。

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