その夜、新渡路夫と筑木志摩のふたりは
田川寿美を待っていた。
待ち合わせは時間を決めていたわけではないが、程よく時間は過ぎ、ふたりは2本目の赤ワインを注文した。
「えっ?どうなの?越えてた?」
「越えたってなにが?」
「このワイン。注文したの。昨日のうち?それとも今日?」
「なんで?」
「今日から上がるのよ。税金」
「あー。」
「そもそも、私の体なんてワインでできてるってくらいなんだから、生活に欠かせない必需品だっつーの」
「軽減税率のカテゴリーにワインを入れろって言ってた、あれね。」
こんな会話をしながら3本目を注文したのは志摩だった。