消化吸収にすぐれる「山里の芋」
〔里芋】 Taro
○旬=秋 ◎効能=老人・病人の栄養補給、消化促進、健脳、気管支炎の予防・改善
熱帯アジア原産のサトイモ科の多年生草本。日本へは稲作が渡来する以前の縄文時代に、すでに中国から伝来していて、「万葉集』に出てくる「宇毛」がサトイモとされている。山里で一般的に栽培されているので「山芋」に対して「里芋」と命名されたようだ。
江戸時代の『犬私林彰」には「湿地を好む。山中の農多く植えて糧として飢を助けて甚民用に利あり」とあり、サトイモが重要な救荒食品(食物が不足したときに食べる食物)であったことを示している。
旧暦8月5日(中秋の名月)は、別名「芋名月」で、ススキ、ハギ、オミナエシ、サトイモが供えられるが、元来はサトイモの初物を祝う収穫祭であったといわれている。
中国の明時代に書かれた薬学書である『本草綱目』には「生で食べると有害で、味のえぐい物は食べるべからず。
魚と一緒に食べると甚だ気を下して中を整え、虚を補う」とある。
サトイモにはでんぷんが多く含まれ、そのエネルギー化を助けるビタミンB1、脂肪の燃焼を助けるビタミンB2の他、タンパク質も含まれ、消化・吸収もよく、老人、子供、病人の栄養補助に大変すぐれている。
また特有成分として、粘液質のムチンやガラクタンがある。ムチンは、タンパク質の消化促進、滋養強壮、潰瘍予防、解毒などの優れた作用がある。ガラクタンはガラクトースを成分とする多糖類で、脳細胞を活発にする働きがある
『本草綱目』に、サトイモは「胃腸を寛げ、皮膚を充実させる……」とあるが、サトイモを常食すると胃腸の働きがよくなり、食欲を増し、便秘や下痢を改善し、肌も美しくなってくる。
イモは、田楽、塩ゆで、イモ汁に、葉柄(イモの茎)は汁の具、漬物などに利用で
きる。この葉柄は「ずいき」ともいわれ、皮をむいて乾燥させて保存食品として用いられてきた。
ちなみに、イモや葉柄の皮をむくと手がかゆくなるのは、シュウ酸カルシウムのためで、サトイモを食べた時の苦い味もこの物質のせいだ。
サトイモによる皮膚のかゆみは、酢や塩、重曹を塗るとよくなる。
【民間療法】
打ち身・捻挫・関節炎・おでき・乳腺炎……サトイモをすりおろしたものに、その量の1/3量の小麦粉と少量のショウガ汁を加えて、患部に塗り、湿布する。
気管支炎・肺炎……胸の部分に前記のものを温湿布をする。
痔・慢性気管支炎……味噌汁の具として、毎食食べる。
(毒)虫刺され……ずいき(葉柄)をつぶして汁を塗る。
便秘……田楽、著っころがしなどにして、常食する