ENS(イーサリアム・ネーム・サービス)とは、何なのか?解説します。 ENSとは、「paji.eth」のような文字列のことで、Twitter上で目にしたことのある人もいるかもしれません。
ENSは簡単に言うと、DNS(ドメイン・ネーム・サービス)のイーサリアムネット版です。 この記事を読めば、ENSの基礎知識と、その面白さを理解することができます。
ENSというのは、「文字列」を販売しているサービスです。
先ごろ、ビール業界最大手であるバドワイザー社が「beer.eth」というENSを30ETHで購入して話題になりました。
>関連記事:バドワイザーが「Beer.eth」を約1000万円で、NFT画像を300万円弱で購入
また、驚くべきことに、2017年5月には、「darkmarket.eth」という”文字列”が当時のレートで約6億円もの高額な取引が行われていたことがわかっています。
取引されている文字列が怪しすぎる……。
>関連記事:「darkmarket.eth」は2017年5月に当時のレートで6億円相当のETHで取引されました
更に周辺情報を探索すると・・・、
・ハッキングするのが難しい ・特定の組織や国などからシステムを消されづらい
など、何やら悪事を働くときに役立ちそうなサービスの評判が聞こえてくる。
むむ、怪しくない?
本当に大丈夫なのだろうか・・・?
蓋を開けてみれば、ENSの運営元はいたってクリーンな団体でした。
2017年初頭にイーサリアム財団からスタート。
2018年に別組織としてスピンオフし、シンガポールの非営利団体True Names LTDによって運営されているオープンソースプロジェクトだということがわかった。
怪しいプロジェクトではないとみて良さそう。
>関連記事:ENS公式サイト
それにしても、なぜこんな”文字列”が高額なのでしょうか?
ENSの使い道とは、何なのでしょう?
その答えはシンプルで、「ウォレットアドレス」の代わりに使えるのです。
イーサリアムのウォレットアドレスは、「0x」から始まる42文字の英数字の羅列。
0x961h9c56348UMxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxd2C9902
こんな感じの文字列なので、天才でもなければ暗記が出来ない。
暗記できないということは、送金ミスをするリスクがあります。
ETHを送金するとき、42桁のウォレットアドレスのままだと、打ち間違えるリスクが高くなります。そして、その打ち間違いに気がつかないリスクも高い。
コピペすれば大丈夫でしょうか?仮に冒頭や末尾が似たような文字列だったりすると、別アドレスと見間違えて誤送金する危険が高いです。
仮想通貨の送金ミスはキャンセル不能なので、これは大きなリスクとなります。
そこで、ENSの出番というわけですね。
ENSにすると、短くて視認しやすく、記憶しやすい”文字列”にできるのです。
ウォレットアドレスが「paji.eth」になっていたなら、間違いにも気付きやすいし、記憶もできます。
メタマスクの場合、そのENSが存在するかどうかが通知され、誰もその.ethドメインを所有していない場合は、エラーが出るようになっているので安心です。
残念ながら、ENSの使用は有料です。ETHを支払う必要があるのですが、その値段は驚くほど安い。1年間でたったの5ドルほど。
正確な値段を調べてみました。
ENS価格表 3文字 0.142ETH(640ドル)/1年 4文字 0.036ETH(160ドル)/1年 5文字以上 0.001ETH /1年
先述したニュースに出てくるような一部のメジャーな文字列であればプレミア的な価格になってしまうこともあるようですが・・・
一般的な文字であれば、十分手の届く価格帯です。
3文字のENSはなかなかのお値段ですが、5文字以上のものであれば拍子抜けするほど安価。
なお、購入時や更新時にガス代がかかるので、1年契約だとガス代分割高になります。1年ぶん購入しても、30年ぶん一気に購入しても、ガス代は同じ1回分です。
ENSに使える文字は、英語のほか日本語(ひらがな・漢字など)や、なんと絵文字にも対応している。(ただし、グローバルでの利便性を考えると英語がよさそう)
ENSを購入すると、すぐに自分のウォレットアドレスと結びつきます。
そして、連携している様々なサービス上で、その”文字列”が表示されるようになります。
すでに、メタマスクやUniswap、コインベース、OpenSeaなど、いわゆるブロックチェーン系のサービスで利用可能です。
対応サービスどんどん増えていっているので、そのうちTwitterなども対応するかも?
Twitterは先頃、暗号資産ウォレットと接続してNFTをプロフィール画像に設定する機能を開発中だと明かしており、Crypto分野を積極的に取り込んでいく姿勢が顕著です。
ENSの利用料は、開発チームの維持費に充てられています。
しかし、本来維持費のかからないイーサリアムのインフラで登録コストを取る本当の理由は、「サイバースクワッティング対策」のためだといいます。
>関連記事:「Ethereumを活用したネームシステムで可能になること」ENS ブラントリー・ミレガン氏 インタビュー
サイバースクワッティングとは、例えば転売目的で複数のENSを契約しまくる迷惑行為のことで、ENSの運営ではこの行為を悪だと考えています。本来使いたい人が使えなくなってしまいますからね。その迷惑行為を抑止するために、登録料を徴収する形式に変更した経緯があるようです。
取得したENSは、サブドメインを無限に作成できます。
x.paji.eth、zzz.paji.eth などつけ放題。 それぞれのドメインに、別のウォレットアドレスを設定することも可能です。
ビットコインやIPFSなど分散型ファイルサーバーを指定したり、メールアドレスや任意の文字列を設定することもできるため、今後様々な応用が考えられます。
ますます利便性が上がっていくと思われます。
twitterにて自身のETHを指定している方は、このようなフォロワー数ランキングにランクインする事も可能です。
>スプレッドシート:100 most followed Twitter handles with ".eth" in name
ENSの作成は、以下のサイトでウォレットを接続したら、簡単にできます。 ぜひ作ってみてください。
※この記事は、パジ(@paji_a)の発信をもとにかねりん(@kanerinx)が編集して記事化しています。
※この記事の元投稿は、HiDΞで連載中のマガジンです。(JPYCの投げ銭も可能)