(台湾のタクシーは黄色なので「小黄」と呼ばれることがあります)
「區塊鏈元年(ブロックチェーン元年)」を迎えている台湾では、さまざまなICT関連のイベントでブロックチェーンが取りあげられています。
たとえば、2018年6月に台北で開催された国際的なICT見本市である「COMPUTEX TAIPEI 2018」では、重点テーマのひとつとしてブロックチェーンが挙げられていました。
こうした状況のなか、2018年7月27日・28日に台北で開催された「HITCON」というイベントでもブロックチェーンが重要なテーマとして挙げられたようですので、少し書き留めておきたいと思います。
・台湾中のハッカーが集結?
・イベント内で「トークンエコノミー」を実現!?
・ブロックチェーンの発展は若いハッカーにかかっている!?
台湾のニュースサイト「台灣醒報」に掲載された記事によると、2018年7月27日から2日間、台湾最大のハッカー(駭客)とネットセキュリティ(資安)についてのカンファレンスである「HITCON」が台北で開催されたということです。
下記、HITCONの公式ウェブサイトによると、「HITCON(Hacks in Taiwan Conference)」は今回で第14回を数える、毎年開催の台湾のハッカーたちによるイベントで、ハッキング技術やネットセキュリティに関する意見交換や、ハッキングに関する技術披露、公開講座など、さまざまなイベントがおこなわれる「祭典(嘉年華會)」であるようです。
イベントの主催は「台灣駭客協會(Association of Hackers in Taiwan)」や「HITCON GIRLS」となっていますが、公式ウェブサイトのTeamページを見ると、とても若いメンバーで運営されているようです。
HITCONの公式Facebookページに掲載されている集合写真を見てもみなさん若い感じですので、大学生・大学院生を中心に代々、受け継がれてきている組織なのかなという印象を持ちました。
そうした若い人たちが中心になっているイベントですが、上に挙げた「台灣醒報」の記事によると、カンファレンスの冒頭には行政院資通安全處(資安處)處長の簡宏偉さんがスピーチをおこない、政府のネットセキュリティ対策について語ったり、
台湾におけるハッキングとネットセキュリティに関するさまざまなプログラムが展開されるなど、産官学の人々が揃う、台湾最大のハッカーイベントとして認知されているようです。
このカンファレンスではいろんなイベントが展開されたようでどれも興味深いのですが、中心テーマとなったブロックチェーンとのかかわりで注目されるのは「HITCON token」の発行とその利用の様子です。
台湾のビジネスニュースサイト「數位時代」の記事によると、今回のカンファレンスではERC-20トークンとして「HITCON token」が発行されたとのことです。
このトークンは会場内に設置されたUFOキャッチャーや、カンファレンスに出店している企業のイベント、および不定期に開催された「大放出イベント(大撒幣活動)」などを通じて獲得できたようです。
このトークンは法定通貨への交換はできないようですが、その代わりにカンファレンス内でさまざまな限定アイテムと交換できたり、HITCONがオンラインで提供している「Hacker Cat(電子貓)」をグレードアップさせたりすることができたとのことです。
会場限定のハードウェアウォレット(硬體錢包)も提供されていたようですから、カンファレンス内で「トークエコノミー」を疑似体験できるようなイベントがおこなわれていたということで、とても興味深く感じました。
そのほか、より現実的なブロックチェーンとのかかわりとしては…
台湾の著名な仮想通貨取引所であるBitoEXやOTCBTCがブースを出して技術者の採用活動をしていたり、
アメリカのネットセキュリティスタートアップのPolyswarmがブロックチェーンを通じたネットセキュリティの分析結果を公表し、各種企業との提携を進めるなど、ビジネスの場としても機能していたようです。
台湾のデジタル系ニュースサイト「iThome」の以下の記事でも言及されていますが、政府機関では今年中に「資安學院」と呼ばれるネットセキュリティの専門家を養成する教育プログラムを開始する予定だということで、若いハッカーの養成と活用を構想しているという状況があります。
こうした状況のなかで、ますますこのイベントやハッカーたちへの注目が集まっていると同時に、こうした分野へのブロックチェーンの応用とその対応、発展が期待されていることがうかがえますね。
カンファレンスでは以上のようなイベントのほかにも…
IoTに潜むハッキング問題をベースとしてハッカーとしての実力が試されるゲームイベント「HITCON Hackdoor」や、
Googleの「Project Zero」から着想を得た「HITCON ZeroDay Platform」の発表、
さまざまなワークショップの開催など、ブロックチェーンに限らず…というより、ブロックチェーンとも深いかかわりのありそうな様々なイベントがおこなわれたようです。
また、以下のHITCONの運営ブログによれば、台湾のハッカーや産官学関係者だけではなく、たとえば、Muks Hiraniさんという方の中東地域のネットセキュリティに関するスピーチがおこなわれ、有名なハッカー集団である「APT33,34,35」についての報告がなされるなど、台湾内外のハッカーとの交流・情報交換もおこなわれたとのことです。
今回のカンファレンスのスポンサーを見ると、上に挙げた行政組織や台北市の資訊局などの行政機関、中央研究院などの研究機関、BitoEXやOTCBTCといった仮想通貨取引所以外にも、台湾の大手通信会社である中華電信や、あるいは楽天(!)も名を連ねていて、産官学の各分野から大きな期待を受けていることがうかがえます。
ブロックチェーンの開発にかかわることのできる人材は、その急速な発展にともなって世界的に必要とされていますし、台湾でも競争力を高めていくために人材確保とその養成は、産官学を挙げた喫緊の課題になっています。
そうした世界的な潮流のなかで、今回のカンファレンスの注目度も高まると同時に、ブロックチェーンが中心テーマに据えられ、「トークンエコノミー」の試みも展開されたのかなと思いました。
台湾ではブロックチェーンに関するハッカソンなどのイベントもおこなわれ、ブロックチェーンの技術開発の裾野を広げようという雰囲気を感じます。
こうしたなかから、台湾のブロックチェーンをリードしていく人々が出てくるのか…これからも人材養成をめぐるこうした動きも視野に入れながら、情報をコツコツと追いかけていきたいと思います!
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