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台湾で仮想通貨交換業をマネーロンダリング防止法の対象に組み込む法案が提出されたようですよ

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  • kaz
  • 2018/09/15 18:40
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(台北から一駅、MRT「中山」駅すぐの「新光三越」デパート。日本の方の待ち合わせスポットでもあります)

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仮想通貨に関する法制度整備の動きは、世界的な共通課題として展開されていますね。

台湾でもここ1年ほど、少しずつ議論が盛り上がってきているように感じますが、規制と保護のバランスをどのように取っていくかということで、慎重に方向性が検討されているようです。

僕のこれまでの記事で取り上げてきたところを少し挙げれば、ICOの法的位置づけ、仮想通貨を通じたマネーロンダリングをどのように防ぐかということ、仮想通貨に関する管理・監督をどこがおこなうかといったことをめぐって、議論が進められてきています。



今回は、マネーロンダリングを防止するための法律に仮想通貨交換業を位置づける法案が提出されたという情報を目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。


もくじ

・許毓仁さんがマネーロンダリング防止法の修正法案を提出

・仮想通貨の管理・監督については議論継続

・マネーロンダリング対策に関する第三者評価を控えて…

・法整備は着々と進んでいく…か?


許毓仁さんがマネーロンダリング防止法の修正法案を提出

台湾の経済紙「經濟日報」のウェブサイトに2018年9月15日に掲載された記事によると、立法委員の許毓仁さんが台湾の「洗錢防制法(マネーロンダリング防止法)」の第5条の修正案を提出したことを明らかにしたそうです。

許毓仁さんは台湾の仮想通貨・ブロックチェーンの重要なキーパーソンで、僕もたびたび記事のなかで彼の言動を取り上げてきました。

今回の修正案の対象となっている「洗錢防制法」第5条は、上に挙げた「仮想通貨はどこが管理する?」の記事でも触れましたが、同法が適用される機関の定義について定めた法律です。

これまでの議論では、この条文中の「其他業務特性或交易型態易為洗錢犯罪利用之事業或從業人員(そのほか業務の性質あるいは取引形態がマネーロンダリング犯罪に利用されやすい事業あるいは従業員)」という規定に仮想通貨交換業を含めるとみなす方向で進められてきたと思います。

それに対して、今回、許毓仁さんが提出した修正案は以下のようなものであると報じられています。

參酌歐盟第五號洗錢防制指令(Fifth EU Anti-Money Laundering Directive),將虛擬通貨納入洗錢防制的一環
(EUの第5次マネーロンダリング指令(AMLD5)を参照し、仮想通貨をマネーロンダリング防止の一環とする)

Fifth EU Anti-Money Laundering Directive」の原文へのリンクは以下のとおりですが、「Sustainable Japan」が日本語の記事にしているところを読むと、「仮想通貨事業者、税サービス事業者、美術品取引事業者を反マネーロンダリング(AML)指令の対象に加える」という内容を持つものだということです。


こうした形で法律上に明確に位置づけることによって、仮想通貨交換業者に顧客審査取引記録の保存、および疑いのある取引の報告などを義務化し、市場の健全な発展を目指すということのようです。

国際的なひとつの方向性に準拠する形で、台湾の法整備もまた一歩進んだという意味で、重要な出来事かなと思います。


仮想通貨の管理・監督については議論継続

今回の法案提出について、許毓仁さんは段階的に立法を進めていくための第一歩だと説明しています。

その理由として、許毓仁さんは仮想通貨の管理・監督を担当する行政機関がまだ決まっていないということを挙げ、以下のように説明しています。

先將虛擬通貨交易所納入洗錢防制法的「非金融機構」,監管責任歸於法務部,及早填補洗錢防制的漏洞
(まず、仮想通貨取引所をマネーロンダリング防止法の「非金融機関」に組み込み、監督責任を法務部に所属させ、マネーロンダリングの抜け穴を埋める)

そのうえで、将来的に管理・監督をどこが担うかが決まってから、再度修正をおこなっていくと語っていますから、この問題については並行・継続して議論されていくようです。

ただ、これも上に挙げた「仮想通貨はどこが管理する?」の記事にも書きましたが、なかなか解決の難しい課題として捉えられているようです。

むしろ、確実なところから法整備を進めていくことによって、課題の解決を目指していくという動きなのかなと感じました。


マネーロンダリング対策に関する第三者評価を控えて…

「經濟日報」の記事には、最も早くて10月末の法案通過を目指していると書かれています。

法案提出時期から考えると、非常に早い時期での法案成立を目指しているわけですが、その背景として挙げられているのが「因應迫在眉睫的亞太防制洗錢組織(APG)第三輪評鑑(目前にアジア太平洋マネーロンダリング防止組織の第三次評価が迫っている)」という事情です。

亞太防制洗錢組織(Asia/Pacific Group on Money Laundering,APG)」は、公式ウェブサイトによれば以下のような組織として説明されています。

The Asia/Pacific Group on Money Laundering is an inter-governmental organisation, consisting of 41 member jurisdictions, focused on ensuring that its members effectively implement the international standards against money laundering, terrorist financing and proliferation financing related to weapons of mass destruction.
(アジア太平洋マネーロンダリング対策グループは41の加盟メンバーで構成された政府間組織であり、メンバーがマネーロンダリング、テロリストの資金調達、大量破壊兵器に関連する拡散資金調達に対する国際基準を効果的に実施することを保証することに重点を置いている)

マネーロンダリング防止に関する国際基準に基づいた各加盟メンバーにおける法整備の実施をサポートしているということですが、より積極的にその評価を実施・公表しているようですね。

APGによる第三次評価の実施は、台湾のラジオ局「中央廣播電台」の日本語記事によると、2018年11月に控えているようです。

今回の法案をこの第三次評価に間に合わせるという課題が審議プロセスのなかで共有されるかどうかが、法案成立のキーポイントになりそうですね。


法整備は着々と進んでいく…か?

仮想通貨の適切な法整備は、反社会勢力の資金調達阻止と市場の健全化という意味で世界的に取り組みが進んでいます。

台湾でもこれまで、許毓仁さんをはじめ、仮想通貨やブロックチェーンに対する関心や理解度の高い立法委員を中心に、行政機関などとの連携のもとで法整備をめぐる議論が進められてきました。

これまでの積み重ねを踏まえたうえで今回の法案が提出されているはずですから、問題認識や法案の必要性についてはある程度共有されているだろうと思います。

そういう意味で、10月末法案通過という希望が実現するかどうかはともかく、法案をめぐる議論は速やかに進んでいくのではないかと感じています。

ただ、政治的なプロセスはいつどのように変化するのか、見通しがつきにくいところもあります。

たとえば、僕の記事でもここのところ言及することが多くなっていますが、2018年11月に控えている統一地方選挙の情勢がこうした議論に影響を与えないとも限りません。

これからの議論がどのように展開していくかということに注目をしながら、これからもコツコツと情報を追いかけていきたいと思います!

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公開日:2018/09/15
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本職のフィールドである台湾・香港・中国の情報を中心に、自分が「面白いな!」と思ったことを記事にしています。Twitter: @kazALIS2

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