(台北市政府の建物前の道はタイルで綺麗に舗装されています。見づらくてすみません^^;)
「分散型台帳技術」であるブロックチェーンは、ビジネスに直接つながるサービスに応用されるだけではなく、公的な分野への応用も期待されていますね。
たとえば、行政サービスへのブロックチェーンの導入は、「スマートシティ」を実現するための重要な要素のひとつとして位置づけられています。
また、医療や教育、慈善事業など、「公共事業×ブロックチェーン」は社会的な取り組みとして世界各地で研究・開発が進められています。
そうした動きのひとつとして、今回は「時間銀行×ブロックチェーン」という取り組みに関する情報を目にしましたので、書き留めておきたいと思います。
・亞洲大學などが「時間銀行×ブロックチェーン」の開発を発表
・そもそも「時間銀行」って?
・公共事業にブロックチェーンを!
台湾の経済紙「經濟日報」のサイトに2018年8月19日に掲載された記事によれば、台湾の「亞洲大學(Asia University)」を中心とした産学協同の事業として、「時間銀行×ブロックチェーン」の取り組みを進めていくことが発表されたそうです。
今回の取り組みは、亞洲大學の「人工智慧暨區塊鏈國際產學聯盟(International AI & Blockchain Consortium、iABC)」と、「金融科技區塊鏈技術研技中心(Fintech Blockchain Center)」に加えて、「臺灣金融科技公司(FUSION$360)」による産学協同事業として進められるようです。
このうち、後者2つは「金融科技」という名称が入っているとおり、フィンテックに関する学術研究と技術開発、導入促進を担う組織および企業です。
金融科技區塊鏈技術研技中心:http://bigdata.asia.edu.tw/en/fintech/
臺灣金融科技公司の公式ウェブサイトは以下です。
また、ひとつめの組織については以下の記事で少し触れましたが、亞洲大學が台湾の「中國醫藥大學(China Medical University)」や14の付属病院と提携して設置した組織で、「健康醫療照護(HealthCare)」を軸に、「新健康(SmartHealthCare)」、「新零售(SmartRetail)」「新金融(FinTech)」の各分野へのAIおよびブロックチェーンの活用を目指しているようです。
「經濟日報」の記事には、今回の取り組みを「老人長照志工服務的應用(高齢者長期介護ボランティアサービスへの応用)」から始めていくというように説明されています。
亞洲大學を中心に結成されたアライアンスが進めているブロックチェーン活用の一環として、「時間銀行」への応用が考えられていることがうかがえますね。
ここでブロックチェーンの活用先として想定されている「時間銀行」は、アメリカ発祥の「価値交換」の仕組みのひとつのようです。
日本語で読める情報としては「nipponomia」というサイトに小松明さんが書かれている以下の記事に、アメリカでの「時間銀行(TimeBank)」の取り組みがまとめられています。
この記事中には、「時間銀行」について、「コミュニティでの活動や、近所関係の中での互助など、金銭的な評価がしにくい労働に対して、「時間」を用いて正当な評価を与えようという試み」であり、「シェアリングエコノミーの先駆的な例」と説明されています。
上に挙げた「經濟日報」の記事にも、「我們也都知道,時間就是金錢,當每個人的時間可以互相交換彼此的知識與技能,時間共享經濟將因應而生。(私たちはまた、時は金なりで、人それぞれの時間をお互いの知識と技能に互いに交換することができることを知っており、ここにタイムシェアエコノミーが生まれる)」と書かれています。
合わせて、この記事には「目前全世界已有超過1000個以上的「時間銀行」組織,推行時間交換(今のところすでに、全世界に1,000を超える「時間銀行」の組織があり、時間の交換を推進している)」と書かれていますが、台湾にも「台灣時間銀行協會」という団体があります。
「台灣時間銀行協會」の職務内容については、協会の公式ウェブサイトに以下のように説明されています。
以交換服務存取時間為方法(時間預託)期能建立資源整合交換服務平台。同時促進社會互助,重建信任與自立,增進弱勢者及群體福祉,改善生活品質。提倡奉獻精神、促進群體組織間合作,以建構廣泛的社會服務網絡為宗旨。
(サービスと時間をやり取りするという方法(時間預金)によって資源統合交換サービスプラットフォームを構築することができる。同時に社会互助を促進し、信任と自立を再構築し、社会的弱者と社会福祉を向上し、生活の質を改善する。貢献の精神を促し、社会組織間の協力を促進し、広く社会サービスを構築することを主旨とする)
社会福祉にかかわるサービスと時間を「貯金」し交換することによって、社会サービスを多くの人々がより利用しやすくなるような仕組みが「時間銀行」であることがわかりますね。
上に挙げた台灣時間銀行協會では、1時間のサービス提供で10ポイント獲得することができ、1ポイントを6分のサービスと交換することができると、サイトには書かれています。
「時間銀行」にブロックチェーンを導入する取り組みは、こうしたポイント制度による交換業務をトークンを介したサービスへとバージョンチェンジするものといえます。
また、トークンを現金とも交換可能にすることによってよりインセンティブが働くように、また、個人間での「価値の移転」が自由にできるようにして、「時間交換」の機能を強化していくことが目指されているようです。
こうした取り組みをまずは高齢者介護ボランティアの仕組みに導入していくとともに、将来的には以下のような事業への活用を展望しているとのことです。
無論是政府或機構的志工、長照事業、教育事業、慈善事業甚至是宗教事業等都可以藉由時間銀行區塊鏈與時間貨幣來發揮鐘點人力資源的最大效用。
(もちろん、政府や機構のボランティア、長期ケア事業、教育事業、慈善事業、果ては宗教事業などにいたるまで、時間銀行ブロックチェーンと時間トークンを通じて時間による人的資源のもっとも大きな効果を引き出すことができる)
「人的資源」を最大限に活用する必要があるあらゆる分野への応用が視野に入れられていることがうかがえます。
そもそも、「時間銀行」の発想が「お金」を介在させにくい分野に「価値付け」をするしようとするものであったことを思えば、ここにトークン発行・交換をともなうブロックチェーンを介在させることは、自然の成り行きであるように感じます。
亞洲大學の取り組みは、これから企業からの融資を受けて進めていくという段階なので、実際にサービス開始に至るまではまだまだ時間がかかるのかなという感じです。
ただ、同様の取り組みはこれからいろんなところで生まれてくる可能性がありますので、これからもコツコツと情報を追いかけていきたいと思います!
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