(台湾南部の海はさすが熱帯!という感じで、綺麗なビーチが多いですよ)
前回、台湾のブランド米「池上米」にブロックチェーンを利用した食品トレーサビリティプラットフォームを導入する動きについて書き留めました。
この記事のなかで、NAOTTAさんの記事に少し触れました。
ブロックチェーンを使用したマグロの追跡サービスについての記事ですが、この記事を読んで、そういえば台湾も遠洋漁業でマグロを捕ってるよなぁ…と思って、少し情報を探してみました。
すると、まだ具体的な技術が開発されているわけではないようでしたが、興味深い情報を目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・台湾漁業はEUからイエローカードを出されている?
・ブロックチェーンを活用した追跡システムの構築という提案
・「漁業の国際化」という課題
台湾のニュース・オピニオンサイト「民報」に、李武忠さんという方が書いた「解除黃牌台灣漁業需要區塊鏈技術(台湾漁業のイエローカードを解除するにはブロックチェーン技術が必要)」というタイトルの論考が、2018年7月27日付で掲載されました。
ここでタイトルになっている「イエローカード(黄牌)」とは、EUが違法操業に対する対策が不十分な国や地域に出しているもので、特にIUU(Illegal,Unreported and Unregulated、違法・無報告・無規制)への対策が遅れているとみなされた場合に出されるものです。
(IUUについては、WWFジャパンの以下の記事がシンプルにまとまっています)
台湾情報の日本語サイト「フォーカス台湾」の記事によれば、台湾は2015年10月にEUからイエローカードが出されたようです。
イエローカードのきっかけはフカヒレ漁における不正行為だったようですが、これがマグロ漁をはじめとする遠洋漁業全体に波及しているようです。
この記事では台湾政府も対策を進めており、2017年末にはイエローカードが解除されるだろうとの見通しが書かれていますが、2018年7月時点でもまだ解除されていないようです。
そこで、上に挙げた「民報」の論考が書かれたということのようですね。
「民報」の李武忠さんの論考は、台湾に突き付けられているイエローカードを撤回させるための切り札として、国際的にも研究開発が進んでいるブロックチェーンを活用した追跡システムの構築を急ぐべきだと主張しています。
提案されている内容はオーソドックスなもので、すでに金融・会計・保険などの分野でブロックチェーンの利用は、その「不可變(immutable)、不能更改(unalterable)、可查證(verifiable)」という特性を活かす形で商業化段階に至っており、こうした側面を漁業のサプライチェーンにも応用するべきだと述べられています。
論考には、国際的な取り組みとして、WWFによるブロックチェーンを利用したトレーサビリティの取り組みが挙げられています。
WWFの取り組みについては、サスティナビリティニュースサイト「Sustainable Japan」の以下のページに報じられています。
NAOTTAさんの記事にもあったように、フィジー沖を中心にさまざまな取り組みがおこなわれているようですね。
李武忠さんの記事には、最近も、台湾の漁船がILOから“Work in Fishing Convention”(漁業労働条約)違反を指摘されたという事例が挙げられています。
これは、台湾の大手紙「自由時報」のニュースサイトに掲載された下記の記事によれば、2018年5月から6月に高雄船籍の「福甡11號」が南アフリカに拘束されたことを、海外メディアが条約違反を報じたものの、台湾の行政管轄機関である漁業署が当該船は条約違反を犯していないことを確認したと報じています。
ともあれ、EUからのイエローカードが出されている状況のなかでこうした事案が発生するというのは、台湾の漁業に対する国際的な視線の厳しさを象徴しているようです。
国連のSDGs(Sustainable Development Goals)の取り組みに示されているように、世界中が持続可能な発展のありかたを目指しているなかで、水産資源をいかに守るかということについてもそうしたありかたの実現が模索されています。
そこでブロックチェーンのような技術が大きな力を発揮する…少なくとも、発揮することが期待されているということが、この論考からも伝わってきます。
今回、少し情報を探してみると、台湾の遠洋漁業をめぐる状況の改善は切迫しているように感じます。
そうした状況のなかで、今回取り上げた論考のような提案が実現するかどうか…具体的な動きとして現れることを期待して、台湾の動きを追っていきたいと思います!
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