台湾を含めた中華圏では今月末の春節(旧正月)に向けて、これから少しずつ年末気分が盛り上がっていくところですが、その前に台湾では総統選挙と立法委員選挙で盛り上がっています!
ただ、今回は選挙期間中に台湾に滞在していたので、選挙運動の盛り上がりを感じることができるかなぁと期待していました。
確かに、街中ではあちこちで立候補者の広告を目にしました。
ですが、過去の選挙に比べるとやや静かだったような…
理由ははっきりわかりませんが、総統選挙の趨勢がほぼ決まっていることが要因のひとつなのかなぁ…と想像したりしています。
なんだかんだで投票日当日の記事となってしまいましたので、一応、情勢分析や観測記事は控えますが、「台湾 総統選」あたりで検索していただければすぐ出てくると思います。
(とりあえず、wikipediaのページを貼り付けておきます)
ただ、それだけに、総統選挙と同日に投開票される立法委員選挙の動向が注目を集めています。
こちらも投票結果が出れば日本語メディアでもいろいろと報じられると思いますが、総統選の情報と比べてそれほど詳しい内容が流れていないようですので、基本的な情報を少し書き留めておきます!
まず、台湾の立法委員選挙についてですが、立法委員の定数は113議席で、その内訳は…
・小選挙区:73議席
・原住民代表:6議席(平地原住民3議席、山地原住民3議席)
・比例代表・海外代表:34議席
となっていて、小選挙区・比例代表並立制に近い形で選挙が実施されています。
任期は4年ですので、前回の選挙は2016年1月に実施されましたが、その議席は…
民主進歩党(民進党):68議席
中国国民党(国民党):35議席
時代力量(時力):5議席
親民党:3議席
そのほか:2議席
となっています。
同日の総統選挙で当選した蔡英文さんが所属する民進党が、立法院でも過半数を超える議席を獲得したことで、民進党は結党以来初めて、安定政権を樹立・運営してきました。
また、以下の記事にも少し触れましたが、初めての選挙で5議席を獲得した時代力量は、2014年の「太陽花學運(ひまわり学生運動)」から生まれた政党で、民進党の躍進を側面から支援しました。
ですが、この2つの政党、この4年間で勢力を大きく後退させてきました。
民進党は蔡英文政権が採用する経済政策・文化政策・外交政策の不調から、大きな期待が失望へと変わっていき、2018年11月の統一地方選挙で大敗するという結果を招きました。
また、時代力量は以下の「フォーカス台湾」の記事にありますように、民進党との距離の取り方を巡って内部対立が起こり、2019年8月に主要な立法委員が離脱する事態を招きました。
そのため、党としての存続そのものがかかった状態で選挙を迎えることになりました。
こうした与党をめぐる動きに対して勢いを盛り返したのが、2018年11月の統一地方選挙で大勝した野党・国民党でした。
地方自治体の首長選挙が実施されて以降、民進党の候補が勝ち続けてきた高雄市長選挙で、立候補当初は弱小候補と見られていた国民党の韓國瑜さんが逆転勝利を収めたことは、国民党の勢いを象徴する出来事でした。
「韓流」と呼ばれた一大ブームを巻き起こした韓國瑜さんは、高雄市長当選の勢いそのままに国民党の総統選候補者にまで上り詰めました。
現職総統でありながら、民進党内の候補者選定プロセスでギリギリの勝利を収めた蔡英文さんに対して、勢いに乗る韓國瑜さん…
この構図が決まった2019年前半までは、政権交代は確実と言われていましたが、政治の世界は何が起こるかわかりません。
香港で続く大規模デモを台湾の人々が目の当たりにするなかで、中国に対する警戒感が急速に高まり、それが中国との距離を縮める傾向にある国民党への警戒感へとつながっていきました。
合わせて、韓國瑜さんの親中姿勢と失態・失言の多さに対して、断固とした中国への対抗姿勢を打ち出す蔡英文さんへの印象が改善され、民進党と国民党の支持率は徐々に逆転していきました。
そうしたタイミングで迎えたのが、今回の総統選挙・立法委員選挙ということになります。
少し前置きが長くなってしまいましたが、こんな感じで今回の選挙は、2016年の前回選挙を戦った既成政党がイマイチ安定しない状況のなかで行われることになりました。
既成政党が不安定ということになると、その間隙をついて新たな政党が結成されて勝機をうかがうという動きが生まれてきます。
今回の立法委員選挙のうち、比例代表に候補者を出している政党は過去最多の19となっています。
19の政党をまとめておくと、届け出順に…
合一行動聯盟、中華統一促進党、親民党、安定力量、台湾基進、時代力量、新党、喜楽島聯盟、中国国民党、一辺一国行動党、労働党、緑党、宗教聯盟、民主進歩党、台湾民衆党、台湾維新、台澎党、国会政党聯盟、台湾団結聯盟
このうち、既に議席を持っている国民党、民進党、時代力量、親民党のほか、2019年中に結成された台湾民衆党や一辺一国行動党、第三勢力としての緑党や台湾基進などが議席を獲得するかどうかが注目されています。
このなかで特に注目を集めているのは、「無党派市長」と呼ばれてきた台北市長の柯文哲さんが結成した台湾民衆党(台灣民眾黨)です。
以下の記事でも触れましたが、柯文哲さんは一時期、総統選への出馬が取り沙汰されていましたが、先に述べたような情勢の変化を踏まえ、総統選への出馬ではなく、新たな政党の結成という選択をしました。
ちなみに、この記事で総統候補として触れた郭台銘さんは、国民党からの総統選出馬を断念して以降、柯文哲さんと手を結んで台湾民衆党への支援を行なっていましたが、ここ最近は親民党への支援もクローズアップされていました。
今回の立法委員選挙は、こうした多様なキーパーソンの思惑が複雑に絡み合いながら新たな政党が乱立するという状況のなかで、どこがどれだけの議席を獲得するのかということが今まで以上に注目されているといえます。
特に、この記事で触れましたように既成政党、とりわけ台湾の「二大政党」である与党・民進党と野党・国民党がなかなか安定しない状況のもとで、「第三勢力」の動向が注目を集めています。
いわば…
というところが、今回の立法委員選挙の注目ポイントだといえます。
…ふぅ、ようやく言いたいことが言えました。
今回の総統選挙・立法委員選挙をわかりやすくするためのメモのつもりの記事が、やっぱり長くなってしまいました💦
ですが、台湾の政治状況に興味がある方に、何か役に立つことがあればいいなと思って記事にしてみました。
また投票結果が出れば、ブロックチェーン事情などと合わせて記事にできたらなと思います!