(台湾では日本風味のお茶がペットボトルで買えます。味、イイ感じですよ)
昨日の夜からALISの記事も含めて、いろいろとブロックチェーン・仮想通貨関連の情報を読んでいると、コインテレグラフに下記のようなニュースが出ていました。
こちらの記事は「4大会計事務所」を主語とする形で報じられていましたが、記事中に台湾の経済紙「工商時報」の元記事がリンクされていましたので、そちらを見てみると、台湾の銀行を主語として別の角度からニュースの内容が報じられていました。
そこから少し現地の情報を見ていると、少し興味深いことがわかりましたので、記事として書き留めておきたいと思います。
・財金公司の「外部確認ブロックチェーン」が稼働!?
・財金公司は2016年からブロックチェーンの開発に着手!?
・会計業務の効率化にブロックチェーンを!
コインテレグラフの記事のソースとなっている「工商時報」のウェブサイトに2018年7月19日に掲載された記事によると、今回の会計事務所と台湾の銀行との提携は、以下のように報じられています。
據了解,財金公司率20家銀行作財報簽結的「函證區塊鏈」,已和包括安永、勤業眾信、資誠、安侯建業等四大會計師事務所簽約,將挑選多家知名上市公司的「半年報」率先試行「函證區塊鏈」,明年起將全面擴大推動到國內1,400多家公開發行公司的財報函證。
(わかったところによれば、財金公司の20の銀行が財務諸表の作成で提携した「外部確認ブロックチェーン」は、すでにErnst&Young、Deloitte、PwC、KPMGなどの四大会計事務所を含めて提携され、多くの著名な上場企業の「半期報告書」から「外部確認ブロックチェーン」の試験運用をはじめ、来年から全面的に国内1,400以上の株式公開企業の財務諸表確認へと広げていきたい)
コインテレグラフの記事と工商時報の記事では主語が違うとともに、
「函證區塊鏈(外部確認ブロックチェーン)」を構築したのは「財金公司率20家銀行(財金公司の20の銀行)」であること、
工商時報には「半年報(半期報告書)」から活用していくと明示されていること、
コインテレグラフの記事では「来年には中国で1400社以上の上場企業を対象に…」とありますが、工商時報の記事では「國內1,400多家公開發行公司」、つまり「(台湾)国内」の企業へと広げていくとしていることなどが、相違点として指摘できます。
「工商時報」の記事でメインとなっている「財金公司(財金資訊股份有限公司)」は、公式ウェブサイトによれば、1984年に行政機関である「財政部」の一組織として結成され、1998年に財政部と公的金融機関および民間金融機関の共同出資によって株式会社化された組織だということです。
業務内容としては、金融機関間のさまざまな業務の効率化や業務の自動化などをサポートする役割を果たしていくことが中心になっていて、「金融科技(Fintech)」の導入にも積極的な姿勢を示しているようです。
ブロックチェーンへの注目も比較的早く、「工商時報」の別の記事によれば、2016年10月の時点で「金融區塊鏈技術研究與應用委員會(金融ブロックチェーン技術研究応用委員会)」の設置に向けた動きが報じられ、銀行や証券会社など47の金融機関が委員会に加入する予定だと伝えられていました。
また、別の記事では、2017年5月の時点で「財金公司區塊鏈平台(財金公司ブロックチェーンプラットフォーム)」に20の銀行が加入していることが報じられています。
この記事には、2017年7月に銀行内における企業の資金管理と資金調達について、ブロックチェーンの試験運用をはじめるとあります。
今回の2018年7月の記事には、会計事務所とも提携した「半期報告書」の取り扱いに対するブロックチェーンの応用は、「財金公司率20家國銀成立區塊鏈平台以來,最具代表性的成果(財金公司の20の国内銀行がブロックチェーンプラットフォームを構築して以来、もっとも具体的な成果である)」と報じられています。
このあたりを合わせて考えると、今回のニュースは財金公司を構成している台湾の銀行が2016年から2年をかけて着々と進めてきたブロックチェーン技術の開発と応用が、具体的な活用の段階にまで至ったものと位置づけることができるかと思います。
「區塊鏈元年(ブロックチェーン元年)」を迎えたといわれる台湾ですが、金融機関では比較的早い段階から技術開発に動き出していたんだなということを感じますね。
「工商時報」の記事には、今回のプロジェクトを実際に担う20の銀行についても、以下のとおり明示されています。
土銀、北富銀、國泰世華銀、台中銀、高雄銀、新光銀、永豐銀、元大銀、玉山銀、中國信託,及台銀、合庫、一銀、華銀、彰銀、上海商銀、兆豐、台企銀、凱基、台新等20家銀行
(土地銀行、台北富邦銀行、國泰世華銀行、台中銀行、高雄銀行、新光銀行、永豐銀行、元大銀行、玉山銀行、中国信託商業銀行、台湾銀行、合作金庫銀行、第一銀行、華南銀行、彰化銀行、上海商業儲蓄銀行、兆豐國際商業銀行、台湾中小企業銀行、KGI凱基銀行、台新銀行など20の銀行)
このなかには、すでに独自でブロックチェーン技術の開発と応用を進めている銀行が多く含まれています。
たとえば、台北富邦銀行は、決済システムの試験運用を始めています。
中信商銀は研究室を設置して技術開発を進めています。
台新銀行も口座間取引で試験運用を始めています。
個々の銀行がブロックチェーンの活用を模索すると同時に、大きな枠組みをもって業界全体でブロックチェーンを活かしていくプラットフォームを構築していこうという動きが見えてきますね。
まずはこれらの銀行も含め、台湾の銀行全体でおこなわれている財務諸表作成時の外部確認作業の総数約150万件を、ブロックチェーン上で処理できるように移行させていくとのことです。
現在、約半月かかって処理しているという外部確認作業のプロセスを「一天之内(一日以内)」に短縮させることを目標としているということですから、会計プロセスの大幅な効率化が実現することになりますね。
今回のニュースについては、僕がいつもいろいろと刺激を受けているmahsonoさんが、Twitterで以下のようなコメントをくださいました。
「いろんな業種でもイノベーションが起こりそう」、まさにそうした感触を得るニュースだと思いました!
企業活動の重要なプロセスでブロックチェーンの活用が進むと、それが企業活動全体に波及していく…こうした動きが同時多発的に起こっていくと、ブロックチェーンの社会実装も一層進むのではないかと感じます。
今回の動きが想定通りに広がっていくかどうか…これからもコツコツと追いかけていきたいと思います!
kazの記事一覧はこちらです。(下のアイコンからもご覧いただけます)
Twitter、やってます!