(これまでの記事もこのアイキャッチだったので…ヴォエのある風景in台湾)
ブロックチェーンという基層技術が多くの人々の生活に浸透していくために、エンターテインメントが果たす役割は大きいのかもしれないなぁと感じています。
「ブロックチェーン×エンターテインメント」の取り組みは台湾でも始まっていて、僕の記事でも「SELFPICK」という、これまでにショートムービーを製作してきたスタートアップによるプロジェクトを取り上げました。
これらの記事で取り上げた『聖人大盜』という映画は、ブロックチェーンをテーマにしているというだけではなく、「SELF Token」という独自トークンを発行することによって、観客と映画の世界を結び付ける「トークン×ムービー=没入型エンターテインメント」を実現しようとしています。
『聖人大盜』の公式ウェブサイトにトレーラームービーが公開されていますので、貼り付けておきます。
映画の詳しい内容は上に挙げた記事をご参考いただくとして、今回は続報的に、着々と撮影開始に向けた準備が進んでいる様子を書き留めておきたいと思います。
・多様なイベントへの参加で認知度アップを狙っている?
・映画製作にかかる資金調達は?
・「没入型エンターテインメント」の実現に向けて…
台湾の大手紙「聯合報」のニュースサイト「聯合新聞網」に2018年11月29日に掲載された記事によると、12月2日に台南の国立成功大学で開催される「TEDxTainan」の2018年大会で『聖人大盜』の映画の世界を体験できるイベントが行われるそうです。
「TEDxTainan」は、世界的に展開されている「TEDx」の地方版として、台湾・台南の学生を中心に2010年に結成されたグループということで、以下のように公式サイトも開設されて、活発な活動の様子を見て取ることができます。
今回の大会(年會)は毎年テーマを決めて実施されているイベントで、今年のテーマは「Communication makes connection!」となっています。
このイベントの登壇者として、『聖人大盜』を製作しているSELFPICKの創業者・CEO・映画監督の徐嘉凱さんや、SELFPICKが発行している独自トークン「SELF Token」のCOO(營運長)である陳采青さんの名前が挙がっています。
また、大会では参加者が映画の世界に入り込み、現実世界と仮想世界の融合を体験できるようなイベントも行われるということです。
「TEDx」と言えば、ブロックチェーン・仮想通貨に関する法整備を積極的に進めている立法委員の許毓仁さんは、「TEDxTaipei」の創設者のひとりとして有名です。
「TEDxTainan」もブロックチェーンを含めた新たな技術に関するイベントをたびたび開催しているようですが、今回の大会では、SELFPICKの関係者以外の登壇者には、臨床心理士や編集者、高齢者福祉の関係者や森林保護の専門家など、必ずしも技術系ではない人々が揃っていて、より幅広い人々へのアプローチを意識したイベントになっているようです。
同じ時期に、SELF Tokenは、台湾の仮想通貨取引所である「MAX」や、ブロックチェーンを活用した「デジタルコンテンツエコシステム」の構築を目指している「Contentos」の関係者とともに登壇するミートアップにも参加を予定しているようです。
冒頭に挙げた記事でも触れましたように、映画自体はすでに台湾メディアの注目を集めていますが、より幅広く一般の人々にアピールすることで認知度を高めていくような取り組みが展開されているように感じますね。
『聖人大盜』の製作にあたって、SELFPICKはトークンのプライベートセールやクラウドファンディングを実施してきたようです。
クラウドファンディングについては、専用ウェブサイトに調達状況が公開されていて、2018年11月30日現在で2,374,886台湾元(約870万円)となっています。
目標額は200万元に設定されていますので、当初の予定を上回る資金が集まっているようですね。
また、SELF Tokenの公式ウェブサイトによると、プライベートセールではすでに2,777ETHが調達されたと公開されています。
その後、2018年10月17日から同年11月30日まで先行クラウドセールが実施されていました。
ちょうどこの記事を書いている間にセールが終了しましたが、その結果、1,000ETHの目標額に対して275.52ETHで終了時刻となり、目標未達となったようです。
すでに基本的な資金は調達が済んでいるようなので、これから予定通り撮影に入っていくと思われますが、クラウドセールの結果を受けて次のどのような展開があるのか、これからの動きを見ていく必要がありそうです。
もしかしたら、上に取り上げたようなイベントへの参加・登壇を通じて、更なる認知度向上・資金調達が見込まれているのかもしれないなあと感じました。
SELFPICKによる「トークン×ムービー」の取り組みは、映画産業における資金調達の困難さを克服して、台湾の映画産業の発展に資することを目指しているということです。
そのために、『聖人大盜』の製作プロセスが資金調達も含めてどのように展開していくか、もっと言えば成功するかどうかということが非常に大切になってきます。
成功モデルとなるか失敗モデルとなってしまうか…今のところは着々と資金調達やメディア露出も進んでいて、順調に進んでいるように見えます。
ただ、クラウドセールの結果が今後どのように影響していくか、これからの展開を見守っていく必要があるように思います。
また、SELFPICKのプロジェクト全体にあっては、映画製作は「没入型エンターテインメント(沈浸式娛樂)」実現のための入り口として位置づけられています。
そうした広大なビジョンが本当に実現されていくのか…これからの動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!