台湾や香港のブロックチェーン・仮想通貨に関する情報をコツコツ追いかけていると、中国の動向も否応なくいろいろと目に入ってきます。
中国の動向もできる限り追いかけたいなぁと思うのですが、いろんな動きがまさに秒単位で展開していますし、中国独自のビジネスの文脈や文化的な背景があるので、なかなか躊躇している感じです^^;
ただ、今回は中国のイーコマース大手がブロックチェーン関連でいろいろな動きをしているニュースを目にしましたので、書けることだけを書き留めておきたいと思います。
・「京東」は企業向けブロックチェーンプラットフォームを公開
・「阿里巴巴」のブロックチェーンの対する動きは?
・中国のイーコマースをめぐる激しい競争のなかで…
中国の経済紙「经济日报」のウェブサイト「中国经济网」に2018年8月20日に掲載された記事によると、中国のイーコマース大手の「京東」は企業向けのブロックチェーンプラットフォーム「智臻链」を公開したということです。
ちなみに、「京東」については日本語でいろいろな情報が出回っていますが、たとえば最近ではGoogleとの戦略的パートナーシップが話題になりました。
プラットフォームの公式ウェブサイトを見ると、正式名称は「京东智臻链防伪追溯平台」となっています。
「防伪追溯平台」は、「security traceability platform」と英訳することができますから、イーコマース企業として偽物や出所不明な製品を排除するシステムを提供するプラットフォームのようですね。
実際に、サイトには以下のような説明文が掲げられています。
提供透明、安全、可追溯的供应链信息。为用户提供一站式数据服务体验,探索数据资源整合背后的价值。使用区块链技术、移动通信和智能标签等跟踪物理产品从原点到销售点的过程
(透明で、安全で、追跡可能なサプライチェーンの情報を提供する。ユーザーのためにワンストップのデータサービスエクスペリエンスを提供し、データリソース統合の背後にある価値を探っていく。ブロックチェーン、モバイル通信、スマートタグなどを使って、製品の元から販売までのプロセスを追跡する)
サプライチェーン・流通にかかわる上流から下流に至るまでの情報を、ブロックチェーンなどの技術によって追跡可能なプラットフォームを提供するという意図が明確ですね。
実際に、このプラットフォームが公開される直前の試験運用段階で、中国の大手保険会社である「中国太平洋保险集团」がプラットフォームを活用する形で、「增值税专用发票(VAT特別請求書)」の発行の電子化を始めたようです。
こうした請求書の電子化は伝票処理の効率化ということだけではなく、「采购全流程电子化(購入プロセスのすべてのプロセスの電子化)」を視野に入れているということですから、上に挙げたプラットフォームの目的と合致するサービスということになりますね。
他方、中国のイーコマースの最大手である「阿里巴巴(アリババ)」は、グループ傘下で「支付宝(Alipay)」を開発・運営している「蚂蚁金服(アントフィナンシャル)」が、病院で発行される領収書のブロックチェーンを活用した電子化の試験運用を開始したという記事が、中国のニュースサイト「36Kr」に掲載されています。
「蚂蚁金服」については、こちらの記事に少しまとめています。
記事によると、患者が病院の問診費や入院費などを支付宝で支払うと、支付宝アプリ内の「发票管家(領収書管理)」のページに領収書が届くというシステムだということです。
このシステムをブロックチェーン上に構築することによって、領収書処理をスピード化するとともに、二重発行を防止することにつながり、医療費の二重請求を防ぐことができると説明されています。
まずは、アリババの「城下町」である浙江省の杭州と、台州、金華の病院でサービス提供を始めているようです。
グループ傘下のこうした動向は、アリババグループ全体のブロックチェーン導入に対する水面下の積極的な動きを反映しているようです。
台湾の経済紙「工商時報」のウェブサイトに掲載された記事によると、2018年8月18日に中国を訪れているマレーシアの首相であるマハティールさんが杭州でアリババの馬雲さんと会い、インターネットとブロックチェーンの金融分野への導入について意見交換したそうです。
この対談中、馬雲さんは現在、アリババが関心を持っている技術について以下のように述べたようです。
當前阿里巴巴關注三個關鍵技術,一是用於金融方面的區塊鏈,預料區塊鏈和互聯網在未來20年將重構世界金融系統;二是人工智慧;三是IOT物聯網,未來所有通電的設備都會變成智慧設備。
(今のところアリババは3つの重要な技術に注目している。第一に金融分野へのブロックチェーンの活用で、ブロックチェーンとインターネットは今後20年、世界の金融システムを再構築することが期待されている。第二にAI、第三にIoTで、これからすべての通電設備はスマート設備に変わっていくだろう)
アリババはすでに、海外への事業展開のひとつとして実施している「eWTP(Electronic World Trade Platform)」の拠点をマレーシアのクアラルンプールに設置しています。
(このあたりについては、日本語で読める情報として以下のような記事が出ています。)
今回の馬雲さんの上記の見解は、ブロックチェーンの導入と世界展開を視野に入れた発言として注目されますね。
もちろん、こうした動きや発言だけを表面的に追いかけるだけでは、今後の中国の動きを見通すことは難しいかもしれません。
記事に挙げた「蚂蚁金服」の動きを伝えた「36Kr」の記事は、以下のような状況とともに今回の動きを位置づけています。
微信支付与蚂蚁金服是支付领域的两大竞争对手,在区块链方面,二者自然也会你追我赶。
(WeChatPayとアントフィナンシャルは決済分野のライバルで、ブロックチェーンにおいても、両者は自然と抜きつ抜かれつの競争を繰り広げている)
「微信支付(WeChatPay)」は「腾讯(テンセント)」傘下の決済サービスで、アリババとの熾烈な競争を中国および世界で繰り広げています。
また、京東の動きにも、こうした阿里巴巴や腾讯の動向が強く意識されているでしょう。
さらには、政府の「一帯一路」や各種政策との関連・連動も無視することはできないため、ひとつひとつの情報を常に多様な動向と関連づけながら見ていく必要があると感じます。
それだけに、なかなかリアルタイムに追いかけていくことが難しいのですが…できる限りコツコツと、情報を拾っていきたいと思います!
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