LINEが仮想通貨取引所の運営に乗り出したり、Facebookが独自通貨「Libra」の構想を打ち出すなど、既存のコミュニティとトークンとの関わりが深まってきていますね!
ALISはゼロからコミュニティを作り出す試みを進めていますが、ALISが一所懸命に作ろうとしているコミュニティをもう持っているサービスが、トークンと結びついたときに何を生み出していくか…注目せずにはいられません。
台湾でも「コミュニティ×トークン」の試みはいろいろな形でおこなわれていますが、最近では地域の活性化にトークンを活かしていこうという、リアルコミュニティとの「化学反応」が期待されているようです。
こうした取り組みのひとつとして、台湾南部の中心都市である高雄市で導入された「高雄幣」について記事にしたことがあります。
今回は、この「高雄幣」の続報とともに、また異なった地域やコミュニティでの取り組みについて、記事に書き留めておきたいと思います。
・「高雄幣」に続いて「嘉義幣」も⁉︎
・多様なコミュニティへと広がる?
・トークンエコノミーの社会実装が進む?
台湾のネットニュースメディア「ETtoday新聞雲」が2019年5月6日に報じた記事によると、台湾中南部の嘉義県がフィンテック推進を担う「中華科技金融學會」と合同で「嘉義幣産官学協定記者会見(嘉義幣產官學合作簽約記者說明會)」を開催したそうです。
嘉義県は台湾中南部、台南市の北側に位置する地域で、内陸部に台湾でもっとも高い「玉山」や、観光地として有名な「阿里山」を擁する、自然豊かな地域です。
そうした地域の特性上、農業や林業、さらには沿岸部でおこなわれる漁業などの第一次産業が主な産業となっていて、今回の記者会見にも「嘉義県農會」などの産業関係者も登壇したようです。
また、今回の動きを主導した「中華科技金融學會」については以下の記事で触れましたが、台湾のフィンテックの健全な発展をサポートしていくという目標を掲げた産官学の協働組織です。
記事中、「嘉義幣」のセールスポイントが以下のように説明されています。
全国で初めての「トークン×ブロックチェーン」を応用した農産・水産消費の形であり、ブロックチェーン技術によって「農民・漁民」、「消費者」、「現地政府」の三者が利益を得るモデルである。
(全國第一個幣鏈合一應用在農水產消費,以區塊鏈科技達成「農漁民」、「消費者」、「當地政府」三贏的典範。)
冒頭に過去記事のリンクを貼りましたが、今回の「嘉義幣」の前に「高雄幣」があったはずなのに、「全国で初めての「トークン×ブロックチェーン」(全國第一個幣鏈合一)」と書かれていたのを見たときは、「あれ?」と思いました。
と思いながら、もう一度、冒頭の記事を見返してみると、「高雄幣の考え方はブロックチェーンから来ている(高雄幣概念來自區塊鏈)」と言及されていたことに気づきました。
そうでした、「高雄幣」はブロックチェーンを使った取り組みではなかったのでした。
実際に、台湾のネットメディアである「信傳媒」の記事には、「嘉義幣」が「高雄幣2.0」として紹介されていました。
この記事には、「嘉義幣」の特色が以下の3点にまとめられています。
1、ブロックチェーン技術を使って関連ノードを記録し、消費者を生産過程に参加させる
2、生産者と消費者を直接結びつけ、取次を通さずに、農民の収入を上げる
3、「嘉義幣」のキャッシュバックメカニズムによって、まず農民に戻し、それから生産品を購入する消費者にバックする
(第一、透過區塊鏈加密,記錄相關節點,讓消費者參與產製過程;其次,生產者與消費者可以直接連結,不透過中間商,提高農民收入;最後,「嘉義幣」的回饋機制,先是回饋農民,再回饋到購買產品的消費者。)
ブロックチェーンを活用することが、生産者の経済状況を好転させるという具体的な成果へと結びつくことが期待されているといえますね。
「高雄幣」や「嘉義幣」の取り組みは、地方自治体単位で使われるコミュニティトークンですが、こうした取り組みをまた異なる形態のコミュニティに応用しようという動きも現れてきています。
台湾の中央報道機関「中央通訊社」が2019年6月25日に報じた記事によると、中華科技金融學會は7月末を目標に、「社区トークンを基礎とするコミュニティトークン(以社區貨幣為基礎的社群貨幣)」を打ち出すことを明らかにしたそうです。
「社区(社區)」というのは、もともとはマンションの自治組織から始まった台湾独自の地域コミュニティで、行政組織とは異なった公共的な役割を持つ組織として位置づけられています。
こうしたコミュニティトークンの推進について、行政院の副院長(内閣の副首相に相当)である陳其邁さんは「高雄幣」を引き合いに出し、まだまだユーザーの少ない高雄幣には交通や医療、あるいは政策策定などに活用できる可能性があることに言及しています。
台湾の独自コミュニティである「社区」へのトークン導入も、こうした可能性のもとで構想されていることがわかります。
冒頭にリンクを貼った「高雄幣」の記事でも触れましたが、陳其邁さんは2018年の高雄市長選に民進党の候補者として立候補し、「高雄幣」につながる構想を打ち出していました。
高雄市長選では国民党の韓國瑜さんに負けてしまいましたが、その後、行政院副院長に就任し、ブロックチェーンや仮想通貨を含めたフィンテックに前向きな姿勢を示しています。
台湾行政の要職にある人物がブロックチェーン・仮想通貨の導入に前向きだということは、政治的なイニシアティブのもとでこうしたアイデアが広まっていく可能性が感じられますね。
LINEやFacebookによるトークン導入の動きは、既存のコミュニティの可能性を広げるものとして期待感が広がります。
それ以上に、人々が生活するうえでは欠かすことのできないリアルなコミュニティにトークンが導入されることでどのような可能性が広がるのかということは、生活に密着する動きだけに、より一層期待できるように思っています。
こうした動きに、技術開発者や産業関係者だけではなく、行政や立法に要職にいる人々が積極的に関わろうとしていることが、こうした期待感を一層高めます。
こうした状況のもとで、「高雄幣」や「嘉義幣」に続くコミュニティトークンが生み出されていくかどうかが、ブロックチェーンやトークンの社会実装が台湾でどこまで進むかの試金石になりそうです。
こうした動きのこれからを、コツコツと追いかけていきたいと思います!