台湾は2018年11月に統一地方選挙(首長および地方議会)を控えています。
以下の記事では、政権与党である民進党の台北市長選候補者の姚文智さんが、行政システムへのブロックチェーン導入を目指していることを書き留めました。
同時に、記事中には、高雄や台中といった台湾の大都市で「智慧城市(スマートシティ)」実現に向けた取り組みが進んでいることも、過去記事をリンクする形で取り上げました。
選挙を控えて、各地の候補者の動向が報じられるなかで、「ブロックチェーン」や「スマートシティ」について言及される機会が少しずつ増えているように感じますので、そうした動きについて少し書き留めておきたいと思います。
・台北市長の柯文哲さんはスマートシティを実現する⁉︎
・丁守中さんは「時間銀行」に関心あり?
・ブロックチェーン=好感度アップ?
・ブロックチェーンは争点になりうる?
2018年1月に台北市がIOTA基金会と提携し、IOTAの技術をベースとする「智慧城市(スマートシティ)」化を目指していることは、日本語で読めるニュースとしても報じられ、注目されましたね。
この提携については、技術開発を担う台湾のスタートアップ「BiiLabs」の動きに即して以下の記事で言及しましたが、この提携にサインしたのが現職の台北市長である柯文哲さんです。
柯文哲さんは4年前の台北市長選に無所属として出馬し、台湾の二大政党である民進党と国民党の候補者を破って初当選しました。
政党のバックアップを持たない柯文哲さんの当選の原動力となったのが、若い世代を中心としたネットによる選挙活動だったと言われています。
そうした背景もあって、たとえば以下の「蘋果時報AppleDaily」の記事では、「網紅市長(ネットで人気のある市長)」と呼ばれています。
再選を目指す今回の台北市長選でも早々にキャンペーンサイトを公開し、「群眾募資(クラウドファンディング)」を実施するなど、積極的なネット展開を見せています。(下のページの写真が柯文哲さんです)
また、政策のひとつとして「智慧城市(スマートシティ)」の実現が明確に示されていて、ICTを活用した行政システムの改革が打ち出されています。
現職市長としてIOTA基金会との提携をまとめ、実際に技術開発を進めているという実績から、ブロックチェーンの活用も自然な形で政策に組み込まれている感じがします。
上に挙げた「蘋果時報」の記事で、柯文哲さんの攻撃を受けていると報じられている国民党の台北市長選候補者の丁守中さんも、キャンペーンサイトを公開し、柯文哲陣営への対抗心を示していますが、サイトを見る限り、「智慧城市」や「區塊鏈(ブロックチェーン)」というワードは見当たりません。
ただ、台北市長選への立候補を表明した直後には、ブロックチェーンに関心を寄せた言動について報じられています。
台湾の大手紙である「中國時報」が2018年6月27日に報じた記事によると、丁守中さんは高齢化が進む台湾社会において、「時間銀行」の仕組みを介護分野に導入することで長期介護の問題を解決するべきだとしたうえで、時間銀行を実現するためにはブロックチェーンによる記録保存が信頼性の高い方法だという見解を表明したそうです。
「時間銀行」と長期介護・高齢化社会との関係については、以下の記事に書き留めたとおり、台湾ではブロックチェーンを活用したシステムの開発が徐々に進められています。
丁守中さんのキャンペーンサイトで打ち出されている政策は、子育てや教育など、どちらかというと若年層に向けたアピールが目立っていますが、大都市台北にとっては、社会の高齢化も解決方法が模索されている課題だろうと思います。
これからの市長選のなかで、具体的な政策として言及されることがあるかどうかが注目点かなと思います。
こうした台北市長選の候補者によるスマートシティ・ブロックチェーンへの言及のほかに、地方議会選挙の候補者のなかにもこうしたトピックを取り上げている方がいらっしゃるようです。
過去記事では、台北市議選に立候補している「時代力量」の蕭新晟さんが政策としてスマートシティの実現を掲げると同時に、ビットコインによる寄付金受け入れを表明したことを取り上げました。
ちなみに、ビットコインによる寄付は原理上は世界中から可能ですので、海外からの寄付も受け入れるのかどうか、実際に蕭新晟さんの選挙事務所にメールで問い合わせてみたところ、「台湾の法律上、海外からの献金は不可なので、ご遠慮ください」との返事がありました。
また、2018年10月21日に「中國時報」が報じた記事によると、同じく台北市議選に立候補を表明している国民党の徐巧芯さんが、自らの選挙事務所を、eスポーツやブロックチェーンの開発企業が同居するコワーキングスペース内に開設したことが話題になっているようです。
徐巧芯さんも自らの政策のひとつに「スマートシティ」の実現を掲げていますので、選挙事務所の設置場所も、そうした選挙戦略の一環だということがうかがえますね。
蕭新晟さんや徐巧芯さん自身が、30代の若い候補者であるということも関係があるかもしれませんが、ブロックチェーンを含めた先進的な技術が若い世代へのアピールポイントのひとつになるということが、こうした動きから感じられますね。
記事に挙げた候補者はみんな、それぞれ温度差がありながらも、政策のなかで、あるいは選挙活動のなかで、ブロックチェーンやスマートシティに言及しています。
なかには、「リップサービス」で言っているだけ…ということもあるのかもしれませんが、そうしたことも含めて、「リップサービス」になりうる程度には、ブロックチェーンやスマートシティというワードが、社会の中に少しずつ浸透していると捉えることができます。
統一地方選の投票まであと1か月という時期になり、これから本格的に候補者の主張が各種メディアで報じられるようになってくると思います。
そうしたなかで、ブロックチェーンや仮想通貨、あるいはスマートシティに対する意見表明がどのような形でなされるのか…
台湾におけるブロックチェーン・仮想通貨のこれからに関わる大切な動きだと感じますので、こうした側面に注目しながら、コツコツと情報を追いかけていきたいと思います!