中国のICT系シンクタンクである「CCID(中国电子信息产业发展研究院)」が、2018年5月からパブリックチェーンの技術を評価する「Global Public Chain Assessment Index(全球公有链技术评估指数)」を毎月1回公表しています。
毎月17日から21日ごろに公表されているので「そろそろかな?」と思い、公式サイトをのぞいてみると、まだ第9回のリストは公表されていませんでしたが、2018年の評価に基づいた各種評価のトップ10がまとめられていました。
以下のように、これまでにリストについては記事にまとめてきましたので、過去記事も参照しつつ、CCIDによる2018年の総括を少し書き留めておきたいと思います。
・CCIDのインデックスについて
・2018年のパブリックチェーンインデックスを振り返って
・基礎技術(基础技术 Basic-tech)
・応用可能性(应用性 Applicability)
・創造力(创新力 Creativity)
・評価基準が公表されて、どうなる?
過去のリストと評価基準などについては、これまでの記事を以下にまとめてあります。
インデックスの公式サイトや公式Twitterのリンクも貼ってありますので、「CCIDって何?」、「CCIDのインデックスって?」という方には特に、合わせてご覧いただければ嬉しいです!
今回のCCIDによる総括は、以下の3つのページで公表されています。
これらはそれぞれ、CCIDがパブリックチェーンを評価する際に導入している3つの評価…
①「基礎技術(基础技术 Basic-tech)」
②「応用可能性(应用性 Applicability)」
③「創造力(创新力 Creativity)」
のトップ10をまとめる形となっています。
全体的なまとめは公表されていませんが、その分、これまでのリストでは必ずしも言及されてこなかった、それぞれの項目の評価基準が明示されているように感じます。
以下、各項目の総括について、ひとつずつ書き留めていきたいと思います。
まず、全体的な評価に大きく関わる「基礎技術」の項目について、トップ10は以下のとおりです。
この項目については、CCIDのページで以下のように説明されているとおり、全体的な評価の高低に大きく関わる項目となっています。
CCIDのグローバルパブリックチェーンアセスメントインデックスは技術革新と応用の視点に基づいて、基礎技術、応用可能性、創造性という3つの方面から世界中の主要なパブリックチェーンの開発状況を評価している。このうち、基礎技術の占める割合がもっとも大きく(技術評価全体の65%)、ここでは機能、性能、安全性、および非中央集権化を含む、パブリックチェーンの技術的な実現レベルを主に考察している。
(赛迪全球公有链技术评估基于技术创新及应用的视角,从基础技术、应用性和创新力三个方面对全球主流公有链进行评估,其中基础技术所占权重最大(占技术评估总指数的65%),主要考察公有链的技术实现水平,包括功能、性能、安全性以及去中心化。)
僕の過去記事にまとめてきた全体的な評価でも、この項目のリストに上がっているプロジェクトがほぼすべて高評価を受けていることがわかります。
全体的な高評価の傾向は、「スマートコントラクト>特定の応用機能>デジタル貨幣のトランザクションサポート」の順に高く、とりわけ、「プラットフォーム・インフラ系」の評価が高く出ています。
実際に、今回の説明のなかでも、機能面の評価としてはスマートコントラクトへの言及が多くを占めています。
そのほか、性能面では「トランザクション(Transaction Per Second、TPS)」の進展状況、非中央集権化については「パブリックチェーンシステムが実現する第一原則(公有链系统实现的第一原则)」としたうえで、完全な非中央集権化の困難さと各パブリックチェーンでの達成度合い、安全性については、コンセンサスアルゴリズムなどの技術革新にそれぞれ言及されています。
このなかでは、非中央集権化の達成度合いを評価の軸のひとつとしていることが注目されますね。
次に、「応用可能性」の項目について、トップ10は以下のようになっています。
この項目の評価内容は、以下の点に注目してスコアが付けられていると説明されています。
応用可能性については、ノード展開、ウォレットアプリ、開発サポートとアプリ実装を含む、パブリックチェーンの実際的なアプリサポートの総合的なレベルを評価している。そのうえで、ノード展開ツールとステップ、ウォレットの数および使いやすさ、開発ツールの提供状況、DAppsの数などを提供しているかどうかを含む情報やデータを参考にしている。この項目は全体の評価の20%を占めている。
(应用性主要评估公有链支持实际应用的综合水平,包括节点部署、钱包应用、开发支持与应用实现,参考信息和数据包括:是否提供节点部署工具和教程、钱包数量及易用性、开发工具提供情况、去中心化应用程序数量等,其占技术评估总指数的20%)
このうち、ノードの展開については、「開放性はパブリックチェーンが必ず備えるべき基本的属性(开放性是公有链所必须具备的基本属性)」という前提に言及しています。
開放性の度合いが評価基準のひとつになっている点は注目されますね。
また、ウォレットについても、「より使いやすいウォレットを提供することは、パブリックチェーンを推進するもっとも基本的な応用の方法(提供更加易用的钱包是推动公有链最基础应用的有效途径)」だと位置づけています。
中国の仮想通貨に対する姿勢をイメージすると、やや意外な評価ともいえますね。
さらに、この項目の中心的な要素となっているDAppsの開発については、以下のように説明されています。
パブリックチェーンが将来的に非中央集権型アプリケーションのインフラとなりたければ、開発者とユーザーに豊富な開発ツールと最良の開発環境を提供する必要がある。
(公有链要想成为未来去中心化应用的基础设施,就必须向开发者、用户提供丰富的开发工具和完善的开发环境。)
このあたりからも、「プラットフォーム・インフラ系」のプロジェクトに高い評価が与えられている理由がうかがえますね。
最後に、創造力の項目については、トップ10が以下のようにまとめられています。
この項目では評価の前提について、パブリックチェーンとプライベートチェーンおよびコンソーシアムチェーンとの違いを、応用性、ガバナンス、イノベーションといった各レイヤーでの「開放性(开放性)」の度合いに置き、「オープンソースはパブリックチェーンの価値を実現する基礎である(开源是公有链价值实现的基础)」と説明しています。
そのうえで、この項目の評価基準については、以下のように説明しています。
創造力では開発スタッフの規模、コード更新状況とコードの影響力を含む、パブリックチェーンの継続的な開発状況を主に考察し、この項目は全体的な評価の15%を占めている。
(创新力主要考察公有链的持续创新情况,包括开发人员规模、代码更新情况和代码影响力,创新力分项指数占技术评估总指数的15%。)
こうした評価のもとで、上に挙げたリストのトップに上がっているのがビットコインですが、各評価基準の説明のなかでもビットコインの開発や価値伝達におけるオープンさが繰り返し言及されています。
とりわけ、以下のようにビットコインの「革新性」に言及されていることが注目されます。
想像してみよう。ビットコインのコードがオープンソースじゃなければ、現在のパブリックチェーンの革新的な状況がありえただろうか?
(试想,如果比特币代码不开源,那么还会出现当前公有链百花齐放的创新格局吗?)
ビットコインの「通貨」としての部分はさしあたり切り離して、パブリックチェーンとしての開放性と革新性が高く評価されていることがわかりますね。
2018年5月から毎月公表されてきたパブリックチェーンインデックスですが、これまでは大まかな基準のみが公表されていただけでした。
それが、今回の情報提供によって、比較的詳細な判断基準が示されたように感じます。
これまでにイメージされていた「プラットフォーム・インフラ系」への高評価に加えて、というよりもこうしたプロジェクトへの評価が高い理由として、思いのほか、非中央集権化や開放性の度合いの高さに注目されているようです。
こうした形で評価基準が公表されたことで、今後の評価がどのように推移していくかということがより見えやすくなっていくかなと思います。
今回の評価基準に留意して、これから公表される評価データをコツコツと蓄積していきたいと思います!