ALISやsteemitのように「いいね」が付くとトークンが配布されるシステムは、ブロックチェーンを活用したサービスのひとつとして、いろいろな応用が考えられていますね。
こうしたサービスは基本的に、プラットフォーム上にアップされた記事に対して実施されるものですが、「いいね」が付くとトークンがもらえるというシステムが一般的なブログにも導入できるとしたら、もしかしたら利用の拡大がもっと見込めるのかもしれません。
今回は、そうしたサービスを提供している香港のスタートアップの取り組みが目に留まりましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・LikeCoinは「Like」を「Coin」に変える⁉︎
・プラットフォームの構築ではなく…
・二次創作を通じて一次創作者にも報酬が付く⁉︎
・これからのサービス拡大に期待?
台湾のネットニュースサイト「INISDE」は、2018年3月に開催されたミートアップで登壇した「LikeCoin Foundation」の創業者である高重建さんによる、LikeCoinのプロジェクトに関する講演の内容を記事にしています。
高重建さんによれば、LikeCoinは以下のようなサービスを実現するものとして開発されたそうです。
LikeCoinの「LikeをCoinに変える」計画は、旧来のものを一新した「Likeボタン」と「LikeRank」による創造力の可視化という方法を通じて、生み出されたコンテンツを「クリエイトマイニング」によってキャッシュバックできるようにする。
(LikeCoin 的「化 Like 為 Coin」的計劃,透過重新發明「Like 鍵」以及「Like Rank」創造力證明的方法,讓創意內容能通過「創意挖礦」得到回饋。)
この説明だけを見ると、「あ〜、いいねが付くとトークンがもらえるのね、ALISやsteemitと一緒ね」と思うかもしれません。
ですが、LikeCoinの公式ウェブサイトがを見ると、ALISなどのプラットフォームとはサービスの方向性が異なっていることがわかります。
公式サイトのトップには、「化讚為賞/透過創造力證明回饋內容(いいねを報酬に/創造力によってコンテンツへのキャッシュバックを可視化)」と書かれていますが、その下には、以下のようなキャッチコピーが掲げられています。
LikeButtonをサポートしているコンテンツならば、読者はいいねを押し、作者は報酬を受け取る。
(但凡支持LikeButton的內容,讀者點讚,作者獲賞。)
「LikeButtonをサポートしているコンテンツ」とあるように、LikeCoinによる「いいねが付くとトークンがもらえる」というシステムは、LikeCoinがプラットフォームを用意し、そこに上げられた記事に提供されるというのではなく、「LikeButton」を設置している記事すべてに提供されるサービスであるということです。
つまり、LikeCoinはブログなどに実装できる「いいねボタン」を提供することによって、クリエイターが報酬を得られるサービスを提供しているということですね。
この「LikeButton」は2018年11月2日現在、「WordPress」で作成されたブログ、「Medium」の記事、および「oice」というノベルゲーム作成プラットフォームに実装できるようです。
このうち、oiceについては日本語の作成サイトが公開されています。
WordPressで作成されたブログやMediumに実装できるというのは、潜在的な利用者が多くいそうな感じがしますね。
公式サイトのトップページには、すでにボタンが実装されている記事が上がっていますので、どんな感じでボタンが埋め込まれているのかを見ることができます。
なお、登録ページを見る限りでは、トークン受け取りのためにMetaMaskを準備する必要があるようですが、特に登録地域が限定されているような様子は見当たりません。(僕はまだ登録していませんので、確証がない形になってしまってすみません…)
トップページには2018年11月3日午前4時(日本時間)現在で、588人のクリエイターによって、10,619のコンテンツにLikeButtonが実装されているということなので、まだまだこれから拡大が期待されているという感じのようですね。
LikeCoinのこうしたサービスで興味深いのは、ブロックチェーン上にシステムを構築することによって、「二次創作」による創作物の使用においても、一次創作者に報酬が付くように考えられていることです。
LikeCoinの公式サイトに掲載されているホワイトペーパーによれば、「LikeButton」が実装されたデジタルコンテンツには、イーサリアムベースのブロックチェーンプラットフォーム上で「内容指紋」と呼ばれる固有のID(ハッシュ値)が与えられるようです。
この「内容指紋」を基に、コンテンツの利用の形跡を追跡し、スマートコントラクトによって二次創作を通じた一次創作者への報酬配布を実現するということです。
この点については、LikeCoinの創業者である高重建さんが、2018年4月に台北で開催されたブロックチェーン専門メディア「區塊客blockcast.it」主催のミートアップで、以下のように説明しています。
たとえば、ある記事を書いたとして、ネットで探してきたイラストをサムネイルに貼るというのも二次創作です。イラストに簡単な情報を加えるというのも二次創作、フェイスブックの近況アップデートにイラストを加えるのも二次創作です。つまり、二次創作の応用シーンは非常に広く、一次創作よりも多いと思われますが、ほとんどの場合、二次創作者は元々のオリジナル作品や素材のソースを明らかにはしません。それがLikeCoinのプロトコルによって解決される問題のひとつです。
(比如,寫好一篇文章,在網上找張圖片作為封面,這已是二次創作;把圖片加到簡報,這也是二次創作;甚至在面書更新狀態,加張圖片,這也是二次創作。因此,二次創作的應用場景非常廣,可能比原創還要多,只是大部分時候二次創作者沒有標明上游原創作品或者素材來源,而這也是LikeCoin歸屬協議要解決的問題之一。)
ホワイトペーパーによれば、この「二次創作」にはイラストだけではなく、テキストもその範疇に入っているようなイメージ図が掲載されていますので、引用なども含まれるのかもしれません。
また、冒頭に挙げた「INSIDE」の記事中に挙げられていた高重建さんの説明で「Likeボタン」とともに上がっていた「LikeRank」は、ホワイトペーパーによれば、この「二次創作」の枝葉が広がれば広がるほど、一次創作者のランクが上がる仕組みになっているようです。
ただ、「二次創作」と「盗用」をどのように線引きするかという問題は残っているようです。
「INSIDE」の記事では、高重建さんが、「LikeCoinを使うことで、多くの人にとってオープンライセンスや著作権の尊重へとインセンティブが働くようにしたい(利用 LikeCoin 作誘因來鼓勵更多人開放授權和尊重著作權)」と述べたことに対して、同席した別の登壇者が、「実はブロックチェーンの技術がネット上で発生する盗用を完全に防止することができない(其實區塊鏈的技術是沒辦法完全防止偷圖偷文字的事情在網絡上發生的)」と語ったようです。
一次創作者が盗用の事実を確認したときに、容易に遡及できるようにしておくことはブロックチェーンを活用することによって実現できますが、盗用の防止に積極的な役割を果たすことは難しいという問いは、今後の課題として残されているといえそうですね。
LikeCoinはまだ今年に入ってからサービスを開始したところで、2018年5月にはICOを実施し、7562.26ETHの資金を調達したことが、ワンペーパーとして報告されています。
既存のブログサービスへのボタン導入や、二次創作を通じた一次創作者へのインセンティブなど、注目を集める取り組みであると同時に、ブロックチェーンの特性にかかわって克服すべき点も抱えながらのサービス展開であることがうかがえますね。
これからのサービス展開は、こうした課題の克服と、世界中のブログサービスがこうした取り組みを知り、自らのブログに実装していくかどうかにかかっているように感じます。
日本も含めて、各種のブログサービスに実装されていくのかどうか…これからの動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!