ブロックチェーンに関する技術開発やサービスの普及が進んでいくためには、産業育成に向けたバックアップ体制が必要不可欠ですよね。
とりわけ、行政機関が民間企業や学術研究機関と提携しながら、どのような環境を作っていくかということが、産業発展に大きく影響するように思います。
台湾でも「ブロックチェーン特区」の設置など、行政機関による関連産業育成の積極的な動きが見られます。
今回は、行政機関が先導する形でブロックチェーンに関連する産官学の連携を実現しようという動きが見られましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・國發會主導で「區塊鏈產業大聯盟」を結成⁉︎
・新技術の幅広い応用を目指して?
・国家的発展のためのブロックチェーン?
台湾の報道機関「中央通訊社」が2019年3月26日に報じた記事によると、経済成長・社会発展に関わる政策の実施を担う「國家發展委員會(國發會)」の主任である陳美伶さんが、「ブロックチェーン産業連盟(區塊鏈產業大聯盟)」の結成を公表したそうです。
この連盟については、國發會がリードする形で以下のような行政機関との広い連携を予定しているということです。
金融管理監督委員會(金管會)
經濟部
科学技術部(科技部)
教育部
內政部
農業委員會(農委會)
仮想通貨取引の管理を担う金管會をはじめ、ブロックチェーンが応用される・応用が期待されている分野の行政機関との連携が想定されているようです。
上の記事では、農委會による「農産品トレーサビリティ(農產品溯源)」におけるブロックチェーンの導入が、具体的な事例として言及されています。
前回の記事でも書き留めましたが、台湾では「農産品×ブロックチェーン」の取り組みが各方面で進められています。
仮想通貨や食品トレーサビリティといった先行する取り組みを中心に、ブロックチェーンの活用が広く考えられていることがわかりますね。
今回の取り組みは、「2019年スマートシティ展アジア・シリコンバレー台湾館(2019智慧城市展亞洲•矽谷台灣館)」の開館記者会見の場で公表されたそうです。
「アジア・シリコンバレー(亞洲•矽谷)」というのは、今回の連携を中心的に担う國發會のなかに設置されているプロジェクト推進組織の名称です。
プロジェクトを推進する「Asia Silicon Valley Development Agency(ASVDA)」の公式ウェブサイトによれば、このプロジェクトは総統である蔡英文さんが2016年の総統就任演説の際に言及した「持続的な発展を追求した新たな経済モデル(追求永續發展的新經濟模式)」を構築し、「デジタル国家・スマートアイランド(數位國家、智慧島嶼)を実現するという目標を持っていると説明されています。
こうした目標のもとに公表されたのが今回の取り組みということで、ブロックチェーンに関する提携の枠組みは、他の新技術との関連も想定されたものとして位置づけられているようです。
この記者会見で、國發會の主任の陳美伶さんは「AIoT(AI+IoT、人工智慧+物聯網)」、「AR(拡張現実、擴增實境)」、「VR(仮想現実、虛擬實境)」と並んで、ブロックチェーンの発展に言及したそうです。
台湾の大手紙「自由時報」の記事によれば、この「アジア・シリコンバレー」プロジェクトからは、すでに「IoT連盟(物聯網大聯盟)」という、360名の会員を有するプラットフォームが走り始めているということです。
行政組織間の連携だけではなく、民間企業との提携や多くの新技術の融合といったあらゆる分野・レイヤーでの協働を目指していることがうかがえますね。
今回のブロックチェーン産業連盟の取り組みは、すでに國發會が専門家や研究者、業者を集めて2度にわたる準備会議を開催し、議論を進めてきたそうです。
これから3か月の準備期間を経て、2019年6月には連盟の実現を目指すということですから、急ピッチで体制づくりが進められていくようです。
「アジア・シリコンバレー」のプロジェクト目標からもうかがえますが、このブロックチェーンをめぐる取り組みも含め、科学技術の発展を促す取り組みは明確に国家的なプロジェクトとして位置づけられています。
それはさらに、行政組織だけではなく産官学の協働を通じて、各分野の人々が共通して実現していくべき課題として認識されているように感じます。
そのような動きをより一層推進していくような場として、今回のブロックチェーン産業連盟が機能していくかどうか…
これからの動向を引き続き、コツコツと追いかけていきたいと思います!